第17話
俺達はセレナおばさんに案内されて旦那さんの店に来ていた。目の前に筋肉が凄く茶色の長髪で背が低い50過ぎのオッサンがいる。この人がセレナおばさんの旦那さんらしい。セレナおばさんと並んで立つと、大人と子供に見える。旦那さんは間違い無くファンタジーでお馴染みの、ドワーフで間違いないだろう。
「なんじゃセレナこの魔物は!」
「落ち着きなよあんた!この子達はマリアちゃんの命の恩人だよ!」
目の前のドワーフは、片手に大きなバトルアックスを、悠々構えて警戒していた。
流石ドワーフだな!あの小さな体で自分より大きなバトルアックスを持っても、余裕な感じだな。
セレナは旦那に説明をすると、持っていたバトルアックスを壁に立てかけた。
「すまん!儂が悪かった……まさかマリアの嬢ちゃんを助けてくれた恩人とは!詫びはいくらでもしよう……何でも言ってくれ!」
ドワーフは謝りますながら頭を下げていた。それに驚いたマリア
「ドミスおじさん頭を上げて下さい。大丈夫ですよケン様は怒ってませんから!」
{そうですよねケン様?}
{ああもちろん!怒ってないよ。普通なら驚いて腰抜かすのに、武器を構えて挑み掛かろうとしてたのにはこちらが驚いたよ?}
「ふふ……ケン様それは当然ですよ!だってドミスおじさんは元Aランク冒険者で、私の元パーティーメンバーですから!」
「ふっそんな昔の話し恥ずかしいわい!今は鍛冶師のドミスじゃ!」
「何が恥ずかしい話しなのよ。未だに酔っぱらうと昔の冒険の話しを、若い冒険者に自慢してるくせにさ!」
「そっそんな事は、知らんぞ……」
セレナの言葉にドミスは顔を背けていた。セレナはそれを見ながら呆れて息をついた。マリアはそこ様子に微笑み。ドミスの後ろに飾ってある、1枚の絵を見ていた。その絵には3人の男女が描かれていた。
ん?マリアが見ている絵の男性は間違い無く、このドミスだろ?でこの16、7の少女はマリアか?で、もう1人の美人で巨乳のスタイルの良い女性は魔法使い?
{マリア?あの絵?マリアとドミスだろ?}
{はいそうですよ。昔私が若い頃の絵です。あれは確か初めてパーティーを組んだ時の記念に、絵師に書いてもらった物です}
{そうか……エルフとドワーフは長命だったな?て事はあのもう1人の美人はもう死んでしまったのか!残念だな……}
{え?ケン様生きてますよ?ほら目の前に!}
マリアの言葉を聞き、顔を向けるとそこにはセレナが居た。ケンは目をパチパチさせ見開き、絵とセレナを見比べていた。それに気づいたドミスが哀れむ顔でケンに近づき、ケンの肩に手を置きうんうんと頷いた。ここに言葉が通じなくても分かり合えた男達がいる。そしてその1人と1匹は哀れむ顔でセレナを見た。
「なんだい?あんた達は?気持ち悪い顔してさ?……ん……ははん!なるほどね!そう言うことかい!あんた良い度胸だね!」
ケンはセレナの只ならぬ殺気を感じると、ドミスの影に隠れ【隠密】を使い、【影移動】してマリアの後ろに待避した。それと同時にセレナからバレーボール程の火の塊が、ドミスに放たれた。
「うわっ!よせっ!セレナ……」
ボスンっと火の塊はドミスに当たると消え、ドミス無傷で倒れていた。
{あれ?何故無傷?あの火の塊が当たったのに?}
{それはですねドミスおじさんは、火耐性のアイテムを着けてるから無事だったのと、セレナおばさんが最小限の手加減をしたからですよ。まぁそれでもそれなりに衝撃を受けて、気絶しますけどね……昔と変わらないですね……昔はドミスおじさんが他の女の人に見とれてたり、口説いていたときに良くありましたね}
{ケンお兄ちゃん!怖いよ~}
{うん!そうだなこの人を怒らせては、駄目だぞルティ!}
{うん!分かった!}
俺達はドミスが気絶している間に、店の棚にある武器を見ていた。
う~んこれって言うのが無いな……進化して指も長くなり、暇なときにルティをモフモフしながら【掴み】の練習をしたおかげで、物を掴むのに馴れてきたんだよな……でも、剣を片手ではまだ持ちづらくて、両手で持たないと落とすからな。じゃあ両手剣か?う~ん……あ!
俺は見つけてしまった!これなら四足歩行でも二足歩行でも使いやすい!これなんて言ったかな……確か西洋の昔の剣で、ジャマ……ジャマダハルだ!カタールとも呼ばれてた筈。刀身の長さは、80から90位かな?幅30cm位で二等辺三角形で少し肉厚で、基本的にこの武器は突き刺す攻撃が主体だけど、斬りつける事も可能それに何が良いって。それは持ち手の部分がHの形になっているから握りやすい。それに口で咥えるのも咥えやすくて、突き刺すのにも斬りつけやすい。そうだな贅沢を言えば持ち手の部分をもう少し広げてもらいたいかな。
俺は他にも必要な武器装備を見て回り、刀身が1m位幅30cm位の大剣と、高さ1m半幅50cm位のタワーシールドを2枚を選んだ。全ての武器は鉄のような物で出来ていた。そうこうしているとドミスも目を覚まし、頭を掻きながら武器を見ているケンの下にやってきた。
「いや~久々にセレナの1発を食らったわい……あはは……それとお主ずるいぞ自分だけ逃げおって」
俺はドミスの言葉に知らん顔しながら顔を背けた。それを見たドミスは笑いながらケンに近づき、形を組んできた。俺は進化した事で大きくなり普通に座っても1m50位で、ドミスと同じ高さ位だ。お互い目を合わすとお互い「くっくく」と笑っていた。
{ケンお兄ちゃんなんか?楽しそうだね}
{そうですね。私も出会って初めて見ますね。あんな楽しそうなケン様}
何故か俺はドミスと波長が合うらしく。昔からの友人でもあるような気持ちになっていた。そしてマリアを通訳として、武器の改善を依頼すると、そんなのすぐ出来ると言い工房に入るとものの数分で戻って来た。俺はそれを手に掴むと、想像以上に手になじみ、咥えるのも楽になった。それと先程の事であることを思い付きそれをドミスに言うと、ドミスは子供が新しい玩具を与えられたような顔で喜んでいた。
「それじゃあ私達は、ルティ様の家族を迎えに行ってきます」
「ああ!気をつけて行ってくるんだよ?」
「はい大丈夫ですよ!」
「ケン!お主の依頼品は必ず。オークキングが来る前には完成させてやるぞ!楽しみにしておれ!」
ドミスの言葉に俺はドミスに向かいサムズアップをすると、ドミスもサムズアップで返してきた。それから門に向かい守衛に仲間を連れて来ると言い。ポーラー達の居る森に向かって走って行く。マリアはルティの背に乗っていた。