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プロローグ
若干のホラー要素があります。
起きたばかりの陽の光が、水銀に輝く水面をよりいっそう彩る。
大きな森の中に、瞳のようにそこに在る湖。
その畔に立って、それを移す君の瞳も、とてもキラキラと輝いている。
「キレイだね」
と君が言う。
それに、
「君の方がキレイだよ」
なんて返せたら、どんなに素敵なことか。
そんなことは恥ずかしくて言えやしない僕は、
ただただ祈るんだ。
神様。
どうか、この最高に幸せな時間を終わらせないでください、って。
起きた太陽が再び眠りにつくように、輝きだした世界にも終わりが来るのだと、
この人生最大の幸せにも、終わりが来てしまうのだと、
僕に知らしめないでください、って。
その時の僕は、ただひたすらにそんなことを願いながら、彼女の瞳をずっと眺めていたんだ。
(寿々喜節句様作)