エピソード1-21
「でっか」
俺は書庫のあまりの大きさに口を開けていた。
建物は5階建てでそのすべての階に本棚が人2人通れるくらいの幅で並んでいた。書庫の広さも体育館2つ分くらいある。
「当り前じゃない。ここにはこの国にありとあらゆる本があるんだから」
国会図書館みたいだ。もしかしたら国会図書館のほうが大きいかもしれないが。
俺は書庫の管理人の女性に歴史や伝承がある場所を聞き、移動した。
(もしかしてあの人、全部把握しているのか)
ジャンルだけでも結構ありそうだと思った俺は少し怖くなった。データ管理されていない書庫を全部把握しているとは。
「ここね」
二人は目的の場所に着くとリリアがいくつか本を取り出した。歴史と伝承の棚は隣り合っていたのですぐに探し終わった。
「こんなものかしら、それは?」
リリアは俺の手の中にある本を見て聞いた。
本には「創世記」と書かれている。伝承の棚にあったものだ。
「ああ、それ、今よりすごかった時代のことが書かれてる本ね。それ、書かれてることのほとんどが理解できないのよね」
軽く眺めてみたがこの本には科学のこともいくつか書かれている。科学についてはこの世界の人には分からないだろう。
二人は閲覧室に移動し持ってきた本を読み始める。
リリアはこの辺はもう読んでいるのか自分用に持ってきた魔物に関する本を読んでいる。
歴史、伝承に書いてあったことのほとんどがある程度国が発展してからのものだった。
英雄である誰々が魔物を倒し、王になったとか、どこどこの国が勢力を広げたとかそういったものばかり。
しかし、中にはゲームのストーリーを思い出させる話もあった。
そして、「創世記」に手を伸ばす。「創世記」に書かれている最初の話。これを見たから持ってきたのだ。
天より来たりし者。はるか昔、巨大な船団がこの星にやってきた。彼らはこの星の調査に来たと言っていた。彼らはこの星の住人が見たことのない技術で大きな都市を作った。そこはさまざまなものが自動化され、日が暮れても明るく、移動は馬よりも早い乗り物を使っていた。彼らのカガクというものは素晴らしく、この星の住人もその都市に住むようになった。この都市はデンキによって動いている。このデンキは太陽の光を使って作っているらしい。船もそれで動いていて、都市が出来た後も行ったり来たりして人口はどんどん増えていった。
しかし、そのカガクで対処できないことが起きた。急な機械の故障、原因不明の病、そういったことが彼らを苦しめた。そこで彼らは原住民に聞いた。心当たりはないかと。原住民はこの星には魔力があり、それによる影響ではないかと。
彼らは最初は信じなかった。そんな物があるものか、そんな物質は存在しない、あると言うならそれを使って何かして見せろと。しかし、魔力というものは空気中にありはするものの人が操れるものではなく、魔獣や一部の動物のみが操れるものだった。彼らは原因を何としても突き止めようとしたが理由は分からなかった。そんなある日、都市が魔獣に襲われた。魔獣は火を吐き、嵐を起こし、都市に甚大な被害を与えた。何とか魔獣を討伐したが彼らは魔力はあるのかもしれないと思った。カガクではあの魔獣の起こしたことを立証できなかった。そして彼らは魔力について調べ、機械を使って魔力を制御する方法を編み出した。
設定資料集にあった惑星激録のPICTが惑星に来たときのことが書いてある記事を思い出し、それとほとんど同じであった。
これにより、PICTは武技や魔技が使えるようになり、危険な冒険もできるようになった。魔力と科学の融合。それがこの惑星でPICTが見つけた最高の物だ。
読み進めるとダークネスと思われるものが書かれていた。
突如として現れたPICTの敵、PICTとは別の方法で魔力を操る者たち。
途中からPICTの話は惑星調査からダークネスとの戦いの話に変わった。
さらに読み進めるとゲームでの俺のことが書かれていた。いや、正確にはゲームの主人公の、だ。
主人公は正義感と行動力で数々の事件を解決していく。
時には上層部と対立し、時には死にかけ、そして最新の8章では上層部の一員になっていた。
そんなところまでこの「創世記」には書かれている。
しかし、一度もPICTの名前は出てこない。全て「彼ら」となっている。
「どう、何か分かった?」
読み終えて顔を上げるとリリアが声をかけてきた。
「そもそも内容が分かった?特に最初の方。馬より早く動くものとか船が空から来たとかどういうことなのかしらね。機械ってのもよくわからないし。全く想像できないわ」
現代人だった俺は前者は車、後者はスペースシャトルか宇宙船だろうと予測がつくがそれを知らないリリアはさっぱりのようだ。
彼女が分からないと言ったものについて説明できるがしたらしたでなぜ知っているのかという風になるので言わないでおく。
「俺にもさっぱりだ。やっぱり遺跡に行ってみないと分からないな」
そういって首を横に振る。まだ、本当のことは言えない。いや、そもそも言ったとしても信じてもらえないだろうが。
「それじゃあ、明日、遺跡に行きましょう」
夜、今日調べたことを思い返した。
歴史の本や伝承には有力な情報はなかった。
おそらくはダークネス・ラグナレクとの戦いのあとのことばかり書かれている。
しかし、「創世記」は違った。あれは惑星激録の設定資料集とほとんど同じことが書かれていた。やはりこの世界はゲームの未来の世界なのだろうか。
ただ、「創世記」にもダークネス・ラグナレクとの決戦の話はなかった。だからまだ確証は持てない。だが、そこが分かれば自分がこの世界に来た理由も分かるかもしれない。




