第五十話 小橋の魔法実験 パート2
ある冬の日の早朝。
もう、三月と言っても太陽も少し前に昇ったばかりで手がかじかみ、白い息が出る。
そんな中、科学部の後輩一同と安田先生は近くの駅に集合していた。
「ったく、寒いな。先輩達はまだか?」
と言う夢呂日に対し。
「うるせーな、そんなに寒くないだろ?」
と言う一番問題のある岳信だった。
夢呂日は家にいる時は大体『こたつむり』になっているらしく、寒いのが苦手らしいから物凄い厚着をしている。
あ、岡本先輩も長袖一枚か。
言っちゃ悪いけど、デブは体温も高いのだろう。
普通な格好をしているのは俺と陰影と張先輩と安田先生だけだ。
ちなみに藤川先輩は分からん。
てか、本当にいるの?
しかし、先輩たち遅いな。
「てか、もう先輩達行ってしまったんじゃないのか?」
「知らねえよ」
陰影に聞いたのが間違いだったな。
てか、早く帰りたい。
なぜなら…。
「なんだあいつ、ス◯イダーマンかよ」「てかどこの部活?」「いい加減に眉毛っていうあだ名を訂正しないとな」
周りには沢山の学校の先生、親、塾の先生が岳信を笑っているからだ。
こんな変な奴といると、恥ずかしくてたまらない。
「明日、先輩を元気づける服装で来るって言ってたけどそれかよ!」ってさっき言ってしまった。
そう、今俺の隣にいるのはス◯イダースーツを着た、岳信だった。
ほんと、何してんだよ…。
「「何してるの?」」
先輩二人が俺たちを見て絶句した。
「やっと来ましたね!どうも、ス◯イダーマンです!」
と言って、隣にいる自称ス◯イダーマンは色々なポーズをとっていく。
先輩二人は大爆笑したから、まぁ岳信のことは許してやるとしよう。
「これ、カイロです。使って下さい」
と、張先輩が言い、張先輩と岡本先輩が渡した。
「二人とも、受験、頑張って下さい。終わったらまた、理科室へ来て下さいね」
すると矢田先輩は。
「わかりました。では、行ってきます」
「行ってきますー」
沙羅先輩も便乗すると駅へと入って行った。
丁度二年後、俺たちも同じ事しなきゃならないのか。
…あ、俺、推薦取ってた!
有難や…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
丁度その日、校長に会った。
「やぁ!山出谷君!最近美味しいラーメン屋は見つけたかい?」
…最近、同じラーメンしか食べてないからな…。
でも、先生の機嫌はとっておかなければならない!
「先生はどうでしたか?今度先生のオススメのラーメン屋に行ってみたいです!」
「そうかい!なら、卒業式の後とかどうだい?車を出してあげるよ!」
やっぱり、ラーメンのことになると先生のテンションが上がるな。
「ありがとうございます!ラーメンを布教する為に、部活仲間も誘っていいですか?」
「是非誘いたまえ!なんならバスを手配しよう!ラーメン屋にも団体予約を入れてみようか」
すげえ行動派だなぁ。
流石校長。
「さて、問おうか。君の好きな食べ物は⁈」
「ラーメンですね‼︎」
「では、頑張りたまえ。明日の決戦も期待しているよ!」
「はい!」
そして、ご機嫌な校長は校長室へ帰っていった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
理科室に着くと、先輩たち二人は既に帰ってきていた。
テストは結構できたらしい。
「さてさて、皆さん準備はいいですか?明日はいよいよ決戦ですよ!」
「「「イエェェェェェ!!!」」」
なんでそんなテンション高めなの?
明日、人類の命運をかけた勝負じゃないの?
「じゃあ明日の作戦を、説明します」
安田先生は全員にプリントを配布して、説明した。
これは、かなりの時間がかかりそうである。
何より、自分たちの命を第一に考えられている。
…これなら勝てる!
絶対に負けない!
全員が無事で上田を倒せる。
「とまあ、こんな感じです。しっかりと頭に入れておいて下さい」
理科室の中は自信と勇気に満ち溢れていた。
「楽しみだなぁ!学!」
なんで、遠足に行くみたいに楽しそうなんだよ岳信。
でも、楽しそうだ。
俺の顔からも笑みが崩れない。
「おい、お前ら!」
準備室から小橋先生が出てくる。
「明日は頑張るぞ!ほら、新作だ」
そう言って、先生は全員にベルトを渡してきた。
「ついに、俺たち.仮面◯イダーになるのか⁈」
なぜか、嬉しそうに夢呂日が言う。
「よく見ろ、それらしいものはついてないだろ」
陰影が言った通り、普通のベルトだった。
「わかってないな」
チッチッチッ、っと、悟ったように小橋先生が言った。
ぶっ殺してやろうか。
「ベルトの金具の横にボタンがあるだろう。そこ、おしてみ♪」
…は、腹立つ!
とりあえず全員、そのボタンを押した。
すると、ベルトが光り出し、体が、何かに包み込まれた…!




