第一章 雨の音(2)
数年前に書き始め、クライマックス辺りで筆を折った作品です。少しでも反響があれば最後まで書いてみようか思います。コメント・評価が作者の励みになります。一言でも構いません。頂けると作品を書く力になります。
聞き流す程度で理解できる数学の授業を受けながら、僕は窓の外に目を向けて、ふと少し前のことを思った。季節の変わり目を迎え、思い出を整理しようとしているのかもしれない。
家から近いからと言う理由でこの高校に入学したのが約三か月前。
早々に行われたオリエンテーション合宿や近所に奇跡的に存在している養鶏場にお邪魔する課外授業などを経て、今はやっとそれぞれが人間関係を構築しつつある時期であった。
僕はというと、入学初日の席替えで席が近くなったやたら体がでかい神田に、
『何部に入るの?』
と話しかけ、
『お、ちくわぶがなんだって?』
と返されたのを皮切りに、それなりの友人関係を築いてきたつもりだ。
気さくで人懐っこい神田の友人関係に取り込んでもらっている、と言った方が正しい気もするけれど。
それでもクラスメートとは仲良くやれているし、授業だってついていくのは決して難しくない。
今のところ僕の高校生活は順風満帆なのだ。
しかしなぜだろう。
満たされない、鬱屈とした気持ちを抱えていた。これは梅雨がもたらした一時的な心の陰影なのだろうか。
梅雨空のようにどんよりと、黒い雲が僕の心を覆っているのだ。
いや、恐らくこれは七月に入り、夏が来ても晴れることはない。まるでロンドンの空模様。永遠に渇くことのない、そのうちカビでも繁殖してしまいそうな湿度で占められた心。
一刻も早く僕の太陽を返してほしい。
梅雨というのは六月限定のイベントのつもりだったが、そうではないらしい。今朝テレビで見た情報によると、関東地方の梅雨明けは例年七月二十日ごろなのだそうだ。となると、あと三週間ほどはじっとり湿っぽい空気に身を置かなくてはいけない。
窓の外ではいつの間にか雨は止み、少し空が明るくなり始めていた。
ほんの少しでもストーリー・登場人物たちに興味が湧いた方はコメントお願いします。続きを書くか決めたいと思います。
他作品も掲載しておりますので、良ければご清覧下さい。