エピソード1-24
「騎士団と?いいわよ」
昼食後、リリアに相談しに行ったら即答でOKをもらえた。
「いいのか?朝今日こそは遺跡にって言ってたのに」
「まあ、そうなんだけど。今後のことを考えると軍関係とのつながりは強くしておきたい
し」
「分かった。今日はこれから騎士団のところに行くよ」
「私も付いていくわ」
今日はオルガも含めた3人で移動した。本人は大丈夫だと言っていたがリリアがオルガ
に運動をさせたいらしい。
「レイハルトさん、お待ちしておりました」
訓練場につくと先ほどの騎士が出迎えてくれた。軽く挨拶をして訓練に入る。
手伝うと言っても模擬戦の相手をするくらい。武技は(身体が勝手に動くから)教えられな
いし。
「そういえばレイハルトさんは鎧は持っていますか?」
「鎧?」
「はい。我々は実践を想定して鎧をつけた状態でも訓練をしていますから」
鎧と聞いて防具の存在を思い出した。今はステルスにしていて見えていないがつけてい
るはず。
そう思ってARパネルを操作して防具を確認する。
防具にはアーム、レッグ、ボディーの3種類がある。
きちんと3つともあった。
今はどれもヨグスシリーズという最高レアリティの防具で固めている。
とある邪神をモチーフにしているらしい。
(運営、絶対あの神話好きだよな)
なぜ最初に防具を確認しなかったと思うと同時にそんなことを思った。
「一応持ってます」
そういってステルスを解除しようとした。だがここで解除するとその方法を聞かれそうだったので、持ってくると一言言って陰に隠れて解除した。
「お待たせしました」
ヨグスシリーズは白地に黒の線が入ったデザイン。防具と言っても篭手、脛あて、胸あてのような感じである。これで全身の防御力が上がるのだからすごい。
「全身鎧ではないのですね」
「旅をする上では全身鎧では邪魔ですから」
それからまたしばらく特訓の相手をした。
「レイハルトさん、これからも訓練に付き合ってもらえますか?」
訓練の終わりにそんなことを言われた。
俺はリリアの方を向くと任せると言われた。
「そうですね、ただ、一般のみんなの方も見に行く予定なので毎日は難しいですね。あとフィルリリア様のご予定にもよりますし」
「フィルリリア様の専属護衛ですからね、仕方ないです」
「向こうも見に行くのですか?こちらだけでよいではないですか」
別の騎士がそんなことを言ってきた。
「そんなわけにはいきません。将軍に頼まれていますから。どうでしょう。一緒に訓練するというのは」
「彼らとやっても身になりませんよ」
「しかし、いざというときにバラバラでは戦いに勝てませんよ」
「個々が強ければ負けません」
「それは違います」
「え?」
今現在、一番強い人がそんなことを言う。それが信じられなかったのだろう。
「連携が取れなければたとえ数で優っていても負けます」
「それはどういう」
「連携というのはお互いの力を掛け算のように上げることができることがあります。3人いて個々が2の力を持っていた場合、連携しなければ2+2+2で6ですが、連携して掛け算になれば2×2×2で8になる、こともあります。私は実際にそれで負けたことがあります。」
周りは信じられないと言った顔をしている。事実、ゲームでは唯一のPvPとしてチーム対抗戦があった。
そこでレイハルトのチームはこちらが12人で行ったのに対し、相手は6人。だが相手の連携になすすべもなく負けた。
「ですので、これからは全員一緒に訓練しませんか」
俺たちは例の遺跡の森の入り口にいた。
「久しぶりに城の外に出たわね」
「久しぶりってまだ一週間ぐらいじゃないか?」
「2年間外で暮らしてたんだから一週間でも久しぶりよ」
三人は森の中を進んでいく。一度見た場所、確かに久しぶりな気もする。俺にとってはここ数日が環境が変わりすぎて忙しかったというのもあるだろう。
「ところで、本当に大丈夫なんだろうな」
「大丈夫よ。前もよくお忍びで町に遊びに行っていたから」
3人はリリアの部屋からテレポーターを使って来た。また姫が攫われたとかならないか心配になる。
「今日のうちに戻れば問題ないわ」
「そういうもんか?」
「そういうもんよ」
3人は目的の遺跡に着いた。するとそこに見知った人影があった。
「ラレナさん」
リリアの声に人影はこちらを向いた。少しの間旅を一緒に旅をしたラレナだ。
「お二人さん。お久しぶりです」
「久しぶりね。あなたな何でここに?」
「旅の路銀稼ぎに何かないかと思って」
「なるほどね。ただ、ここは何もないわよ」
「そうなんですか。何もないここへあなたたちはなぜ来たんですか?」
「それはレイハルトが」
俺は壊れた箱を一つ一つ丁寧に見て回る。
(似てる、でもなぜ何もないんだ)
俺の仮説が正しければ、この箱はPICTのキャンプハウス、PICT本部から各地に行くための仮拠点だ。
ここには簡易ショップや倉庫にアクセスする端末があった。だが今はただの壊れた四角い箱。中には何もない。
地下に入る。その後ろを三人が追ってくる。
今回は特にエネミーと遭うこともなく一番奥まで着いた。もう一度壁を隅々まで調べる。
「どうせ何もないわよ。前もそうだったじゃない」
リリアの言う通り何もない。だが、もしここがPICTの仮拠点ならばここは前に俺が来た時点で開くはず。
「開かないか」
「開くも何もこれはただの壁じゃない」
俺は何かないかとARパネルを操作する。そして片っ端から開いていく。そしてステータスを開いたとき腕のデバイスが光った。
突然目の前の壁が割れた。真ん中できれいに。
「きゃっ、な、何!?」
「壁が、割れて」
地響きのような音を立てながら割れていく、否、開いていく壁。壁が開き切るとそこには少し広めの空間が広がっていた。
「嘘!壁の奥にこんな空間が」
そこは光が届かず暗いためアイテムストレージから照明アイテムを取り出す。
球体状のそれは空中に浮かび上がると空間全体を明るく照らした。
「なにこれ、明るい。これも魔道具なの?」
「まあ、そんなものだ」
これに関しては魔力はほとんど使っていない。空中に浮いているのも反重力装置が中に組み込まれているから、だそうだ。
俺たちは空間の奥に進む。
(あった)
そこにあったのは円の形をした何かの装置。
(大型テレポーターだ。だけど起動していない)
大型テレポーターは本部からこの仮拠点に移動するのに使うもの。テレポーターが最大4人までなのに対し、これは12人まで転送できる。
俺はテレポーターと同じように起動しようとしたが操作パネルが出てこない。
「レイハルト、何やっているの、それは?」
「俺が使ってる転移用の魔道具の大型版、動かせないけど」
「転移用の魔道具!?」
ラレナが驚く。
「そういえばラレナは知らなかったわね。彼は転移用の魔道具を作れるの」
部屋を見て回る。外と違って壊れた様子はない。それにゲームで見た仮拠点とほぼ同一だ。
ゲームではここに管理用のNPCがいたのだがその姿も見当たらない。
(だが、これで俺の仮説はほぼ立証されたな。あとは本部のあった場所に行ければ)
しばらく探索した後遺跡を後にした。俺が出ると再び壁が閉まった。その光景にリリアとラレナは驚いていた。
「奥があるのは分かったけど持ち帰れるものは何もなかったわね」
「いや、これで十分だ」
「そうなの?」
俺たちは再びラレナと別れ、城に戻った。




