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科学部の大魔法使いⅠ-強い絆でー  作者: ゴマ団子/Masari
第6章 科学部の魔法使い達
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第五十一話 決戦前夜

ベルトから次々と機械のようなものが展開され、俺たちの体を包み込んでいく。


「うぉおお!すげぇ!」


「すごく格好いいな!」


岳信と夢呂日のテンションが物凄く高くなった。

俺たちは色とりどりのスーツをまとい、背中には綺麗なマントまでついていた。


「ふっふっふっ、僕の最高傑作、『ポッシブルスーツ』だよ。眼に映る画面を見てごらん」


いつも見える理科室の光景を前にさまざまなものが浮かび上がっていた。


「スーツ自体は相手の物理攻撃をガードしたり、魔法の効果を弱めたりするんだ」


「本当だ!お前らの心の声が耳を澄まさなきゃ聞こえねえ!」


一応聞こえるのかよ。

夢呂日に聞かれるの厄介なのに。


「さらに!仲間との通信可能。位置の把握。攻撃の予測もできるぞ!」


聞くとどんどんわかってきた。

俺の目の前にあるマップがどんどん広がっているのはなんだろうと思っていたけど位置情報を読み取っているのか。

科学部員の位置も少しのズレもない。

周りのみんなもポッシブルスーツに圧倒されていた。

…これが科学ではなく魔法の力か。

なんか…すごいな…。

すると、急に目の前の画面から『DANGER』の文字が現れ、俺の心臓の部分から黄色い矢印が出てくる。

勝手に体が動いて、その矢印から素早く離れると、後ろからナイフが飛んできた。

陰影の魔道具『大根』である。


「なるほど。流石だなぁ」


「いやちょっと待てよ⁈今、多分俺死にかけたと思うんだけど⁈」


こいつ、頭おかしいだろ⁈


「大丈夫だ。今この時を、お前は生きている」


「名言っぽく言っても意味ねえよ⁈まったく大丈夫じゃないよ⁈」


「せんせー。なんか僕だけ手がないんですけどー」


俺が陰影をどうしてやろうかと考えていると岳信がそう言った。


「お前は『パワーアーム』があっただろ?だから、それをつけられるように無くしといたんだ」


「流石っす!小橋先生!」


夢呂日は顕微鏡の入った窓ガラスで自分のポーズを見て喜んでいた。

そんな中、安田先生が言う。


「皆さん!一緒に頑張りましょう!」


「「「おおー!」」」


その日、科学部がうるさいと周りのクラブからの苦情がきた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


その日の夜。

風呂に入った俺は明日に備えて、さっさと寝ようと思っていた。

明日は決戦で明後日は先輩の卒業式か。

そう思っていたら俺の携帯電話が鳴った。

俺に電話をかけてきたのは岳信だった。


「もしもし」


『やっほー!学!元気か?明日は楽しみだなぁ!』


「だからなんでそんな遠足行くみたいな感覚なんだよ」


『そりゃあ、お前は冬休みの事があったからいいから飽きてるかもしれんが俺の最近の実戦って時雨戦以来なんだぞ?』


「戦う事自体がおかしいんだよお前は。普通、科学部に入って、異能力系学園バトルなんてないんだからな?」


『そう思ったらやっぱ俺、科学部入ってよかったな。最初テニス部入ろうと思ってたのがアホらしい。お前もそうだろ?』


ここまでの約一年間。

長いようで短かった。

そして、たくさんの出会いがあった。

岳信と入学して、陰影と夢呂日に出会い、先輩と安田先生に会って、小橋先生と会って、数々の使者、校長、新しい友達。

たくさんの人と出会えた。

こんな普通は存在しないような科学部のことを俺はどう思っているだろう。


「そうだな。岳信」


そんな事を悩む時間なんて俺にはいらない。


「俺はこの科学部に入れて‘‘最高’’だよ」


『そうか』


それから少し話した後、俺は岳信と別れを告げ、電話をきった。

今夜はいつもより星と月がきれいで、輝いていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「さて、皆さん。準備は万端ですか?」


みんなが一斉に頷く。

俺以外。

全員が完全装備で、やる気に満ち溢れている。

俺以外な。

完璧だ。

俺以外だけな。

岳信がこんな事しなければな。


「なんでカブトムシがいきてるんだよぉぉぉ!!!」


そう、現在。

夏休みに岳信が捕まえたカブトムシであるレッドが俺の首元にしっかりと引っ付いていた。

岳信の新世界でずっと成長させてきたらしい。

さらに俺は大の虫嫌いなので触るのも無理。


「外して!外して!外して下さぁぁぁい!」


こうして、泣きながら懇願するしかなかった。


「ったく、しゃあねえな」


と言いながらもすぐには外してくれない岳信。

やっぱり俺は本当にこの科学部に入ってよかったのだろうか。


「それでは!しゅっぱーつ!」


と安田先生が言って、みんな立ち上がる。

岳信にレッドを外してもらい、俺もやっと自由に動ける。

俺たちは安田先生についていき、普段は入れてくれない準備室へと入っていった。

中は普通の準備室。

たくさんの実験で使うような備品が備えられていた。

…。


「先生、どうやって植田の所に行くんですか?」


そういや、聞いていなかったな。


「ここですよ」


そこにあったのはかなりの年代物のような望遠鏡。

ドユコト?


「じゃあ皆さん、ついてきて下さいね」


と言って、安田先生が望遠鏡を覗き込んだ。


「「「えっ⁈」」」


するとみるみると安田先生の体が望遠鏡の中に吸い込まれてしまった。

…。

魔法。

ほんと、なんでもありだな。

まぁ、それが魔法か。

みんなが驚いていたので、一番最初に俺が行ってやった。

覗き込んでも何も見えない。

目を離した途端、そこに広がっていたのは。

言うまでもなく闇に覆われた大地だった。

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