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33.真意はいずこ

「うわっ!」


 ドアの向こうからお手伝いさんが覗いてることに気付いて、思わず声をあげてしまった。


「あ、すみません。

そろそろ終わられたのかと思いまして」


 僕の反応に、お手伝いさんが申し訳なさそうにしながら入ってきた。


「……いや、構わない。

もう終わったところなので問題はない」


「なら、良かったです」


「……」


「……百合?」


 お手伝いさんに続いて入ってきた百合の様子が少し変だった。

 なんだろう。

 悲しいとか、そういうのではなくて、少し嬉しそうで、でもちょっと複雑な感じ?

 分からないな。


 2人が入ってきたことで、春夏(はるか)のお父さんは話を終わりにするように席を立った。


「それでは、秋冬(あきと)君。

いま言ったような感じだから。

また何か進展があれば連絡はしよう。

君も、何か分かったら教えてくれ」


「あ、はい」


「あらあら。

何のお話かしら?」


「いや、男同士の話なので」


「ふふふ、残念ね」


 おじさんに袖にされて、お手伝いさんは心なしか嬉しそうだった。


「……秋冬。

話は終わったんでしょ。

なら、いつまでもお邪魔してても迷惑だし、さっさと帰るわよ」


「あ、そうだね」


 百合に急かされるように促されて、僕も席を立った。

 僕と百合が礼を言って部屋を出ると、おじさんとお手伝いさんは玄関まで送りにきてくれた。


「じゃあ、秋冬君。

また」


「え?

あ、はい」


 おじさんの『また』という言葉が、なぜだか少し気になった。





「……これで良かったのですか?」


「ああ、ひとまずはこれでいい」


 2人が去ったあと、春夏の父親とお手伝いさんはそれだけ交わし、各々の仕事へと戻っていった。











「それで?

おじさんとは何を話したの?」


「ん?

ああ、ええと」


 僕は春夏のお父さんと話した、お手伝いさんのことを百合に説明した。

 百合は驚いていたけど、どこか納得したような顔もしていた。


「……そう。

それでおじさんは、その3人を引き続き調べる感じなのね」


「うん。

何か分かれば教えてくれるって。

で、こっちも何か分かれば教えて欲しいってことみたい」


「ギブアンドテイクね。

感情論よりは合理的で分かりやすいわ」


 春夏のお父さんは、どうやら百合のお眼鏡にかなったみたいだ。


「さて、それはいいとして、これからどうするかね」


 百合が話題を変えてきた。


「あとは、佐々木さんと義也に話を聞かないとだね」


 まだお昼前だし、どちらかもう一人ぐらい話を聞きに行けそうだ。


「……うん。

そうだね」


 百合は俯いて、なんだか上の空みたいだった。


「百合?

なんか少し変だよ?

お手伝いさんと何か話したの?」


 僕は、やはり百合の様子がおかしいことが気になって尋ねてみた。


「え?

そう?

べつに何もないわよ。

ああ、春夏のことを話してて、それでちょっと、春夏のことを思い出したからかも……」


 そう言って、百合は遠くを見つめるように、昇り途中の太陽を見つめた。


「……ああ、そっか。

そうだね……」


 春夏のことを思い出して、切なく笑うその目には見覚えがあった。


 僕の目だ。


 きっと、春夏がいなくなったばかりの頃、僕はこんな目ばかりしていたんだと思う。


「……そりゃ、義也も心配するよね」


「ん?」


「……ううん、なんでもない」




 寒さに凍る季節がまもなくやってくる。

 太陽はそれを踏みとどまらせようとするかのように、その身を懸命に焦がす。

 それが、自らを終わらせるための手段でもあると知っているのに……。



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― 新着の感想 ―
[良い点] なんだなんだ? お父さんとお手伝いさんがなにかしてんのかー? これはますますわからなくなってきたー!
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