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2011年2月 寅蔵、さがしもの人生

某月某日


 財布がない、とずっと探している。

 昔から、よく財布をさがすおじさんだったが、認知症でも、やっぱり財布をさがすおじいさん。

 いつもはだいたい、昨日来ていた上着かズボンのポケットにあるのだが、どの服をみても入ってない。

 いつも財布を置きそうな場所をみてもない。

 洗濯機の付近も。


 三日後。


 まだ財布を捜している。あまり遠くへ外出をしなくなったので、外で落とすことはまずないだろう、と思いつつもあまりにも見つからないので、少し心配になる。

 寅蔵も心配になるのか、思い出すたびに探している。


 翌日。


 ヨシコのていしゅが寅蔵の車の中から財布をみつけてくる。

 免許証も入っていたのでひと安心。本人はけろりとしている。

 現金はほとんど入ってなかった。

 すでにATMもひとりでは使えない様子で、お金をおろしてくる、ということがなくなったためだった。



 某月某日


 車のキーがない、とさがす。

 これもよく探すものの一つだった。

 置き場所を決めたにも関わらず(食卓の脇のフックで寅蔵の席のすぐ横)、まずそこに置いたためしはない。

 これも上着かズボンのポケットから発見されること多く、こちらを重点的に探すが、出てこない。


 翌日


 まだずっと探している。

 オマエが最後に乗っただろう、オレは知らん、と主張しているが最後に乗ったのは寅蔵なのでそう言ってやったが、全然聞いてない。

 ゴミ置き場の直近に駐車してあったので、翌朝までに車を移動させねばならず、ヨシコはあせってキーを探す。

 夜、帰ってきたていしゅと、とりあえず車だけでも移動させよう、と曲尺を持って外へ。

なんとか曲尺でキーを外し、ヨシコが運転席へ、ていしゅは車の後ろで力一杯車体を押す。

 前方へ二メートルほど動かした時、ハンドルがロックされてしまう。

 思った向きへ進まなくなってしまったので、ていしゅが代わって運転席へ入り、さてどうしようか……と助手席をみたらなんと、キーがちょこんとあったではないか。

 寅蔵、インロックしていた模様。


 ちなみに、あと二本あったはずのスペアキーも、寅蔵がどこかになくしてしまっていたので、これが最後のキーだった。

とにかく出てきてよかった、とヨシコは安堵する。


 出てきたキーを隠そうと思ったが、翌日その車を車検に出す必要があったので、一応寅蔵にも見つかった旨を伝える。

 インロックしてあった、と言っても、「んなわけ、ねえ」と。

 車の運転をやめるように言うと、ひどく怒りだす。

 怒っても、暴れたりはしないのでまだいいかも、その代わりに、ぷい、と自室にこもってしまう。まあ、しばらくたつと出てくるけど。


 そして今日。


 順番から言うと、また財布がなくなってるかも……

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