2011年秋 寅蔵、なんとか頑張ってる
2011年秋のまとめ
さて、ヨシコの父寅蔵、現在七十七歳であるが八月に維持してた好調期は、とりあえずまだ継続中だった。
時々山の畑まで一時間近くかけて歩いてでかけ、軽い農作業をしてま歩いて戻るということもある。
しかし、やはり涼しくなってきたのを機に、すこーしばかりボオっとしている状態が見られるようになった。
それでも見えないものが見えたり、という妄想系はないようだった。
ヨシコの次男・ととを見るたびに
「ほんと、可愛いな~」
と目を細めている。
知的障がいということもあるのだが、この小僧が小学六年にもなって
「じちゃん、すき!」
などと臆面もなく公言できるところが、かなりの売りなのだろう、とヨシコは思う。
ととのおかげで、寅蔵もかなり色々な面で張り合いを感じているらしく、それも体調に反映しているのかも知れない。
世の中何が幸いするか、ほんと判らんものだ。
寅蔵、今日もひとりでお茶を水筒に詰めてお出かけのしたくをしている。
それから、山まで約一時間かけてのぼり、草とりをしてくるのだと言って、まず近くの農器具店まで歩いて除草剤を買いに行ってから、楽しげに山に向かう。
夕方になったらヨシコが車で山の上まで迎えに行く予定である。
というのも、先日はひとりで歩いて山を下ってきたものの、途中で足がもつれて転びそうになり
「やっぱり下りはこわいなあ」
と言ってたため。
危ないから迎えに行くから、待っていてね、と伝えれば一応、待っていられるようにもなっていた。
……このように、車の運転はすっかりあきらめ、ちゃんと自分で買い物もして計画を(ある程度)たてて行動できるようになっている。
すでに要介護度がついていたことすら忘れかけている家族だった。
月に一度定期的にかかっている主治医の○○先生ですら
「フシギやな~」
と言ってるくらいだから、やはり不思議なことではあるらしい。
今日なんかは、昼ごはんの最中急に、
「近頃、とらは調子いいみたいだな」
などと言い出した。
長男とらの事はあまり話題にしない寅蔵なのだが(なんといっても次男ととが大のお気に入りなので)、あまり気にしていない家族のこともそれなりに気にかけている、という所も何だか普通っぽいし。
このまま冬も元気に過ごしてほしいなあ、と願うヨシコであった。




