1話 遭遇
「…………」
「そこのお前!僕は魔法騎士団に所属する騎士だ!ここはどこか答えろ!さもなくば、攻撃する!」
ある冬の日の深夜、コンビニに買物に出た帰り、コスプレをした頭のおかしな子供と出会いました。
推定身長145センチ。紺色の髪に翡翠色の瞳の綺麗な少年です。
自分の目線よりも低い位置から、ただ掌を向けられたところでなんの脅しにもならないということを、まずは簡潔に教えてあげるべきでしょうか?
「おいお前!聞いているのか⁈」
返事をしない相手に、掌を向けたまま怒鳴り散らす小さな少年。対して、冷静に返事をする青年。
「はい。聞いてはいます」
「なら僕の質問に早く答えろ!」
「それは良いのですが、どう答えるかを迷っておりまして」
尚も怒っている少年に、青年は顎に手を当て悩む仕草でほんの少し首を傾けた。
「お前、この僕の手が見えないのか⁈大人しく答えないなら、本当に攻撃するぞ‼︎」
ズイッと、更に主張したいのか、掌を向けたままその手を振る少年。それに少しの沈黙の後、
「……その小さな掌で、掌底でもする気ですか?」
青年は疑問を口にする。
それにカッと顔を赤くし、怒鳴り散らす少年。
「っお前、僕が小さいからってバカにしているのか⁈僕は魔法騎士団に所属する騎士だ‼︎攻撃魔法なんて、造作もないんだぞ‼︎」
「そう言われましても……」
逆上している少年にも青年は静かに答える。それにも苛立つ少年は、バッと手を上に上げ、
「もう怒った!目にもの見せてやる‼︎
《業火の炎に灯りを灯し、その魂までもを灼き尽くせっ‼︎》」
口上と共に勢いよく青年に向けて振り下ろした。
……………………………………。
少年は、呪文らしきものを口にしたが、当然何もおこらない。
「…………随分と、重めの病気を患っていらっしゃるようで」
ポツリと呟いた青年の声は、少年には届かなかった。
「な、何故、発動しない……」
呆然と自分の掌を見る少年。動揺からか、その手は震えていた。そして、少年の目には涙が溜まっていた。
「……とりあえず、お話でもしましょうか」
見た目小学生の少年を一人にしておくのは危ないと判断した青年は、ため息と共に少年に優しく声をかけた。しかし、その表情はとても苦い表情だった。