他力依存
「マジかよ…。」
目の前に広がる光景を見て、絶句した。練習で身についた言葉がさらりと出てしまうくらい驚いた。
道はしっかりと綺麗に整備され、大きなコンクリートなどの建物が立ち並び、目の前を見た事もないような物に乗って、人が通って行く。
練習中に写真見せながら、これがこうだとか言われたけど…エレベーターの事で全て吹っ飛んでしまった。
俺が一瞬で越えた時間…どれだけの事がこの国に起こったのだろう?一体、何がこの国を変えたんだろう?俺の記憶の無い間…俺は、どう過ごしていたのだろう?
疑問を挙げれば、キリがない。
でも、その疑問を解決している暇など無い。雛乃を見つけ出して…最期の願いを叶える。それが、俺の復讐でもあるんだ…。雛乃は幼い頃からよく言っていた…ずっと一緒に居ようと。俺はそれを信じた。それなのに…雛乃は…嘘をついたんだ。その嘘が俺を殺したと言っても過言では無い。雛乃が自ら与えた希望を自ら奪ったんだ。なら…俺も希望を与えて奪ってもいいよね?今度は、ちゃんと。
今の俺なら、雛乃は逃げたりなんかしないだろう…。
「ねぇ、お兄さん。」
はっと我に返ると、そこには女が居た。でも、残念ながらそれは雛乃では無かった。
「…何すか?」
全く、庶民は相変わらず鬱陶しいな…。この力はこんな時、面倒だ…。まぁ、言えば言う事を聞かせる事が出来るから、どうしようもない訳では無いけど、こんな奴に使うのも勿体無い気がする。好き放題使えるわけじゃない。実際、今、その力を使うのに完璧な活力は満タンでは無い。いざと言う時…本当に使わなければいけない時に苦労する。最悪、自らの生命力を使わなければならなくなる。
「良かったら、あたしと一緒に遊ばない~?」
「…。」
チャラチャラした女だ…格好も露出が多くて、この世で1番嫌いなタイプだ。
怖がらせれば、逃げてくれるだろうか…?先程、日向が俺が何度も失敗した時やってきた事の内の1つ…ポケットに手を入れて、睨む。とてつもなく怖かった。それ以上何をされた訳でもないが…怖かった。
とりあえず、ズボンのポケットに手を突っ込んで、睨んでみる。
すると、女は頬を赤く染めた。
「やば…めっちゃクール…。」
―ガサッ―
ポケットの中には何か入っている…?俺は、取り出してそれを確認する。
折り畳まれた…紙?何だろうこれは?
ゆっくりと紙を開く。
その紙には、雛乃の顔写真…それに名前など多くの情報が記載されていた。
山吹…雛乃…。
今、雛乃はこう名乗っているらしい。それに苗字は…あの山から取ったのか。苗字を変えるなんて…なんだか、益々遠くに感じてしまうな。
そうだ…こういう時が本当に使わなければならない時なんじゃないのか?…かなり人数が集まってきているし…活力だけでどうにかなるな。
「無能な庶民の皆さんに命令…、この顔写真…見えるか?」
俺は、紙を目の前に差し出す。
集まってきた庶民共は…一気に静かになる。
「山吹雛乃って言うんだけど…見つけ出せ。見つけたら…そうだなぁ…道に迷った人のフリでもして、ここに連れてこい。そんな遠くには行ってないみたいだから…いいね?俺は…そうだなぁ…、あの水が湧き上がってる場所で待ってるから、よろしく。はい、行け。」
俺が、そう言うと、庶民共は散って行った。
手間が省けて、こりゃあいいかな。俺は、ここで待っているだけで良い。行く途中にも他の奴らに探させよう。
それに、どうやら水の湧き上がってる場所は、人も多いから…使いたい放題だな。
世の中には使われる人間と使う人間が居る。少なくとも俺は使う側の人間だ。
きっと…。




