年末年始と博士と助手の話
新年おめでとうございます
「今年は過ぎるのが早いね~。」
僕と博士しかいない研究室では、今日も博士のそんな声が響く。
もうあと少ししたら、今年も終わる。
僕らは今、その瞬間をコタツでぬくぬく温まりながら待っている。
「ホントですね。もうあとちょっとしたら、来年ですよ。」
「まったく……、まだ学生の頃は1年なんて長くて嫌だったのに今じゃあ、あっという間だもんな。何でだろう?」
「それは年を取ったからではないですか。」
「……どうして君は、女性に対して言いづらいようなことをそんなにストレートに言えるのかね。」
「何を今更言ってるんですか。そろそろ慣れてくださいよ。」
「慣れないよ~、もー、泣いちゃうよー。」
「はいはい、泣くなら勝手に泣いてください。」
「うぅー、冷たいなー。」
「それじゃあ、このコーヒーでも飲んで温まってください。」
「あっ、ありがとう……。」
「……それにしても、ホント今年は過ぎるの早いですね。」
「そうだろう?」
「えぇ、それに今年は色々なことがあったですから濃かったですしね。」
「確かに、色々あったな……。」
「ほとんど博士の尻拭いだった気がしますが。」
「……ホント、色々あったな……。」
「……目を逸らさないでくださいよ。」
「まぁ、うん、すいませんでした……。」
「はぁ、まぁ、別に良いんですけどね。それはそれで楽しかったですし。」
「えっ……、助手君ってまさかドM?」
「なんでそうなるんですか!」
「いや、尻拭いとかの大変なことをするのが楽しかったって言ったから……」
「はぁ、なんか急激にここを辞めたくなってきたな。」
「そ、それは困る!君に辞められたら、私は生きていけないよ!」
「そこまで言いますかね。まぁ、実際そうですから仕方が無いですか。」
「……そこはフォローするところだよ?」
「えーっと、そろそろ年が明けそうですかね。」
「無視!完全なる無視!」
「もううるさいですよ。そろそろ年が明けるんですから静かにしてください。」
「あ、はい、すいません……。なんか扱い酷くない?」
「何を今更。」
「確かに。」
「……それでいいんですか?」
「うん、もう……、いいんだよ……。」
「そうですか。」
「……だからそこはフォローするところだって。もう相変わらず朴念仁だな。」
「よし、じゃあ、来年用に買っておいた電子顕微鏡処分しておきますね。」
「あー!それだけはそれだけは勘弁をー!」
「ちょ、じょ、冗談ですよ。そんなにポカポカと腕を殴らないでください。」
すると、やり取りをしていた僕らの元に鐘のゴーンゴーンとした音が響いてくる。
「おっ、丁度年が明けましたね。」
「あ、ホントだね。よいしょっと、それじゃあ……」
『今年もよろしくお願いします。』
そうして、僕たちは向き合って、お互いに頭を下げ合うのだった。
皆さんこんにちわ 御厨カイトです。
今回は「年末年始と博士と助手の話」を読んでいただきありがとうございます。
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