第三十六話 高く
そして、お弁当の時間がやってきた。
教室の中でクラスの友達と食べなければならないので岳信と二人でお弁当を食べていた。
「集合何時だっけ?」
白飯をかきこみながら聞いてきた。
「確か、一時半だから、二十分くらいには理科室に行って、準備しなきゃいけないな」
「ちゃんと飛ぶかなペットボトルロケット」
「どこのクラブより頑張ってるはずだから、飛んで貰わないと困る」
俺はそう言って、お弁当の中の唐揚げを食べる。
「まぁ二年生はともかく、俺ら頑張ったんだから、いけるだろ。それに、不備はなかっだろ?」
「ああ」
そう言って、最後の卵焼きを口に入れた。
隣で岳信が新しい小さなお弁当箱を開けた。
「さくらんぼ一個やるよ」
「おっ、サンキュー」
俺は花◯院の有名なやつをしたくなったが、岳信が一気に食べたので、俺もすぐ食べた。
「おーい、お前ら早くしろ」
教室の外で、夢呂日が呼んできた。
隣には陰影もいる。
俺と岳信は教室を出た。
「早く準備しようぜ」
岳信もやる気満々だ。
廊下は走ってはいけないが、こんな青春の一ページみたいな気分ならいいだろう。
いや、本当は駄目だけど。
俺たちは全速力で理科室へ向かって行った。
「そういや、先輩らが何か企んでるらしいぞ」
陰影がボソリと言った。
「ははは、また余計な事企んでるのか?あの先輩ら」
岳信が笑う。
懲りないなあの人らは。
そうこうしているうちに理科室に着いた。
「じゃあヤバイ事になってたら、力づくで先輩をボコそうか」
と、怖いことを楽しそうに言う岳信。
俺は理科室の扉を開けた。
そして…
「なんですかその姿」
この言葉を誰が言ったのか、俺には分からなかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「陸上部です。私達は…」
おっと、陸上部が始まったか。
科学部全員は、入場門の前で注目を受けながら最終チェックをしようとしていた。
なぜなら…
「なんで白衣なんか着させるんですか⁈」
そう、先輩達の企みは岡本先輩の魔法で白衣を着て、行進をすることだった。
「なんでペットボトルロケットに夢呂日の顔の絵が描かれてるの?」
俺が岳信に聞いた。
「いや、だって面白そうじゃん」
と岳信。
「運動部にユニフォームがあるのに、科学部が着てはいけないルールなんてないはずだ」
と、真面目な顔で言ってくる岡本先輩。
その凄く恥ずかしい。
俺たちの隣の美術部にいる時雨が笑うの堪えてるじゃん。
「では、最終チェックをするぞ」
矢田先輩が言い出した。
「三年と二年と上外はそのまま直進。清宮、山出谷、谷川はグラウンドの真ん中に入り、俺がこのメモの内容をマイクに言う。谷川は自転車用ポンプでペットボトルに空気を入れる。清宮はそれを支える。そして山出谷は掛け声だ。」
一番楽で、一番目立つ仕事につけた。
ラッキーだな。
すると、隣の美術部が出ていった。
「みんな。準備はいいな?」
俺たちは全員うなづく。
「さぁ、行こう!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「科学部が白衣だ!すげぇ!」
他の部の人達が驚いてこっちを見ている。
白衣…結構いいな。
「お兄ちゃん!」
あれは、矢田先輩の妹さんだ。
俺もあんな妹がいいな。
「…これで、美術部の発表を終わります。礼!」
美術部が終わった。
次は科学部だ。
よし、いくぞ。
矢田先輩がマイクをとった。
「僕たちは科学部です。」
俺と岳信で、土台をセットする。
「科学部は基本的に自由な活動をしています」
自由過ぎますよ。
土台とペットボトルロケットをつなげる。
「実験で食べ物を作ったり、フィールドワークで虫を捕まえたりします」
食べ物は嬉しいけど虫は嫌いだ。
夢呂日が空気を入れ出す。
「そこで、自由な科学部が夢と希望のペットボトルロケットを発射します」
ハードル上げる⁈
空気入れ中。
「それでは発射します!」
間に合うか⁈
「できた!」
「学!掛け声!」
よし、いくぞ!
「発射‼︎」
プシュゥゥウウウ!
ペットボトルロケットが勢いよく、飛んだ。
高く。
高く。
更に高く。
夢呂日の顔が描かれたペットボトルロケットは高く飛んだ。
周りからたくさんの歓声と拍手が送られた。
「成功…だな」
「ああ、そうだな」
俺の言葉に岳信がかえしてくれた。
なんとか成功した。
俺達の夢と希望を乗せたペットボトルロケットは高く飛んだのだ。
本当によかった。
「まて」
急に夢呂日が焦り出した。
「どうしたんだ?」
ロケットに自分の顔が描かれている事に今更気づいたのか?
ペットボトルロケットが落下し始めた。
「このままじゃ、美術部にぶちあたるぞ⁈」
まずい!
駄目だ、間に合わない!




