第十一話 メインヒロインは誰だ
「ったくお前は言う事が駄目駄目だなー」
期末テストが近づいてきた穏やかな放課後の科学部。教室にいた夢呂日と話していた。
「だってさー、せっかくの彼女だぜ⁉︎深く欲を持たないでどうするんだよ」
前回、夢呂日がやらかしてしまい、3回戦目になったりして、吉川はぷんぷんだ。
「お前はなー、もうちょい相手の事を考えて…ってあぶねぇ‼︎」
俺が説教的な事をしていると筆箱からハサミを取って俺を刺そうとしてきた。
「ちょ!なんだよ急に‼︎」
「何で俺はお前にそんなこと言われなきゃいけないんだよ」
夢呂日が連続攻撃を仕掛けてきた。全てをサッとかわす。伊達に吉川と闘ってないんだよ。
「ガララッ」
理科室の扉が開く丁度良いタイミングだった。いや、そうじゃなかったのかもしれない。
「「たーんそーくおーでぶーの夢・呂・日‼︎」」
夢呂日が、岳信と陰影に襲いかかった。
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「さてさて、今日は何をしましょうか?」
4人集まって、夢呂日は、現在進行形で岳信に抑えられている。
「あれ?先生、先輩は?」
先輩達がいない。
「彼らももうテスト勉強を始めているんですよ。三年生の先輩は受験生ですからね、」
受験生ねぇ、寂しくなるなー。
「おいおい山出谷ー寂しいなーとか恥ずかしい事考えてんじゃねえぞ」
「心読んでんじゃねぇ‼︎」
「時に先生」
夢呂日が話題を変えてきた。
「女子を寄せつけるような香水を作りたいです」
こいつ、懲りないな・・・
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魅力水。先生はそれを作ろうと言った。実際、夢呂日の提案にのるとは思っていなかったが、承諾してしまった先生だった。作り方は魔素と自分の好きな花と水と自分の体のどこか(髪の毛や鼻くそよだれでも可)を○○○して△△△し、☆☆☆すると、できるらしい。
「では、魔素をネットで注文しましょう」
へーネットか便利な世の中だよな。
・・・ネット⁉︎
「ちょ、先生ネットって…」
「ドカーン‼︎」
理科室の後ろから、ものすごい大きい音がなった。
黒いバイクに乗った人が魔素が入っていると思われるビンを持っていた。
「お届けものです」
めちゃくちゃ眠たそう…
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小橋さん。魔法界唯一のブラック企業に務める男性。そのブラック企業(あえて名前をふせておこう)は、注文が入ったら10秒以内にかけつけないといけないのがルール。
「いやー1秒で起きて、1秒で着替えて、1秒で飯食って、1秒で会社に行って、1秒で受け取って、1秒でバイクに乗って、1秒でここに来たんですよ。凄いでしょ?」
凄いなんてもんじゃない。
「小橋さんそんな会社辞めたらどうですか?」
岳信が言った。
「でもね、辞めたらどこへいけばいいのかわからないんですよ」
そんな辛い話をしていると、
「小橋さんこっちにきてください」
安田先生が小橋さんを準備室に呼んだ。
「皆さんは香水を作っておいて下さい。」
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「それにしても夢呂日。なんでこれをやろうと思ったんだ?」
「いやーこの世界がよくあるテレビドラマだったとしたら女優さんも必要だろ?」
いや、意味わかんねえよ。
「別に俺たちのドラマに女優なんていらねえだろ。非リアだし」
「そんなこと言ってないでさっさと作れ作者が疲れてくるだろうが」
「俺たちに作者はいねえよ‼︎」
なんやかんや言ってる間にできた。
すると先生も準備室から出てきた。
「あれ小橋さんはどうしましたか?」
岳信が聞いた。
「もう帰りましたよ」
そうか、まぁ、あの人は眠いだろう。
「さて、しっかりできているようですね。では誰からいきますか?」
「「「「じゃあ俺から」」」」
即答。全員一致。
「じゃあ皆さん同時でいいでしょうか?」
「えっ、いいのか?」
今までにないパターンに少し驚いた俺だった。
「まぁ、いいーんじゃねー?」
と、夢呂日。
「いいよ」
と、陰影。
「おう」
と、岳信。
「じゃあいっせーのーで」
ぷしゅー。沈黙。地震。
「「「「「えっ」」」」」
よくわからない物音と、大きな足音。理科室の扉が壊れる。俺も何が起きているのかわからないので変な言い方になっているので申し訳ないが、こうとしか言いようがない。
「ああ、すみません皆さんに言うのを忘れていました。この香水は自分と相性が合う人を寄せつける香水です」
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「おー谷川ーええ身体してるやないかー」
「ぎゃー‼︎」
やばい。岡本先輩に襲われている。あいつが例えて言っていたところの小説で言うと、あれだ。BL小説ってやつになっている。
「やったーカマキリやー!」
岳信には女子がやってきたらしいが、それと一緒にやって来た虫のせいでどこかへ行ってしまった。
「・・・」
陰影には誰も来ないらしい。気の毒に。
「ってか、人のこと言ってる場合じゃあねぇー!」
現在進行形で約十人の女子に追いかけられている。これだけ聞いたらいい感じかもしれないが、全員ブサイクorデブでした。なんでだよ。普段の行いは悪くないはずなのに。
「「「「「「「待てー!」」」」」」」
俺は逃げてやる。絶対に。こんな所でやられたりしない。夢呂日風にいうならば、俺の小説にメインヒロインは…
「俺の小説にメインヒロインはいらねえ‼︎」




