住人
目が覚めて体を起こすと、そこは、自分だけがごちゃごちゃとした色を持っていると思ってしまう程に真っ白な空間だった。
まぁ、実際、私の手は、恐らく血の色であろう赤と、土の汚れのような茶色と肌の色でごちゃごちゃとしていたし、そう思っても間違いではないのかもしれない。
それにしても…一体此処は何処なのだろう?先程まで、私は城に居た筈…それに、何故生きているのだろう?雛乃は…死んだのだろうか?
自分の中で、色々な疑問が次から次へと生み出される。
すると、物凄い勢いで壁が動いた。その向こうには、私と同じように様々な色を持つ人間…男と女が二人居た。そして、そのどちらも私の知る人物。
私の勘違いで無ければ、男の方は、闇雲 日向…そして、女の方は闇雲 蛍である筈だ。
「おはよう、正秋君。よく眠れたかな?」
「日向殿と蛍か?」
私が確認の意味を込めて、そう聞いた。
「そうだけど…挨拶はちゃんと返して欲しいなぁ…。」
日向は、俯いた。悲しそうにしているが、本人は決して悲しくも何とも思っていない。奴はそういう人間だ。
「あはははははっ…やったぁ~!思い出したぁ…。」
蛍は、幸せという気持ちを顔全体に表しながら、私に飛びつくように抱きついた。
その力は、窒息してしまいそうな程だ。でも、何処か安心出来てしまう…幼い頃から。
でも、その強過ぎる力が私を度々殺しかけたのは間違いない。
「蛍ちゃ~ん…?正秋君死んじゃうからさ!とりあえず1回離れて!色々終わったら、死ぬほど抱きついてていいからさ!」
遠回しに…というか結構直接、私を殺してもいいと言っている…。
「ちっ…。」
舌打ちをして、蛍は私から離れる。
「上司に舌打ち!?別にいいけど…はぁ…。」
溜息をついたが、それはあくまで苦労人感を出すためにやっているものだと私は知っている。おちゃらけて相手を油断させる…そんな奴だ。だから、私はこいつには、なるべく歯向かわないようにやってきた。
「で、正秋君に色々お伺いしたいんだけどさ、いいかな?」
別に、嫌だなんて言った所で、無理矢理聞いてくる事くらい分かっている。
「構いませんよ。」
「君の中で、さっきっていつ?」
聞かれた事が予想外で、少し戸惑った。もう少し他の事を聞かれるかと思ったが…。
「城で、雛乃を刺した…その後、雛乃が私に向かって手を伸ばした時ですかね。」
私に手を伸ばす…つまり私を雛乃の能力を使って、その時間から連れ出したという事だ。
「成る程…なら、状況は分かってるのかな?」
「どこか遠い未来か昔にでも連れ出されたのかなとは思いますけどね…まぁ、私の着ている服とか二人の着ている服とか…見た事も無いから、多分…未来ですかね。」
「その通り!君は、あの血も涙も無い欲望だらけの世界から解放されて、優しい世界の住人になったんだ!都合良く、何もかも忘れて…。でもその優しい世界から出たがったのは君だ…。君の記憶からは、無くなってしまったようだけど…色んな人に愛され、守られ…君の力を封印してまで、君の幸せを願った人達を裏切る行為を君はしたんだ!だから、今から君はまた、血も涙も無い欲望だらけの世界の住人になったんだよ。」
優しい世界?私は、そんな世界を知らない。でも、血も涙も無い欲望だらけの世界ならよく分かっている。生まれたその瞬間から、私はそこに居たのだから。




