第十六話 第二の使者
現在、俺たちの装備は水着のみ。おまけに魔道具は持っていない。いつも持ち歩くように言われているが、さすがの今は持てないので、テントの中だ。
「頼んだ」
「任された!」
さっきかっこいい事を言ってみたものの、はっきり言って今の状態では陰影の影を操る能力でしか闘えない。俺がビームを使ったらどんな被害が出るかわからない。
「排他的経済水域」
すると、陰影の影が動き始めた。あんな意味わからない名前にしたのか⁉︎魔法の名前。とりあえず俺はテントに早く魔道具を取りに行こう。
「うわぁぁぁぁぁぁ‼︎」
叫び声が聞こえたので振り返った。すると、前川 賢治の腹部から下をバッサリ切り落としていたのだ。
「や、やったのか?」
かなりの致命傷になったと思う。だがしかし、前川 賢治からは一滴も血が流れていなかった。何も流れていなかった訳では無い。ねっとりした液体が徐々に流れてきたのだ。
「これは俺の変身能力。体をスライムに変えた」
たちまち、流れたスライム同士が繋がり、前川 賢治の体が治癒された。
「学、急いでくれ」
「すまん!」
この能力はまずい。一刻も早く魔道具を持って来なければ。俺は無我夢中で走った。
「よし!」
俺は陰影のナイフと自分のビームサーベルのもちえを掴み、浜辺へと走り続けた。しかし、そこで待っていたのは、
「ぐっ、」
傷だらけの陰影だった。
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「大丈夫か⁉︎陰影!」
周りに賢治の姿は無い。しかし油断はできない。何かに変身して、こっちを見ているかもしれない。
「俺の事はほっといて…」
こっから言う事は大体わかるぞ。『お前は逃げろ』だろう。その言葉に言う事を聞く訳が無…
「さっさと海に突っ込め」
「お前、今さらっと死んでこい発言しただろ⁉︎いや、それでもいくけれども」
そうだった。こいつは陰影だった。いつも何考えてるかわからないやつだった。すると陰影が、
「相手は水…」
と言って、気絶した。水?とりあえずそんな事はどうでもいい。俺はただ賢治に痛い目合わせてやるだけだ。にやにやが止まらない。そして俺は海の中へと入っていく。
「さっさとてでこいや‼︎賢治‼︎お前をこの俺のビームサーベル…」
そして俺は、俺がつけた名前を初めて呼ぶ。
「『絆』で、お前を斬ってやる」
ビームサーベル『絆』。それが俺の魔道具につけた名前だ。かっこいいだろ?
「いでっ、」
足に切り傷ができた。なるほど、奴は水に変身して、攻撃してきてる訳だ。
「しかしなぁ、あまいぜ。水で攻撃できない。だから必ず、攻撃する瞬間に何かに変身しているんだよ‼︎」
すると海水の中に鋭い刃物が現れた。俺はにゃっと笑って、
「一つだけ言っておくが、この『絆』で、お前は斬らないぞ。」
そして、俺は『絆』で斬りかかる。しかし、当たる訳が無い。相手には意思がある。だが、俺は当てる為に振ったのでは無い。
「ったく、邪魔だなー」
刃物から、声が聞こえた。そして、どういう原理かは知らないが、上へと飛び上がった。これぞ有名なあれだ。
「計画通り」
「あ、あれ?」
賢治は自分が動けない事を知る。そして、いつの間にか、浜辺の上にいる事も知る。
「おいおい、学。なんだよ、『マグロが大量だ!』ってラ○ンは」
さっき俺は、テントに魔道具を取りに行っただけでは無い。そこで、ケータイで言っておいたのだ。はっきり言って、俺1人であいつを倒せるとは思っていない。
「おいおい、久しぶりにキレちまったよ。怒りの矛先をぶつける奴を用意してくれていたんだろ?」
やば、そこまで怒るか?まぁ、結果オーライってやつか?
「あ、ああああぁぁぁぁぁぁ」
賢治がビビっている。ん?今気づいたんだけど、
「覚悟しやがれ」
岳信が持ってるの、あれ本物のマグロじゃね?




