第十三話 カブトムシ
今日は夏休み最初の科学部。俺、清宮 岳信は早めに理科室へ、来ているのだ。
「うぃーす、信ちゃん!暑いねー今日も」
夢呂日だ。元気な奴だな。なんだよ信ちゃんって。キャラ崩壊してるぞ。
「おはよう」
陰影だ。相変わらず暗い。
その後、ぞくぞくと先輩が入って来て、科学部が始まった。
「あれ、学は?」
学がいない。いつもなら早めに来てるはずなのに、
「彼はですね、ちょっと用事があって、遅れるとのことです」
多分あれだな、まだ塾の宿題が終わってないパターンだな。
「では、矢田さん号令を」
「起立、礼」
1、2、3
「着席」
「では夏休み最初の科学部です。何かしたいことがある人はいますか?」
その時、俺はすぐさま手を挙げた。
「清宮さん何がしたいのですか」
ここは科学部。だけど普通の科学部ではない。だけど俺はごく普通のことを言った。窓から風が吹いてくる。
「虫取りがしたいです」
夏の風はとても心地の良いものだった。
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ここは山。学校の裏にある、木がたくさん生えた山だ。山田じゃないよ山だ。
「おい、岳信」
ムヒを持った夢呂日が呼んできた。
「お前の能力で外国のすごい虫を捕りに行った方がいいんじゃないの?」
「いや、そんな事はしない。だって今俺が欲しいのは普通のカブトムシなんだ。おまけに、外国ならどんな事が起こるかわからないだろう?」
「あーなるほどなー」
本当にわかっているのか?
「おーいここにクワガタがいるぞー」
見つけるのが早い!
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くそうカブトムシが見つからない。蜂蜜とビールとバナナで集まりやすいようにしたのに。結構いそうなんだけどなー。
「みなさーん、そろそろ終わって感想書きしなくてはいけませんよー」
あーあ、こりゃ駄目だ。諦めるしかない。頭の上にでも乗ってきてくれたらいいのに。
「おりゃ」
俺の顔に大量のバナナトラップがかかってきた。目の前には何も無かったはずだ。ん?不自然な影?
「陰影か!」
俺がバナナトラップをはらっていると、
「おーい!そっち行ったぞー」
夢呂日が大声をあげて言ってきた。なんだろう。すると、
「待て待て待て待てー!」
夢呂日が物凄い勢いで、虫取り網を振っている。その先にカブトムシが「助けてー」と言わんばかりに飛んでいる。そしてそのカブトムシは俺の頭の上に乗った。
「もらったー!」
よくある展開だ。俺の頭ごと網が被さる奴だろ。だけど俺はそんな展開になるわけにはいかねぇ!
「どりゃ!」
「うぐっ!」
夢呂日のお腹にパンチを一発。マジックハンドだったら多分死んでいただろう。まぁとりあえず。
「カブトムシゲット‼︎」
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理科室へ戻ると学がいた。どうやらどこに行っていたのかがわからず、理科室で待っていたのだろう。
「虫取りね…」
「どうした学。かっこいいだろ俺のカブトムシ」
「いや、俺さー虫嫌いなんだよ」
ニヤリ。いいことを思いついてしまった。
「おい学。あれって植田?」
「何⁉︎」
学後ろを向いて構える。そして、
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
背中にカブトムシを入れたのだ。
「おいおい、潰すんじゃねえぞ。さらに気持ち悪い事になるからな」
「助けて助けて助けて!」
学が泣く泣く。
こうして、この日、この時、この理科室で大きな笑い声と、泣き声が響いたのであった。
次回、命名




