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プロローグ
「はぁ……はっ……はぁ……」
どれくらい走っただろうか。
フルマラソンを走りきったかのような動悸。
でも時間にしたらきっと数秒ほどだろう。
時間の感覚が狂うほど懸命に、全身黒色のソイツから逃げていた。
しかし、ソイツはとても素早い。
到底走って逃げ切れるようなものじゃなかった。
どんどん距離は詰まっていく。
すぐにソイツに追いつかれた。
気付けばソイツは目の前にいた。
ゆっくりとこちらを睨んでいた。
俺は尻もちをついてソイツを見ていた。
恐怖で立ち上がることはできない。
何も考える事が出来ずに、頭の中で映像だけがただただ流れる。
これが走馬灯というものだろうか。
頭が真っ白になったその時、ソイツと俺の間に潜り込む一つの影を見た。
その影はしなやかに舞い、ソイツを吹き飛ばした。
俺には何が起こったのか分からなかった。
しかし、自分が助かった事だけは理解した。
そしてこの出会いこそが、全ての始まりとなることをこの時の俺はまだ知らない。
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