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おっさん、軍神として降臨す  作者: 波 七海


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第21話 おっさん、横死を知る

 ■中央ゴレムス暦1582年6月23日

  アウレア付近の村


「何だかやたらと忙しないな。何かあるのかね?」


 立ち寄った村では村人たちが慌ただしく右往左往していた。

 よくよく見ると中には武器の類の物を手に携えている者もいる。

 念のため走竜から降りずに村内を進んで行く。


 おっさんたちに気が付いた村人たちは明らかに狼狽していた。

 その中から一際身なりの良い男が進み出てくる。


「ア、アウレア兵の方々でしょうか?」

「ん? そうだが?」

「この村に何の御用でございましょう」

「アウレアに戻るところで立ち寄っただけだ。休憩しようと思ってな。後、走竜に水と食べ物もあれば助かるんだが。もちろん金は払う」

「へぇ……分かりやした」


 その男は村長であるらしかった。

 すぐに他の村人に指示するとおっさんに質問を投げ掛けてくる。


「それで将軍様は何と言うお名前でございますか?」

「俺か? 俺はアルデと言う。(アルデ・ア・サナディアだったか)」


「アルデ将軍閣下でしたか!」


 おっさんの雑な自己紹介に村長は大仰に驚いて見せた。

 やはりアルデの名前はそこそこ知れ渡っているらしい。


「ああ、それで見たところ慌ただしい様子だが何かあったのかな? すまんが教えてもらえるか?」


 分からないことは素直に聞くに限る。

 おっさんは少し物腰を柔らかくして丁寧にお願いしてみた。


「それが……その……」


 村長は何故か言いにくそうにしている。

 それに焦れたのはガイナスであった。


「おい。何があったのかと聞いている」

「(強面のお前がそんなに凄んだら話せないだろうが)」


 おっさんが心の中でツッコミを入れていると村長は意を決したように口を開いた。


「それが……大公陛下が討たれたと言う話が……」

「何ッ!?」


 珍しくドーガが驚きの声を上げる。その表情も今までに見たことのないほど目を見開いて固まっていた。

 おっさんもびっくりしていたが、ドーガのお陰でかえって冷静になった。


「討たれた? どこで誰にだ? 詳しく教えてくれ」

「へ、へぇ……聞いた話なんですがエストア教の都市エストレアで謀叛にあったと……」


 また知らない単語が出てきたが、これもまた後でドーガに聞くことに決めたおっさんは、とにかく全て聞き出すことにする。


「謀叛? 兵は率いていなかったのか?」

「それが……あくまで伝え聞いただけなんですが、陛下は大々的にイーグ狩を行っていた……いらしたらしいです。そこを襲われたとか何とか」


「ふーん。(イーグ狩って何だ。苺狩とかなんかか? いや貴族だし鷹狩とか?)」


 したり顔で相槌を打つが分かっていない時のおっさんが知ったかぶりをする時の悪癖あくへきである。

 おっさんが返答に不満を持っていると思ったのか、すぐさま情報を捕捉する村長。


「誰が襲ったかかは分からないです。も、申し訳ありません……」

「ああ、別に構わんよ(情報伝達技術が発達してる訳でもないしな)」


 それにしてもおっさんの嫌な予感は見事、当たってしまった。

 見事ってそれ褒められねぇだろと自分でツッコミつつ、村人たちの姿をまじまじと見つめる。武器を手にしている者が多い。


「で、キミらはイーグ狩ならぬ、落ち武者狩りをしようって感じかな?」


 おっさんの無感情な言葉に、村長を始め村人たちの狼狽が加速する。


「も、申し訳ございやせん! アウレアに敵対したい訳では……」

「あー気にしないでいいよ」

「しかしッ……」

「んーじゃあ、許すから落ちのびて来たアウレアの者は助けてやってくれないか?」


 この時代はそう言う時代なのだろう。

 価値観が違う時代だ。それが当然なことならば受け入れるしかないだろう。

 後は余裕があれば、そんなことをせずとも良いようように指導するだけだ。


「(と言うか現代でも混乱があれば、世界中で暴動・略奪が起こってたからな。本質は同じだろ。ただし日本は除く)」


「閣下、エストレアで事変があったとすると近いですな。如何なさいますか?」

「うーん。アウレアス城はどうなってると思う?」

「敵兵に余裕があれば同時攻撃、なければ現在侵攻中と言ったところでしょうか」

「何にしろ城攻めするならそれなりの兵力だろ。竜騎兵五○○だけじゃきついな」


 おっさんは取り敢えずアウレアに向かうのを止めることに決めた。

 確か城には近衛が五○○ほどいるらしいが、ホラリフェオが横死しているのが本当ならば早々に開城する可能性がある。おっさん自ら赴けば抵抗を続けるかも知れないが、もし既に攻められているようなら間に合わないかも知れない。


「敵さんはそのイーグ狩とやらに向けて用意周到に計画していたんだろう。なら抜かりはないだろうさ。一度、サナディア領に戻る」


 アルデが名実共にアウレア大公国の名将軍であるならば、この局面でホラリフェオの仇を討てばその発言力はとてつもないものになるだろう。


 そこそこ名が轟いているから何だと言うのか?


 一地方のそこそこの将軍で終わることを想像するとおっさんは寒気に襲われた。考えただけでも退屈で面白みに欠ける。それでは何のためにこんなことろに(異世界転に)飛ばされ(転移し)て変な能力を手に入れたのかも分からない。天がおっさんに何を望んでいるかは知らないが、いや、そもそも天や神の意思など関係ないのだ。

 大切なのはおっさんが何をしたいかであって、誰が何をさせようとしているかではない。おっさんはこのゲーム染みた世界で自分勝手に生きることに決めた。


「走竜の補給と休憩が済み次第、サナディアに戻る。ガイナスはノックス隊に伝令を送れ。それと各地に斥候を出す。人選は任せる」

「承知ッ!」


「私は何をすればよろしいので?」

「ドーガくんは俺に知る限りの情報を教えてくれ」

「例の件ですな」

「ああ、キミには言っておくことがある」


 この名も知らぬ村からアルデ・ア・サナディア――倶利伽羅棗くりから なつめの勇躍が始まる。

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