第五十五話 闇の世界でLet's恋バナ!
俺たちは暗い闇の中を飛んで行く。
俺たちが入った望遠鏡の中には真っ暗な空と灰のような大地が広がっている。
俺たちはそんな黒の世界の対物レンズのところにあるらしい、植田の城へ向かっていた。
「先生、あと、どのくらいですか?」
疲れたように夢呂日が言う。
「あと、 一時間ぐらいですかね」
「マジかよー」
まぁ、かれこれ、三時間飛んでるしな。
ちなみに、飛ぶのは張先輩の能力だ。
植田の城はまだ見えない。
それにしても…。
「暇だ」
「それな」
岳信が便乗する。
三年の二人はゲームの通信プレイをしているし(自分達に決戦にゲームを持ってくるという発想が無かった)、張先輩は俺たちを浮かす為に魔法に集中している。
岡本先輩は無料動画サイトでゲーム実況などを観て、楽しんでいる。
藤川先輩はどこにいるのかわからない(いつものこと)。
「よし」
夢呂日が何かを決意した。
「どんな女子が好みかその話でもするか」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「そうだな、暇だしたまには腹を割った話もいいかもな」
「マジで言ってんのか岳信⁈」
「静かにしろ、学」
「陰影まで⁈」
「じゃ、まずは言い出しっぺの俺からいくか」
「どうせ、小学生だろ?」
「なんでだよ⁈陰影には前に言わなかったか?」
「じゃあ誰なんだよ?」
「サンキュー、岳信。俺はな、貧乳の短髪が好みだな」
「「「小学生じゃないか」」」
「てか、外見かよ。性格じゃないのか」
「そうは言ってもな学。今時、内面でいい女子なんていないんだよ」
「そうなのか?夢呂日」
「そういうもんだよ。だったら、お前は?」
「んー。…優しくて、一緒にいると楽しい人かな」
「お前…。そんな奴が本当にいると思っているのか?」
「酷い!そりゃあ、いるだろ!」
「学よ…。最近の女子なんてロクな奴はいないぞ」
「そうなのか…」
「「「………」」」
「ま、まぁ、気を取り直して、次は俺がいくぜ!」
「…岳信はどんなのが好きなんだ?」
「まぁまぁ、学、元気出せ。俺はな、年上のお姉さんかな」
「へーそうなんだ。なんか、岳信だけ予想ができなかったからな」
「そうなのか?学。俺はな、年上のお姉さんを守れるようなそんな男になりたいな!」
「年上ってどの辺?」
「夢呂日何言ってんの?お姉さんっつったら『J・K』に決まってるだろ」
「びっくりした。岳信は熟女好きなのかと思った」
「あっ、夢呂日さんが!落下してます!」
「安田先生、あいつはもうほっといていいですよ」
「で、でも学さん」
「大丈夫ですよ、あいつはそんな簡単に死にませんよ」
「そんなことより、最後の陰影を聞こうぜ」
「俺は言わんぞ」
「「………」」
「えっと……あの…」
「俺は言わんぞ」
「「………」」
「えーっと、陰影の心を除いたところ…」
「あっ、また夢呂日さんが!落下してます」
「先生、もうアイツいらないんじゃないですか?」
「岳信、今度夢呂日にこっそり聞こう(小声)」
「そうだな、学(小声)」
「あ!皆さん。見えてきましたよ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
安田先生が指差したその先には、いかにも悪役と主張するような城があった。
狭い灰の平野に立派に建ち、周りは山々に囲まれて近づくのもめんどくさそうだ。
不意に陰影が言った。
「あれで、周りにマグマがあったら完璧なのになぁ」
「それダメだろ!何かのゲームの最後のコースじゃん」
夢呂日がツッコミを入れる。
すると安田先生は張先輩に声をかけ、そこに着地する。
「どうしたんですか、先生。まだ遠いですよ?」
岳信が不思議そうに聞く。
「これ以上、飛んで近づいたらバレてしまうじゃないですか。残りは…」
安田先生は岡本先輩に合図をとり、岡本先輩は何かを作りだす。
「おお!なんだ?」
岳信のテンションが上がる中、できあがったのは…。
…田舎によくあるトラックだった。
「これで行きます!」
(((マジかよ)))
多分全員がそう思ったに違いない。
「てか、誰が運転するんです?僕ら未成年ですよ?」
矢田先輩が聞く。
誰でも運転できる車なのか?
これは。
「私です」
「「「「「「「「「え」」」」」」」」」
そこにいた全員がそう思った。
そして、安田先生はポケットからとてつもない柄の財布を取り出して、一枚のカードを見せてきた。
「免許を取ったんです!これでいけますね!」
先生は俺たちに自分の運転する車に乗ってもらうのが嬉しいみたいだ。
呑気に初心者マークのシールを貼りにいく。
てか、ここではいらないと思う。
「さて、出発する前に休憩しましょうか」
先生は背中に背負ったリュックを下ろすと、中からたくさんの食料を出してきた。
お菓子でもも持ってきているのかな。
そう思っていた。
…中に入っていたのは肉や野菜だった。
………。
…中に入っていたのは肉や野菜だった。
大切だから二回言った。
みんなはこの意味がわかるかな?
「さあ皆さん!バーベキューをしましょう!」
「「「YEAAAAAAA!!!」」」
この時、俺たちは闇の世界にいることをすっかり忘れていた。
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「もうお腹いっぱい…」
俺たちはトラックに揺られながら植田の城に向かっていた。
普通のお肉や野菜を食べたら、先生は魔法の世界で食べられているお肉を振舞ってくれた。
はっきり言ってめちゃくちゃ美味かった。
あの肉の柔らかさといい、あの旨みは…。
今度、先生の世界についていろいろ教えてもらおう。
「オロロロロロロロ」
おっと、夢呂日が吐いた。
ちゃんと道に吐いているな。
直接吐いたらこいつごとトラックから突き落とすところだった。
車がドン、ドンと揺れる。
周りではみんなが幸せそうに眠っていた。
そして、俺もすぐに眠ってしまった。
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「さて、皆さん。準備はいいですか?」
俺たち、科学部員一同は『ポッシブルスーツ』を見にまとい、城がはっきり見える崖に立っていた。
手には自分たちの魔道具を。
恐れることはない。
遂にこの時がきたのだ。
さぁ、いこう!
「それでは、皆さん。作戦開始です!」
魔法使い達の戦いが始まった。




