第六十四話 …信じる。
矢田先輩のおばさま達の幻影は植田に大ダメージを与えた。
十分ぐらい経っただろうか?
植田の悲鳴は聞こえなくなっていた。
「そろそろ解除しようか」
矢田先輩は指をパチンと鳴らすと、おばさま達が一瞬で消えた。
後に残ったのは白い顔をした植田だった。
「やった…のか?」
岳信は、警戒しながら言った。
「いや、まだだな」
夢呂日が断言した。
どう言う事だ?
「流石にあれには耐えられないだろ?」
俺が夢呂日に尋ねると。
「岳信とお前がフラグをたてたから、きっとまだ生きてる」
なんじゃそれ。
そう思っていたのだが。
夢呂日が言った事は真実だった。
「流石の俺も、フラグをたてられたら、復活するしかないよなぁ。フラグがたってるならなぁ!」
そう言いながら植田はふらふらと立ち上がった。
てか、フラグを意識し過ぎだろ。
「もういい、手加減はもうやめた。憎き安田の生徒であるお前達を粉々にする、俺に地獄を見せたことを後悔させてやる」
そう言った瞬間、科学部員全員が激痛に襲われた。
「うがぁ⁈」
俺はその場にうずくまる。
どうやら俺は腹パンされたみたいだ。
「まじか…」
陰影が信じられないといった感じで言った。
なぜなら、俺たちには植田の攻撃が全く見えなかった。
ここまで力の差があるのか?
たとえ、俺たちの魔法が通用してもこいつには勝てないんじゃないかと思うほどだった。
「ほう、貴様はやるようだな」
しかし、科学部員で唯一植田の攻撃をガードした者がいた。
「ほんと…ロクでもないね」
そこには日本刀を持った夢呂日がいた。
あいつが武器を調達しに行ってたのはこれか。
確か、剣道場にあったような気がする。
植田の拳には切り傷ができていた。
やっぱ何者なんだあいつは。
「学」
夢呂日が俺を呼ぶ。
「お前は岳信と陰影を復活と俺たちの補助ビームをかけてくれ」
とりあえず自分に復活のビームをかける。
植田は自分の手を治療していた。
「それでお前は理科室に行け。それでなんでもいい、アイツを倒せそうな物を見つけるんだ」
「おま、なに言って…」
「お前にしかできない事だ。時間は俺達が稼ぐ。覚悟を決めろ」
「そう…だよな」
俺は両手で岳信と陰影を復活させる。
「死ぬなよ。お前ら」
俺は振り返らずに理科室へ走った。
「任せろ」
後ろからそう聞こえた気がした。
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「ふん、馬鹿だな」
そう言って、俺が去った後に刀を持って構える夢呂日に植田は言った。
「何がだ」
「お前らのその信頼だよ。俺なら多分見捨てて逃げるぞ」
「ふん、馬鹿馬鹿しい」
あいつが裏切るはずがない。
夢呂日にはその確信があった。
いつも一緒にいて、見てきた俺たちだ。
この一年間を過ごして、あいつが逃げるなんて心を見なくても分かる。
「まぁ、いい。俺が一番危険視していたのはお前だ。一体何者だ?お前は」
「なあに、ただの科学部員だよ」
「本当か?」
「絶対嘘だ」
そう言って、後ろで倒れていた岳信と陰影が立ち上がる。
「かもな」
そう言って最後の戦いが始まる。
最後の切り札が来るまで…。
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階段を登って理科室に入って現在。
俺は理科準備室の棚にあるものを見つけた。
もう、数ヶ月見ていなかったペットボトルロケット。
それが綺麗に仕舞われていた。
これを使えば、何かできるかもしれない。
「何か…無いか?」
俺は色々探しながら、とりあえず一つの薬品を取り出す。
確かかなり危険だった筈だ。
あと、あれも使えるだろう。
俺は入学式で先輩達がやっていた、あれを思い出した。
それを装置に入れて電気分解し、風船に入れていく
そして、俺はもっと危険だと思われるものを見つけた。
「これは…」
大きな鉄に入れられたそれは…。
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そして俺は全ての準備を終え、屋上に立った。
カッコつけてるとかいくらでも言えばいい。
これで最後だ。




