第十八話 「お前ボコすぞ」
たしか、安田先生は言っていた。
「夢呂日さんは、無事に覚醒に成功しましたが、あなた達が必ず成功するとは限りません。特に清宮さんは気をつけて下さいね。あなたは少し短気なところがありますから」
そして今、岳信が覚醒している。大好きなこの街の海が賢治によって壊されてたからだ。
まずい、岳信は暴走するかもしれない。すると岳信は、いつもとは違う、ワープホールを作りだした。
「⁉︎」
ドラゴンの賢治も驚いて、一旦距離をおこうと思ったのか離れようとしたが、ワープホールに吸い込まれてしまった。やはり、岳信は暴走している。止めなきゃ。
「おい!まてよ岳信!」
止めなきゃ、でないと暴れ回ってしまう。だが、心配する必要は無かった。
テントの方からカブトムシが飛んできた。岳信が飼っているレッドだ。レッドは岳信の肩に乗った。すると、岳信はこちらを見て、ニヤッと笑い、ワープホールに入って行った。そして、ワープが消えようとしていた。
追いかけよう。けど、間に合うか?
走った。駄目だ消えそう。しかし、ワープホールが閉じるのを止めた。
影が、影が閉じるのを止めた。
俺は振り返る。
「行ってこい」
陰影。ありがとう。
そして、俺はワープホールへと踏み込んだ。
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俺が気がついた時は。光しかなかった。
見渡す限り光。はるか地平線まで光だった。そこに、終わりはあるのか。恐らくわかるのは彼だけだろう。何もない殺風景なはずなのに。妙に感動する。その時、
「ぎゃあああああ」
賢治が上から降ってきた。そして上には巨大なカブトムシがいて、その頭上に岳信が載っていた。
「さんざん俺の街を荒らしやがって」
カブトムシが降りてきて、そして
「お前ボコすぞ」
岳信はニヤッと笑った
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そのあと、岳信によって賢治が退治された。めでたしめでたし。
ん?その闘いは?だって?それはちょっと…
あまりにも賢治が可哀想な感じになっていたので、省いたんだよ。どう?優しいだろ。
海から帰った次の日。岳信の能力について、安田先生と小橋先生に見てもらった。岳信の能力は新世界の創造だったこの世界とは違う岳信だけの世界で、おまけにその世界では岳信の思い通りになるのだった。だから、レッドが巨大になったり、あんなことやこんなことができたんだろう。
「それで清宮さん。この世界の名前は何にしますか?」
「安田先生の大好きな命名タイムだ」
すると岳信は少し考えて、こう言った。
「『寿司ざんまい』で」
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「結局、暴走してなかったな」
「なんだ、暴走したかったのか?」
「いや、別に」
もうすっかり夕暮れ海に夕日が沈み始めた。
「今度、俺の家泊まりに来い。俺のマグロを食わせてやるよ」
「そうか」
そりゃ美味そうだ。
そして、俺たちは小橋先生に一秒でかけつけてもらい、浜辺の人達の記憶を消してもらい、そのあと陰影を治療してくれた。(凄い)
そして俺達は帰った。岳信にとっては楽しかったらしい。まぁ俺も楽しかった、かも。
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海のトイレにて、
「誰か!助けて!」
夢呂日を忘れていた。
次回、合宿前編




