第五十七話 ジショウチョウカンゼンアンドロイド
自称超完全アンドロイドのMIYATAは何者なのか?
俺たちはとりあえず距離をとり、戦闘態勢に入る。
見た目は完全なメガネをかけたチンパンジーに似た人間だが、体からは機械のような音が聞こえてくる。
「テキノカズ、キュウ。それぞれ、『イツショウドウテイ』『キンニクバカ』『カゲノウスイヤツ』『エロホンノカタキ』『チュウゴクノヒト』『タダノデブ』『シスコン』『デカイヤツ』…『大魔法使イヤスダ』トカイセキ」
ちょっと待てや!
「誰が一生童貞だ⁈ふざけんな!」
俺は叫んだ。
「筋肉馬鹿だと⁈」
岳信がキレる。
「…」
陰影がなんとも言えない表情になる。
「なんか嫌だな」
夢呂日が不満気に言う。
「なんの魅力もない」
張先輩も不満気に言う。
「ただのデブじゃないよ⁈」
岡本先輩は驚いた表情を見せる。
「シ、シスコン⁈」
矢田先輩はショックを受けたように言う。
「まぁ、でかくなるしか利点ないしな…」
落ち込んだように沙羅先輩が言う。
この時、全員から殺意が溢れ出す。
「………」
ただ一人、安田先生は黙ったままだった。
というか、藤川先輩が呼ばれてなかった気がする。
「ケイサンカンリョウ。モクヒョウ、『大魔法使イ』イガイノメンバーヲセンメツ。ソシテ、カノウナカギリ『大魔法使イ』ヲヨワラセル」
その言葉をMIYATAが言い終えた瞬間、夢呂日が銃を放つ。
しかし、魔法の弾丸はいとも簡単にMIYATAによってなぎはらわれてしまった。
「こいつ、発言からしてかなりの強者だ!気をつけろ!」
夢呂日が叫ぶ。
それと同時に、俺と陰影が動く。
陰影が離れたところから『リア充』を投げ、爆破。
そこから、俺が『光』で斬りかかる。
爆破の黒い煙の中から二本の腕で『光』を受け止めるMIYATAの姿があった。
鉄よりも硬い謎の物質。
もう、どうすんのコレ?
…突然、MIYATAの目から光が出て、俺と陰影を照らす。
「ノウリョクカイセキカンリョウ。『ビーム』と『ハイタテキケイザイスイイキ』をコピーします」
まさか…。
「コピーカンリョウ。コウゲキヲカイシシマス」
その途端。MIYATAが俺が放つものと同じビームを放ってきた。
俺は咄嗟に身を守って、目を閉じたが、ビームは当たらなかった。
「「「岳信!」」」
目を開くと、勇敢にも岳信が『スターシールド』でガードしていた。
さらに、MIYATAのそばからはMIYATAの影が現れて、こちらに近づいてくる。
「夢呂日、援護!」
「了解、陰影!」
そう言いながら夢呂日は銃を放つ。
陰影も『排他的経済水域』を発動し、その影に『大根』で、戦わせた。
しかし、このままでは時間が経つだけだ。
持久戦になってしまい、最終的には負けてしまう。
それに奴は俺たちの魔法をコピーしてきた。
一番厄介なのは夢呂日の魔法をコピーされること。
「こいつは、俺の出番だなぁ。学。ちょっと来てくれ」
ふと岳信が言う。
「わかった!」
何をするのかわからないが、大切なことだろう。
俺はビームを受け止め続ける岳信のもとに走る。
「これよろしく」
そして、クソ重い『スターシールド』を渡してきた。
「ウオオオオオオオ!!ああああああああ!!死ぬぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
決して壊れることはなく、地面においてもいるのだが、倒れないようにするだけで辛い。
よくこんなもん持ってるな。
「さーてと。頑張れよ!学。ちゃっちゃと済ましてくるから!」
そう言って、走っていく。
走って、走って、走る。
体育会系の岳信は速い。
それはもう物凄く。
「二人とも避けろ!」
岳信の声に陰影と夢呂日が影から離れる。
陰影は離れるついでに『リア充』を置いて爆発させる。
そして、煙が晴れた時。
岳信は捉えた。
そして…。
「おらぁぁぁぁぁあああ!」
殴る。
走ってきた勢いで。
通常の千倍で。
思いっきり、殴った。
「………」
勢いに飛ばされたと思えば、影は消え去る。
岳信の走りは止まらない。
さらに加速する。
ビームを放っていたMIYATAは盾から、
一度中断し、岳信に狙いを変える。
「させるか!」
俺は盾を下ろして、MIYATAの放とうとしている同じビームを放つ。
MIYATAと俺のビームが相殺する。
「うぉぉぉぉぉおおお!」
岳信はそれを綺麗にかわす。
そして、近づいて腰を深く落とし…。
大きく腕を震わせて股間をぶん殴った。
「…キケ…ン……キ………ケ……」
物凄い勢いでぶっ飛んでいき、股間から崩れていくMIYATA。
…その場にいた全員がなぜか股間を抑えていた。
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漫画とラノベとエロ本の図書室を抜けてしばしば。
長い廊下を歩き、目の前には如何にも魔王の部屋みたいな雰囲気を醸し出す扉があった。
「皆さん。お願いがあります」
安田先生が、真剣な表情で言ってくる。
「植田とは私一人で戦わせてもらえませんか?」
「え、先生。何言ってるんですか?」
俺は驚き、先生に聞いた。
「私は彼との過去に決着をつけなければなりません」
植田との過去?
そんな話を聞いたことはない。
俺たちはただ静まりかえっているだけだった。
「万が一、私が負けそうになったら、誠に勝手ながら手助けして下さい。本当にピンチならば逃げてください」
…。
何も言えなかった。
もしここで反論したならば、先生に迷惑をかけるだけだと全員がわかっていたからだ。
「先生と植田の関係ってなんなんですか?」
夢呂日が先生に聞いた。
「『親友』…でしょうか」




