07 ある意味ちょろイン
「チカチカさん、私の為にあるような魔法です。これにします。ありがとうございます」
きりりとした顔でチカチカさんにお礼を言う。
「選んで……YESと」
さっそく取得してみた。
が、創造魔法の使用方法がわからない。
「チカチカさん、どうやって創造魔法を使うんですか?」
「想像する」
いやまあそうなんですけどね。
「じゃあ……照明器具……頭上に豆電球みたいな……」
ファイヤーとか言って炎を出してみたかったが、それは外の広い空間でやろう。
「呪文いるのかなあ? “天井付近にライトが欲しい”んだけど……」
天井を見ながらそう言った途端、ポワンと光球が天井に出現した。
「あ! で、できた……!」
「キャン!」
「うん、ありがと~!」
かなり興奮する。
さっき見ていたからだろうか、大きさも形も球体AIに似ている。
最近目にした出来事がイメージとして反映されやすいのかもしれない。
その光球はいろいろ考えている内になくなってしまった。
10秒くらいか。
「消えるの早いな~」
しかもステータスを確認すると、MPが5も減っていた。
「あれで5も……」
使いどころがちょっと浮かんでこない。
燃費が悪すぎる。
光魔法はひとまず保留だな。
「チカチカさん、この中で水出していいですか?」
「いいよ」
次は管理人の許可をもらってよくある水の魔法を思い浮かべる。
「水の塊で敵を攻撃するやつで……“ウォーターボール”」
すると小さな水の塊が目の前に現れたが、宙に浮いているだけだ。
「そっか、じゃあ“あの壁に向かって突進する”」
水の塊はひゅーんと壁にぶつかり、パシャッという音を響かせた。
「おお~!」
成功はしたのだが、あれでは敵にダメージは与えられそうにない。
そしてMP消費は5。完全に水遊びレベル。
「イメージが足りない? もう1回“ウォーターボール”で、壁――」
今度は方向を指示していないのに水の塊がひゅんっと壁に向かっていった。
「びっくりした~。チカチカさん今“ウォーターボール”って言ったらうわっ」
またひゅんっと水の塊が壁に向かっていった。
「……もしかしてこれって制御が難しい?」
「かなり」
「ええ……」
「その時のイメージ練度によって消費も違う」
「えええ…………」
こんなプレイヤーのスキルが要求されるやつは私に向いてない。
ボタン連打して武器をぶんぶんするだけのゲーム実績しかない。
というかちょっと考えれば、創造ってつくくらいだからそんなもんだとはじめに気付くべきだった。
せっかく取得したのに……。
「キャン」
落ち込んでいたらダクスに慰められた。
癒し。
「うん、そうだね。練習して制御が上手くなればいいんだもんね」
楽しみが先にあると思えばいい。というかそうじゃないと困る。
そうと決まれば基本的な、使いやすい攻撃スキルを1つ習得しとかないと。
しかし、再度確認したステータス画面から2つ空きがあるはずのスキル枠がなくなっていた。
「あれ? ん~?」
何度見ても空きはないし、スキルの項目に視線を合わせても何も変わらない。
「チカチカさん、スキル枠の空きがないんですけど」
「さっきので枠を全部使った」
「え? …………え!?」
ちょっと!
「聞いてない……!」
空き枠を複数消費とかあり?
「残りの枠をすべて使う表示も出てたし詳しい説明を聞かずに取得したのははる」
「……へい」
まさに自業自得だった。
あの時のきりりとした顔の私をぶん殴ってやりたい。
うわあうわあとうめき声を出しながらダクスの体をシャカシャカする。
モフ。
ひとしきりモフを堪能したところで少し落ち着いた。
「……今日はもう休みます」
ログアウトしてめそめそしながら寝よう。
明日だ明日。
メンタル弱子。
「チカチカさんいろいろありがとうございます……おやすみなさい……また……」
木の壁にもたれながらログアウト操作をしている時に、一瞬温かい何かが頭に触れたような気がした。