エピソード1-26
※ ※
「最近の流行りはこういったアクセサリーが」
私は貴族令嬢と話を咲かせていた。今は王都で流行っているファッションのことについて。ただ私は付いて行けていなかった。
「フィルリリア様はどう思いますか?」
「そうね、こっちの方が良いんじゃないかしら」
適当に相づちを入れつつ最近の情報を集める。ただ、2年間逃亡生活をしていたせいか、そういったものが無駄な買い物に見えて仕方がなかった。
機能性がない、ただのアクセサリー。とはいえ、リリアも逃亡前はこういったものに目をキラキラさせていたものだから不思議だ。
周りの令嬢たちは最近の流行りの話ばかりする。ファッションに菓子といった話がほとんどだ。
なんとなくだが社交界からはなれていた私に気を使ってそういった話をしている気もする。こちらは助かるがなんだか申し訳ない。
ちらっとレイハルトの方へ目を向けてみるとどうやら向こうも騎士同士で話をしているようだ。若干囲まれているようにも見えるが、まあ彼なら問題ないだろう。
「そういえば、メイリス様はこの間正式に婚約が決まったんですよね」
「相手は確か、ユーロス様だったかしら」
「はい、そうなんです」
頬を赤らめながら肯定するメイリス。メイリスはリシュルー男爵のご令嬢。ユーロスはオーヴィス子爵の嫡男。
(半分は政略結婚ね)
私は冷めたような気持ちで話を聞いていた。
「お茶会で初めて声をかけてもらってそれから」
なれそめを嬉しそうに話すメイリス。それを嬉しそうに聞く周りの令嬢。
結婚は政治の手段だということはここの全員が分かってる。私も昔は周りの令嬢のようにふるまえた。
もう一度レイハルトの方を見るがまだ囲まれたままだった。
「それはそうと、フィルリリア様の方はどうなんですの?」
「どうって?」
ここ2年社交界から離れていた私にどうも何もないだろう。オルキスとのことなら何も始まってもいない。
「オルキス様とのことなら」
「違いますわ。レイハルト様とのことです」
「はい?」
(私とレイハルトが?)
「いったいどこであんな素敵な方を見つけてきたのですか?」
「どこでって言われても」
逃亡中にたまたま会ったとしか言えない。
「強くてかっこよくて、まさしく騎士の鏡」
彼を騎士の基本にするとこの国に騎士はいなくなる気がするが。
「旅の途中ずっとフィルリリア様をお守りしていたとか。それもフォレスレオンとジャイアントスネーク2体を同時に相手したり」
「え?一体ずつよ?」
2体同時って、まあ、彼なら出来そうだが。
「それでもすごいですわ。一人で倒せるものではないと聞いておりましたのに」
「まあ、彼の強さは異常ですから」
「それにお城に招待して自分の専属にしたんですよね」
「いえ、それは」
「お城の中では常に行動を共にしていると聞いていますし」
「まあ、それは」
「もう私たちの間では、レイハルト様がフィルリリア様の婚約者候補1位になっていますわ」
「え!?」
驚きの声を上げた。いつの間にそんなことになっていたんだ。
「何で?彼はただの騎士ですよ」
「でも、フィルリリア様はレイハルト様と一緒にいるときが一番楽しそうだと。今までそんな顔見たことがないと」
そんな顔をしていたのかとの顔が赤くなる。
「周りはレイハルト様をうらやましがる声と、たたえる声に分かれていますね」
そんなことになっていたなんて思ってもいなかった。
「お二人はいつからなんですか?」
令嬢の一人が聞いてくる。
「私たちはまだ、そんな関係じゃないわよ」
「まだ!ということはこれからなる予定があると!」
しまった!と思ったがもう遅かった。そこからは質問の連続だった。
※ ※
「お疲れの様ですね、姫」
帰りの馬車の中、俺から口を開いた。
「ええ、まあ。貴方も騎士の方々に囲まれていたようだけれど大丈夫だった?」
「はい、旅での話を聞かれただけですから」
「そう、こっちと同じなのね」
二人はあの話題には触れようとしなかった。俺がリリアの婚約者候補第1位だという話には。
お互いにその話は聞いていたが、その話をすると今の関係が壊れてしまう。そんな予感が二人にはあった。
ちなみに俺が敬語なのは一緒に侍女がいるから。二人きりの時以外ではそのほうが良いと判断したのだ。
「あ、そうだ」
リリアが俺の隣に移動する。
そして、そのまま、顔を近づけてくる。騎士たちから聞いた話を思い出してしまい、鼓動が早くなる。
リリアは耳元に口を近づけてささやいた。
「明日、町に行きましょう」
「はい?」
緊張していただけに変な声を出してしまった。
「詳しい話はあとでね」
「は、はい」
周りでは侍女たちがニヤニヤしている。
王城に着くとそのままリリアの部屋に移動した。
「明日町に行くわよ」
リリアは改めてそういった。
「町って城下町のことか?」
「ええ」
こちらの疑問をリリアが肯定する。
「貴方と初めてここに来たときに言った酒場があるじゃない、あそこに行くわ」
俺は記憶を掘り起こす。
「ああ、あそこか。でも酒は」
「一回飲んでみましょうよ。飲めないとそれだけで馬鹿にされることもあるし」
「そうなのか」
「ええ、男だと特にね」
日本でも昔はそうだったと祖父に聞いたことがある。こんな中世ヨーロッパみたいな世界だ。そう風潮があってもおかしくはないか。
「分かった。飲んでみるよ」
俺がそういうとリリアが頷いた。
「それじゃあ、あとは時間とかね」
「リリア、何でそんなに楽しそうなんだ?」
嬉しそうに話すリリアに聞いた。
「だって今まで一人で出かけてたのよ。相手がいるってだけで楽しくなるわ」
「そういうもんか」
「そういうもんよ」
そこからは時間やどう行くかなどを話し合った。ちなみにオルガはお留守番。さすがに狼を街中にはそうそう出せないそうだ。




