第二十七.五話 ビンタ 後編
「おい、陰影。何言ってんの?」
あ、キレたよ。これ絶対キレたよ⁉︎
「お前は俺に騙されたんだよ。それがまさか植田にまで会わせてくれるとはな」
植田だと⁉︎なんて事したんだ。
「たっぷり利用させて貰った。感謝してやってもいいぞ」
陰影が勝ち誇ったような感じでドヤ顔していた。
対して、時雨は怒りの表情である。
「まぁ、ええわよ。これで終わりや‼︎」
時雨が命令を下す。
上にいつの間にか魔女がいて、魔法を放ってきた。
そして、それは陰影に直撃した…はずだった。
そこに陰影は無傷で立っていた。
「ははは、ははははは‼︎」
こんなに笑った陰影を見るのは初めてかもしれない。
「相手が手も足も出ないって超面白いね。じゃあそろそろ終わりにしよっか」
そう言って、陰影は床に沈んだ。
その部分は濃い影になっていた。
「どうやら、彼の覚醒した能力は自分自身が影になる事みたいですね」
気づいたら、横に夢呂日をお姫様抱っこをした安田先生がいた。
なんだこの絵面。
なんか複雑な気持ちだ。
「すいません。生き返った夢呂日さんです。重いので代わってもらえませんか?」
と言って、夢呂日を渡してきたよ。
ええー。
仕方なしに受け取った。
重い重い重い‼︎
俺はその場に夢呂日を落とした。
「痛っ!」
あ、目が覚めたから良しとしよう。
「あの能力なら、壁や天井も自由自在に移動できるでしょうね」
へーいいなー。
そんな雑談をしているうちに時雨を追い詰めた。
早いよ。
「そんな、私の計画が」
やはり、手も足も出なかったな。
てか、そんなに出番なかったな俺。
「じゃあね。馬鹿さん」
こうして、三度目の戦いが幕を閉じた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「つまり、お前は自分以外の全員を騙してたって事でいいんだな?」
その後。時雨を倒した俺たちは話し合いをした。
「ああ。そして、植田とも対面した。この事は今度話すよ」
そうして落ち着いていた所で、
「俺の出番が全く無い。全く…」
夢呂日が一人ブツブツ言っていた。もうほっといていいだろう。
すると急に、
「おらあ!陰影!」
岳信が陰影をビンタした。
ええっ‼︎
陰影の眼鏡が後ろへ飛び、カチャンと音を立てて落ちる。
「岳信?そんな怒らなくても、ちゃんとした理由が…」
陰影の右の頰が赤くなる。
よほど強かったらしい。
すると、岳信から泣き出した。
「心配させやがってよおおおお!」
友達の為に本気で泣ける。
やっぱり、このクラブいいよなと思った。
俺の頰にも涙が流れた。
次回、湯けむり半殺し事件




