3話 遭遇 3
3話目。
少年の正体が明らかに……⁈
翌日の夜。
またコンビニに出かけた青年は、
「……何をしておいでで?」
昨日と同じ場所の道の端で、草むらに隠れるように膝を抱えて泣きべそをかいている、あのコスプレ少年と遭遇した。
「ぼ、僕だって、一人前の魔法騎士だ…。だけど、見ず知らずの土地で、あんな、あんな風に尋問されるとは、思わなかった…!話は通じないし、この僕を子供扱いして…」
「(そりゃするでしょうよ)」
表情を変えることなく、青年は心の中で呟く。
「昨日、お前と別れた後、歩いていたら青い服を身に纏った者達に、迷子かと聞かれたから素直に頷いたら、"こうばん"という小さな倉庫のようなところに連れて行かれたんだ」
「(夜中に子供が歩いてたら当然の結果ですね)」
心の中でそう呟きながらも、うんうんと頷き、少年の話に耳を傾ける。
交番にて
「僕はアールヤ帝国魔法騎士団ロイヤルクォーツ所属、第三部隊副隊長、クゥベル・フルール‼︎つい先日100歳を迎えた‼︎」
「おいおいなんだよこの子。親はなにしてんだ?」
「こんな夜中に勘弁してくれよ。頭のおかしな子の面倒なんて見れないぞ」
頭を抱える男性警官二人。二人は疲れた表情で、顔を見合わせため息を吐いた。
「僕のはなしを聞けぇ‼︎」
真面目に話しを聞かない警官二人に、少年クゥベルは机を叩きながら立ち上がった。
「はいはい。ボク、ちゃんと自分の名前言える?」
「お父さんとお母さんはどうしたのかな?」
そんな憤慨した子供を軽く遇らいながら、優しく情報を聞き出そうとする警官。
「なっ⁈僕はクゥベル・フルール、100歳だ‼︎父と母は家にいる‼︎」
まともな返答が返ってこない事に、警官二人は隠す気配もなく大きくため息を吐きながら、身元確認を進める。
未だに分かっているのは、名前だけである。警官二人からしてみれば、その名前すら、本名かどうかも怪しいところではあるが…。
「はぁ…。分かった分かった。じゃあ住所は?自分の住んでるとこ、わかる?」
「僕をバカにしてるのか!アールヤ帝国中央通り3番街の一等地にあるフルールの家を知らないのか⁈」
バンッと勢いよく机を叩きながら、警官二人を怒鳴りつけ、睨みつけるクゥベル。そんな態度の子供に警官二人もイラついてきたのか、手に持つペンで、トントンと机を叩きながら、ため息混じりに告げる。
「ごめんね、ここ日本だから。普通の住所、わかる?」
「に、日本、だと?」
「そうだよ。もしかして観光客かな?名前も見た目も外人さんぽいもんね」
警官の言葉に、クゥベルは呆然と呟いた。
「ここは、ナーイヤ帝国じゃないのか…?」
「そんな国、聞いたこともないよ」
一一一一一一一一一一一一一一一一一
「騙したな貴様ぁぁ‼︎」
青年の襟首を掴み、ガクガクと揺すりながら涙目で叫ぶクゥベル。
「だから、ナーイヤ帝国だって、最初から"ない"って言ってるじゃないですか」
そんなクゥベルの様子を意にも解さず、淡々と真実を告げる青年。
「みんなして僕をバカにしてっ‼︎」
「事実バカでしょうよ」
涙目で叫ぶクゥベルの言葉を、即座にスッパリと切り捨てた青年。
クゥベルは言い返す事なく、俯いた。
少しの間の後、パッと顔を上げたクゥベルは、青年に向かって叫ぶ。
「僕は…、僕はな、王様に仕える【魔法騎士団ロイヤルクォーツ】に所属しているんだぞ!」
「そうですか」
恐れられるか、尊敬されるかすると思ったのだろう。クゥベルは淡々と返ってくる返答にたじろぎながらも続ける。
「そ、その中でもトップ5に入る実力を持っている!」
「それはすごいですね」
それでも青年が返すのは、淡々とした棒読みの心のこもっていない只の相槌である。
「ぼ、僕は強いんだぞっ‼︎」
「昨日の様子から察するに、"魔法"とやらも今は使えないのでしょう?それでも強いのですか?」
痛いところを突かれ、言葉に詰まるクゥベル。
「そ、それはっ……。だ、だが!僕は貴族で、副隊長で、魔法の技術もトップレベルで、みんなから尊敬される、将来を期待されたエリートなんだっ‼︎」
負けじと更なる自慢を重ねるクゥベル。だが、青年はそれをもスパッと切り捨てた。
「今は魔法が使えない、ただのボンボンのお坊ちゃんなのにですか?」
「うぐっ…」
「お金もなければ、この世界の知識もない。そこら辺の子供以下の貴方の過去の成績やらは、ここでは何の自慢にもなりませんし、役にも立ちません。つまり、貴方は今ただの子供でしかないです」
青年からの追撃に耐えきれず、クゥベルは大泣きした。
少年の名前が出てきました。
この名前なんですが、決めた理由がありまして、私自身、クゥベル君にしたら可哀想な理由かな、と思っております(今は言えませんが…)
4.5話くらいまでで一区切りになると思いますので、出来次第UPしていきます。
それでは次回もどうぞよろしくお願い致します。