表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そろぼちぼっち。  作者: みなみ 陽
狭間で揺れる
52/59

再会

『大和は無事か!?』

『ええ、大事に至ってはないわ。少し、体が痛いようだけど。』

『そうか…大事な息子に何かあっては困るからな…。』

父上と母上の会話が何度も何度も頭の中で聞こえる。

どうしよう…もし僕がやったって知られたら…僕は殺されちゃうの?嫌だ、死にたくないよ。あの時、兄上は僕が後ろに居たのを見てない。だから、兄上にバレるって事はないとは思うけど…他の誰かが見ていたら…どうしよう。僕は悪者だ…どうしてあんな事しちゃったんだろう?突発的にやっちゃった…。お願い、誰も見ていませんように…。

色褪せた畳の上で、小刻みに体が勝手に震える。

すると、障子の向こうから、足音が聞こえた。

―ドッドッドッ―

その足音は確実に僕の方へと近付いている。

どうしよう…どうしよう…お願い、こっちに来ないで。

だが、無慈悲にもその足音は、僕の居る部屋の前で止まった。

嫌だ…嫌だ…ごめんなさい…。

そして、ゆっくりと、障子は開かれた。

目の前には、父上でもなければ、母上でもない。父上が信頼する右腕…日向が居た。

僕を見下ろしながら、ゆっくりと口角を上げた。

『みぃつけた~。』

その手には、刀が握られていた。血で錆びたボロボロの刀。

逃げ出そうにも逃げ出せない。腰が抜けて動けない。

『正秋君、君は沢山悪い事をしたね…触れてはいけない相手に触れて、その相手を怪我させた…。これは、駄目だよね。お父上の大切な大切な子供を傷つけた…あれれ?そういえば、君も子供だったっけ?ま、どっちでもいいかな。居ても居なくても、何も変わらない…だったら、僕がここで手を下しても…問題無いかな?』

1歩ずつ確実にこちらへと歩みを進める。

『僕も初めて気付いたよ…君って生きてたんだ…っていうか君が正秋君だったんだって…、いつも惨めな格好で、とてもとてもお殿様のご子息だとは思わなかったなぁ~。でも、君のあの行動…それに、よーく見たら、本当に似てる…血は争えないなぁ!』

僕の目の前に来ると、ゆっくりと剣を構える。

『君は、本当に哀れで滑稽で…見てるだけでワクワクする。』

刀が僕へと落ちて来る。

『殺さないで!!!!何でも言う事聞くから…お願い…。』

『何でも?』

僕は、生きていた。現にこうやって会話しているのだから。刀は首の横スレスレで止まっている。

『はい…。』

僕のその返事を聞くと、日向がゆっくりと僕の目線に合わせるように、しゃがんだ。

『いいよ。』

体が軽くなった。まるで、体全体にあった錘が全て消えさったようだ。

『ほんと!?僕のした事も言わない…?』

『何でもしてくれるならね。本当に何でもしてくれるのかな?』

『何でもする…何でもするから…。』

『悪い子だ。』

そう言うと、日向は僕の頭に手を置いた。

温かかった。初めて人の温もりを感じた。初めて、僕の存在を認めてくれる人が居た。

『なら、強くなってもらわないと…と言っても、君なんかに稽古をつけたい人なんて居ないだろうから…そうだなぁ~丑三つ時にでも、稽古つけてあげるよ!これでまるで駄目だったら、すぐにお父上にご報告しちゃうから…死ぬ気でやれよ。じゃあね~。』

フフッと不気味に笑いながら、僕の頭から手を離して、ゆっくりと部屋から出て行った。もう、こちらに振り向きもしなかった。

***

「結城君!結城君!」

懐かしいその声に、俺は目を覚ました。

どうやら、夢だったようだ。まぁ、そりゃそうだ。夢の中では夢だと気付けないのがもどかしい。

「ん…?」

目の前には、雛乃…雛乃が居た。

変わらない。あの時と、ただ来ている服と髪型が変わっているだけ。

雛乃には、俺はどう見えているのかな?変わらない?それとも変わってしまった?雛乃の記憶の中の最近の俺と同じように見えているのかな?

「久しぶり。」

変わらないように、素っ気無く、でも、素直な本当の俺の気持ちを込めて、そう答えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ