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科学部の大魔法使いⅠ-強い絆でー  作者: ゴマ団子/Masari
第6章 科学部の魔法使い達
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第四十九話 訓練

「冬休み、お前ら何してた?」


三学期。

一学期と二学期に比べ、比較的に短く、体育祭などのイベントも無く、あっという間に終わってしまう時期である。

どうといった話題もないのでどのように過ごしていたのか理科室に向かいながら聞いてみた。


「俺は筋トレとか色々してたけど」


岳信は筋トレか。

まぁ、強くなる事が趣味の岳信らしいな。


「俺は十二月中は田舎の老婆ちゃんの家に行ってた」


陰影は意外に普通だな。


「ふっ、究極生命体、こたつむりになっていた…」


夢呂日はどうやら引きこもっていたらしい。

しかし、冬休みもあっという間だったな。

科学部で初詣も行ったはずなのに、なんか一話で終わらされたような気分だ。

そして、理科室についた俺たちは綺麗になった、理科室の扉を開ける。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ここは科学部。

俺の所属する科学部は物理、生物、化学、地学などの科学的理解を深め、時にはぶつかり合い、時には何かを成し遂げたりする、そんな科学部では…ない。


「おっしゃ!あと3周!」


「「「おーっす!」」」


俺の部活でやった科学的な事はカルメ焼きと虫捕りとペットボトルロケットぐらいだ。


「おいおい、それでも本当に魔法使いか!」


「「「おーっす!」」」


俺の科学部は魔法を使う。

魔法というと、属性適性だの魔力限界だの合体魔法だのいろいろな事がファンタジー世界で考えられてきたが、現実はそうではなかった。

まぁ、聞いたところによると、先生の世界はそういうのがあるらしい。


「おらおら、スピード落ちてきてるぞ!」


「「「おーっす!」」」


属性とかは関係ないのだろうが、俺たちには『この魔法』と言ったものしか使えない。

例えば…。


「こらこら谷川!目の保養に陸上部の女子を透視しない!」


「う、おーっす…」


「声が小さい!」


「おーっす!」


夢呂日は『透視』という言葉の魔法だ。

また覚醒により、『心を視る』という事もできる。

とりあえず、今俺たちは。


「よっしゃあ!あと2周!」


「「「おーっす!」」」


科学部なのに、校庭で走り込みをしているのだった。

ただでさえ、運動するのが嫌だから科学部に入部したのにこんな事になるなんて…。


「おっしゃ!あと一周!気合い入れろ!」


「「「おーっす!」」」


体力づくりの得意な岳信はもうすでにゴールしている。

そして前から順に張先輩、陰影、俺、夢呂日。

そして二周遅れて岡本先輩が走っている。

藤川先輩はどこにいるか不明だ。

最後に猛ダッシュ。

限界の足を奮い立たせ、全力を尽くす。

ゴールのラインを超えて、俺は運動場に倒れこむ。

まだ、空気は冷たいはずなのに、体から汗が止まらない。


「おつかれ、ほら、水だ」


先に走り終えていた岳信が氷の入った水を俺達に渡してくれた。

冷たい水が乾いた喉を潤わせていく。

ん、これは。


「お前、早速使いこなしてるな」


「だろ?」


岳信は手に巻いた、変な腕時計を見せてくる。

まぁ、自分にもあるのだが。

冬休みの間に小橋先生は二種類の魔道具を完成させた。

一つがこの『魔法ウォッチS』である。

前回の魔法ウォッチより、性能が上がって、水だと、水鉄砲ぐらいしか出なかったのがホース程度に変わったのだ。

魔法ウォッチは魔素水を飲んだ人間にしか意味がない。

安田先生や小橋先生だと、使わなくてももっとすごいのを使えるからだ。

けれど、俺達にしかできないこともある。

俺がビームを永遠に放ち続けられるように。

岳信がワープで世界旅行や新世界に行きたい放題のように。

陰影が影を使ったりなったりして暗殺し放題なように。

夢呂日が女子の裸をのぞいたり、何を考えているのか知り尽くせるように。

俺達の魔法が使い放題なのを活かして、魔法を改変するのが魔法ウォッチである。

というか、二年生になった時ぐらいに俺達の魔法について研究とかしなきゃいけないな。

おっと、長くなってしまったな。

俺たちは未だ走り続ける岡本先輩を眺めながら水分補給をしていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


次は、実戦の練習だった。

小橋先生は最新兵器を作りに行くと言って準備室に帰っていったので、次の監督は安田先生だ。

もう一つの魔道具。

それは個人個人で違った。

一学期のはじめ、俺達は自分だけの魔道具を作った。

今までの使者戦でも愛用してきた。

それを小橋先生が一人一人に合ったものを用意してくれた。

…一年生だけ。


「先生!なんで俺のは!」


「俺も欲しいっすよ!」


「…」


藤川先輩がどこにいるのかわからない。

とりあえず、まぁ、そういうことなのだ。

三年生は受験なので勉強しなければならない。

だから、決戦ではフォローに回ってもらう。

そして二年生も。

二学期の最後になにかとサボっていたので二年生もフォローだ。


「…」


とはいえ、俺は新しい魔道具に手をつけず魔法剣『絆』を使っていた。


「…さてと」


絆を起動する。

威力が上がっているな。

そして…。

絆の刀身が、炎、水、雷、氷、などいろんな姿に変わった。

冬休み。

俺にはある出来事があった。

それについてはいつか話そうと思う。

そして、覚醒に成功した。

ビームの威力が上がるだけだったのだが、俺はある事に気付いた。

先生達の魔法はなんでもできる。

想像するだけで。

『時を止める』と想像するだけで魔力が尽きるまで使うことができるように。

しかし、俺たちは魔力が無尽蔵である代わりにその魔法の言葉に縛られている。

例えば、俺ならば、『ビームを放つ』。

だから、俺にはビームを放つ事しかできないと思っていた。

しかし、その言葉に‘付け足す’のはどうなのだろうか。

『小さなビームを放つ』『炎のビームを放つ』『ビームを放つかもしれない』。

全てに反応があった。

これで、俺の戦力は圧倒的に上がった。

しかし…。


「ふんっ!ふんっ!」


俺は剣をふるう。

やはり、俺に足りないのは剣術か…。

んー。

吉川に今度、教えてもらうか?

すると新しい魔道具の練習をしていた夢呂日がやって来た。


「学。お前そんな剣使いでいいと思ってんのか?ちょっと貸してみろ」


そう言って俺から絆をとる。

絆は俺が直接ビームを流して発動しているので、もちろんその刀身は消える。


「なんだ、消えたじゃないか。仕方ないな」


そう言って、俺に絆を返し落ちていた木の棒を拾う。


「剣ってのはな、こう使うんだよ」


そう言って、次々と技を披露していく。

それは素人の俺でもとても力強くて綺麗に見えた。

…。


「なんで、そんなに剣の扱いが上手いんだ?」


やっぱり、この前探した剣士は夢呂日だったのか?


「んあ?アニメでよく見るからそれを真似ただけだけど」


…んー。

やっぱこいつのことはよくわからないな。


「おい、陰影!手合わせしようぜ!」


「いいけど、死ぬなよ?」


そうやって三学期の科学部の活動は訓練であって正直きつかった。

まぁ、この時間は俺たちをさらに成長させてくれただろう。

こんな日常を過ごしている間に、学年末テストが終わり、三年生は入試を迎えようとしていた。

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