2011年1月 まずは簡単にご紹介です
一家の主婦・ヨシコには気になることは様々あったのだが、その中でも特に近頃気になっていたのは、年老いてきた父のことだった。
現在寅蔵七十六歳。
若い頃から全国あちこちを渡り歩き、主に力仕事をして過ごしていた。
ひょんなきっかけで当地に定住し、長く農業をしていたが、その後塗装業に転職。
二十年近く、自営の塗装業をひとりで気ままに行っていた。
家族は一歳上の妻と娘、娘の夫とその子ども三人。
既往症……十年以上前に直腸ガン。
これはすばらしいお医者のおかげで完治した。
かなり大きな手術の後、ストマ(人工肛門)となる。
現在はあまり活発に動きまわることもなく、起床はだいたいいつも7時くらい。
朝起きて、家族のお茶を入れ、ご飯を食べてからは軽ハコを運転して孫のスクールバス送迎(車で15分位)、その元気がなければヨシコにその任をまかせ、そのまま居眠りに突入する。
その後昼までベッドで寝るか居間で座っており、昼ごはんの後はまた居眠りしている。
午後は気が向いたら外に出て車で近くの畑まで出掛けたり、買い物に行ったり。
気が向かなければずっと居間か寝室で寝ている。
夕飯の後はひとり、お風呂に入ることが多い。
ご飯はしっかり食べたりあまり食べなかったり。
お風呂もストマのケアが面倒なようで、これも入ったり入らなかったりだった。
そして夜は九時前には寝てしまう。
子どもの冬休みをはさんで、ますます外に出ることが少なくなった寅蔵。
本人が一番困っているのは、すぐ物を失くしてしょっちゅう探していること。
あと、目が見えにくいのだろうか、朦朧としてくると、少し遠くに不思議なものが見えるらしいこと。
グランドゴルフの人たちを農作業集団だと思いこんだり、山に牛が逃げ出してみえたり。
周りが困るのはまず
・薬をちゃんと飲めていないようす。
・車の運転が心配。
本人に言わせると、車がない生活なんて考えられないと。
確かに車を取り上げたら一挙に老けこむだろう。
しかし事故はこわいし。
うちの子らみたいな小さいのを巻き添えにしたら…… などと考えると、ヨシコ、すぐにでも免許証を返してもらいたいものだと感じていたのだが。
薬については、一部の認知症に効くらしいというアリセプトという薬を処方してもらって飲んでいるが、これも確実に飲んでいるかが怪しい。
なので、ヨシコは薬を小分けできるケースを百円ショップで買い、毎朝飲む薬七種を区分けして入れてみた。
それでも、底にはりついた薬をとるのに苦労したり、飲むのを間違えたりしていたので、ちょっと工夫して 一回に呑む分をいちいちセロファンテープで一列に留めておいてみた。
寅蔵には不評だったが、とりあえずこれで様子をみることにした。
車についてはなるべく運転させないように考え中。
もう少し暖かくなったら、少しはマシになるかな?
と、甘い考えで過ごす家族であった。
ずっと後から知ったのですが(もしかして常識なのかもしれないのですが)、一回の処方箋でたくさんお薬が出される場合は、診察時にお医者さまに「一包化」をお願いすれば、一回に飲む分をひとつにまとめて貰えるとのこと。処方箋にその旨記載されるようです。料金加算ないように聞いたのですが、要確認。ひとつ困るのが、薬を出す薬局によっては、一包化に少し手間取るところもあって、我が家の場合は、近頃の例では、大体9錠で20分位かかります。受取時間に余裕があれば、お勧めです、