表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
科学部の大魔法使いⅠ-強い絆でー  作者: ゴマ団子/Masari
第6章 科学部の魔法使い達
65/77

第五十四話 過去編 冬の中の道

しばらく、別作品『僕たちはまだ知らない』を休載します。

光が時間を支配する。

目の前に広がるのはただの光。

体が動かず、風の動きも感じず、呼吸もせず、何も聞こえない。

時間が止まっていた。

俺が光を見つめていると、コツン、コツンと足音が近づいてくる。


『やぁ』


どうやら俺の聴覚と視覚は動いているらしい。

目の前で挨拶してきたのは深く帽子を被った一人の少年だった。


『ほんと俺はすごいな。僕と出会えるなんて。岳信も陰影も夢呂日もこんなことはなかったのに』


少年はおかしなことを言う。

この場合、『僕』か『俺』が『君』ではないと日本語は成り立たない。

というか、なぜ三人を知っている?


『いや、この場合はあっている。それに三人とはずっと会っているからな』


そうなのか?

…。


『本来僕は、俺に会うことはないんだよ

。俺が凄すぎるんだ』


ますます意味がわからない。

俺が凄すぎる?

この少年が凄いのか?


『まぁ、俺は気にしなくていい。僕は岳信や陰影、夢呂日、そして世界中の人と会おうと思えば会えるけど。俺とだけは会えない』


…俺とだけは会えない?


『でもまぁ、出会えたんだ。いつかまた、出会えるかもしれない』


そして少年は帽子を脱ぐ。

そこにいた少年を俺は知っていた。

生まれた時からずっと。

でも、今まで会ったことはない。


『桜花を救え。俺』


「わかったよ。僕」


不意に俺の口が動く。

ただ聞いていただけだったのに、なぜか口が動いた。

僕は脱いだ帽子をこっちに投げて言ってきた。


『想像しろ』


瞬きをした瞬間、目の前に桜花がいる。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


私は焦った。

目の前で、クソ兄貴が『覚醒』した。

このままでは、勝つ確率が低くなる。


「…な、なぁ、クソ兄貴。覚醒したんだろ?ちょっと、新しい魔法を見せてくれよ」


クソ兄貴はしばらく自分の血が流れ痛いはずの右手を見つめると、その手を空に掲げ、ビームを放つ。


「⁈」


クソ兄貴がビームを放った瞬間。

ものすごい爆風が巻き起こる。

前より数倍に威力を増したビーム。

簡単に地球を粉々にしそうな勢いだった。

私はその場に立っていられず、その場に力なく座りこむ。

すると次は私に右手を向ける。


「ひっ」


し、死ぬ。

兄はビームを放った。

私は目を閉じ、頭を庇った。

これは人間の本能みたいなものなのだろう。

しかし、私は死ななかった。

クソ兄貴の放つビームは私にスレスレのところで散っていった。


「っ、この!!」


私は舐められたと思い、ビーム弾をクソ兄貴に投げる。

兄は無事な左手を私のビーム弾に向け、何かを放つ。

それはビームではなく、炎だった。


「なるほど。想像力さえあれば、こんなこともできたのか。『炎のビーム』って、想像するだけでこんなことができるとは」


クソ兄貴は感心したように言う。

すると今度は左手を右手に向け緑色のビームを放つ。

兄の右手はみるみる回復した。

皮膚は再生し、不恰好な腕は元の形に戻った。

くそっ、このままじゃ!

私はとりあえず投げ続けた。

しかし、クソ兄貴はすべてを避ける。

すると、私の意識が薄れていき、砂まみれの公園に倒れこんだ。

まだ、意識は残っている。

兄に負けるなんてあってはならない。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ほんと、魔法ってなんでもありなんだな。

『回復ビーム』とか『眠りビーム』とかもうチートだろ。


「ま、まだ…。負けて…ない」


薄れた意識でも闘おうとする桜花。


「ごめんな、桜花」


桜花の意識がなくなる前に言っておくことがあった。

俺はこれを言っておかなければならない。


「ずっと、辛い思いをさせて本当にごめん」


駄目な兄のせいで、両親は厳しくなり、暴力が家の中で絶えなかった。

そんな最悪の家庭環境に、俺は謝るしかなかった。

今さら、家庭の環境をすぐに変えることはできないことはわかっている。

それでも、少しは改善していこうとおもう。

雲が移動して、また雪が降ってきた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


その後、う◯こを終えた岳信達が来た。

周りを見てあたふたしているだけだった。

そして、ビームを見た安田先生が来てくれた。

安田先生には本当に助けられた。

家を直してもらい、目撃者の記憶を消してもらった。

そして、桜花の記憶と魔法を取り除いてもらった。

なんか、妹を守りたいっていう矢田先輩の気持ちがわかった気がする。

安田先生が帰った後、俺は妹を家のベッドで寝かせた。

あの謝罪もきっと桜花は覚えていない。

目が覚めても桜花は不満を持ったまま、これからを生きていくのだろう。

俺は眠る桜花を見て。


「ごめん」


そうとしか言えなかった。

それから、俺たちは自転車に乗って出発した。

進むのはどこまでも続く道。

雪が降る街並みは新鮮で綺麗だった。

なぁ、俺たちはどこについたと思う?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ