初めての体験
真っ白な世界を抜け出して廊下に出ると、そこは俺の記憶の世界とはかけ離れた世界だった。
畳…襖…木…そんな物は一切無い。この地面に敷いてある物は、カーペットとか言うんだっけ?この壁に使われているのは…さっき教えてもらった…コンクリートか。
日向は、今、会社の社長をやっているらしい。それで、それなりに成功したのだろう。
廊下を真っ直ぐ進み続けていると、エレベーターと言われるものが見えてきた。階段なんか使わなくても、簡単に昇り降り出来るらしい。
本当に…とんでもない時代になったものだ。
傍には階段も見えるが…やはり俺の記憶の中の階段とはかなり異なる。木ではなくてコンクリート…もし…ここで、幼少期やった事をしてしまったら、兄は大怪我だったかもしれないな…。
そんな事を考えている間に、エレベーターの目の前にまで来た。
しかし…乗り方が分からない。
とりあえず、エレベーターの入り口を叩いたり、蹴ってみたり、横に動かそうとしてみたが…微動だにしない。
一体…どうやって乗るんだ?
ちらっと左を見ると、上を指す三角と下を指す三角を見つけた。
つまり…俺は今、下に行きたい。と言う事は、この下を指す三角を押せば…。
カチッと音がした。その音と同時にゆっくりと入り口が開く。
「おおっ…。」
思わず声が漏れた。仕組みをちゃんと聞いておけば良かった…中はとても明るい。
行灯とかよりもずっと明るい。どうやら、その明るさは、上にある無数の光と関係しているらしい。
これが…電気か?
などと、考えている間に勝手に入り口が閉まってしまった。
どうしよう…ここからどうするんだ?
乗ったはいいものの…下り方が分からない。さっきの三角を押すだけでは無駄だったようだ。
中にも沢山の記号のようなものがある。それが縦一列にずらーっと並んでいる。そして、上の方には「開」「閉」と書かれたものもある。
参ったな…とりあえず1番下にある物を押せば、下に行けるんじゃないか?
押してみると、再びカチッと音がした。
すると、その1番下にある記号は橙色になった。そして、突如エレベーターは動き始めた。
少し変な感覚だが、これは確かに便利かもしれない。だって、此処に立っているだけで、後はこのエレベーターが運んでくれる。なんと、素晴らしい物だろう。
エレベーターの中から見る景色から、徐々に下っているのが分かった。どうやら、押した物は間違いでは無かったらしい。
俺は、もう少しこのエレベーターを満喫してみたかったが、そういう訳にもいかない。あっと言う間に、下に着いてしまったらしく、エレベーターの出口がゆっくりと開いた。出口の前には、白い扉がある。
エレベーターを出て俺は、扉の前からエレベーターを見てみた。
こんなに素晴らしい物が、あの頃にあったなら…きっと皆大分楽出来ただろうな…。
外にも、こんな風な物が沢山あるのだろうか?雛乃を探すついでにでも…ちょっと楽しんでみようかな。
俺は、ゆっくりと扉を開いた。




