第三十五話 午前中
「…と、このようにラーメンには違った味があり、それぞれ人間の個性と同じような物なので、この体育大会で全力を出してもらいたいと思います。皆さん、頑張って下さい」
校長先生のよくわからない挨拶が終わって、準備体操が終わった。
それぞれ、自身のクラスの席に戻っていった。
「よっしゃあ!お前ら!気合い入れていくぜ!」
「「「おー!」」」
掛け声をかけたのは岳信。
あいつはあの明るい性格のせいか、クラスの人気者になっている。
あいつがいれば、このクラスは団結力は固まるだろう。
まぁ、他の科学部員の鉄則に従っておくのが吉だろう。
『できる限り何もしない』
だ。
クラスのメンバーを引っ張っていくのも俺には向いてないし、逆に足を引っ張れば残りの生活が地獄になってしまう。
そうしているうちに、俺の出番のパン食いリレーだ。
身長が少し高いからこれが一番いいだろう。
入場門へは、本部を通らなければならない。
そして本部で見たのは…
「あなた、可愛いわね〜♡」
「うちの孫、可愛いだろ〜!」
「これあげるわ。美味しいのよ、コ・レ♡」
ご老人達と話している暗い顔をした陰影と夢呂日を見た。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
二位だった。
まぁ、マシだろ。
これで怒られなくて済みそうだ。
「ん?」
俺が観客席に戻ろうとしているとどこか見覚えのある女の子がいた。
俺の隣で三年生のリレーをやっているがそれをしっかりと見ていた。
あのブラコンは…矢田先輩の妹さんだ。
前にラーメン屋で会ったことがある。
すると妹さんがこちらに気づいて、近づいて来た。
「あの、お久しぶりです」
「ああ、久しぶり。お兄さんを見にきたのかい?」
「ええ」
いいなー、お淑やかな妹。
俺もこんな妹がよかったな…。
「山出谷先輩でしたっけ?」
「はい、そうですけど」
そして、こう言われた。
「科学部の発表、期待してますよ」




