06 即決
ちょっと癖のある知的存在とお近づきになってしまった模様。
私まだ人と会えてないんだけどどういうこと。
「えっと、チカチカさんはどういう存在?」
「どういう存在だと思う?」
うわ、質問を質問で返してくるやつきた。
「……木の精霊とか?」
「じゃあそれで」
「えっ?」
……絶対違うと思う。
「あの、木の精霊じゃないですよね?」
「木の精霊」
「…………」
何を言っても木の精霊スタンスは崩してこないだろうというのがわかったので、もう木の精霊で。
「木の精霊チカチカさん、この木はなんですか? セーフティーエリアですか? 始まりの街は?」
「ここが始まりの島。この木ははるの家だから安全」
どうしよう、余計混乱してきた。
「ええと、始まりの島っていうのは始まりの街の島バージョンですか?」
「そう」
「木が私の家ってどういう事ですか?」
「拠点、ホーム」
「おお~……!」
このゲームは最初から自分の拠点が持てるタイプなのか。
やった。
「あ、もしかしてチカチカさんは私の家の管理人ポジション?」
「そう」
管理人がいるってセレブだな。
「家をカスタマイズできたりします?」
あるだけありがたいんだけど、今は何もない6畳ほどのただの空間だからね。
「はるのレベルが上がれば」
「へえ~!」
ワクワクが止まらない。
「早くレベル上げに行こ! まずはスキル取って――」
さっそく自分のステータスを確認しようとすると、ダクスのステータスも見られるようになっていた。
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名前:ダクス
種族(ミニチュアダックスフンド ロングヘア)
Lv:1
HP:8
MP:15
攻撃力:5
防御力:6
知力:6
精神力:7
素早さ:8
器用さ:5
スキル:《追跡Lv:1》
称号:《はるの心の友》
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「よっ……追跡ってスキルあるんだ~すごいね~」
「キャン!」
思わず「弱っ」と言いそうになったが、よく考えたら私も似たようなものだった。
ブーメラン。
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名前:はる
種族:人間
職業:テイマー(転職不可)
Lv:2(↑1)
HP:15(↑5)
MP:25(↑5)
攻撃力:7
防御力:7
知力:8(↑1)
精神力:7
素早さ:8(↑1)
器用さ:7
スキル:《テイムLv:1》《神の言葉》《》《》《》
称号:《創造神の加護》
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良かった。
どうにかHP10から脱出したぞ。
これでスライムのボディアタックなら1回は乗り越えられそう。
「ねえチカチカさん、スキル取得の相談とかしても大丈夫ですか?」
「いいよ」
「ありがとうございます!」
どこに向けて言えばいいのかわからなかったので、とりあえず天井に向けて感謝しておいた。
現時点で取得できるスキルの空きは3つ。
選択できるスキルはリストで10ページ分ある。300近いスキルだ。
あの眼鏡少年が序盤のスキル選びが重要だと言うだけある。
自分の行動によってすぐ取得できそうなスキルを今ここでとるのはもったいない。
自分の力では難しく、ここを逃せば手に入らなくなりそうなスキルかつ自分のプレイスタイルに合うスキルを選ぶ必要がある。
「探索系は欲しい……遠距離攻撃の手段も……」
敵に近付かずなるべく安全に攻撃したい派。
「チカチカさん、後からとるのが難しいスキルってどれかわかりますか?」
「どういう生活をしたいかによる」
「んー、攻略とかにはそんなに興味なくて……テイマーだからいっぱい仲間を増やしたい。クリアするのに時間がかかりそうなクエストはあまりやりたくないのでお使いクエストみたいなのメインで。家があるからダクスと一緒に暮らしやすいように整えたり生産活動とかちょっとやってみたい。畑で何か育てたり。レアアイテムとかそういうのも気になるから宝箱とか開けてみたい。ダンジョンも一度は行ってみたいけど危ない目には遭いたくない。もちろん痛いのとかは嫌だけど敵を倒して強くなる楽しみも味わってみたい。パーティープレイもしてみたいけど足を引っ張りたくないからそういう時の為に役に立てそうなスキルもあればいいなって思ってます」
二兎を追う者は一兎をも得ずって言うけど、私の場合二兎どころじゃなく10ウサギくらい追いたい。
最初は生き物と暮らしたいだけだったが、実際始めてみるとどんどん欲が出てくる。
「好きな時に好きな事をしたいって事でいい?」
「あ、はい」
なんか簡潔にまとめられた。
「ならはるの好きそうな魔法がある」
「えっなにそれなにそれ」
さっそく魔法関連のリストを開いて確認する。
「えーどれだろ…………あっ!」
リストの1番下にそれはあった。
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《創造魔法》
使用者の能力・想像力により発動する魔法
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ハートを撃ち抜かれた気がした。