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そろぼちぼっち。  作者: みなみ 陽
短命の人生行路
44/59

ようこそ

「あれ…?」

俺は、ぼーっとしていたのか何なのか、そこに突っ立っていた。でも、さっきまで居た位置とは全然違う場所に居る。それに、なんだか、息が切れて…少し体が重い。

「はあぁぁぁぁぁあ~…久しぶりだったし…、まだまだだったし…相手の無駄に多い生命力のせいで疲れちゃったぁ…。」

女は、先程の岩の前に、よりかかりながら、疲労感いっぱいの表情を浮かべていた。

「おい…お前…。」

俺は、女に近付いて、ここで待ち合わせた真意を聞こうとした。

女はちらりとこちらを見て、顔を歪ませる。

「ん?どうしたのかなぁ?そんなにあけに染まちゃってさぁ…?昔を思い出して美麗ねぇ…あはははっ…。」

「は…?」

俺は、その言葉が理解出来なかった。

「手を見てぇ…?」

その言葉に従って、すっと両手を目の前に持っていく。

俺の手には、赤く…赤黒く染まった刀と手があった。

それだけじゃない、腕も、そして足も…。

「な…んだよ…これ…。」

手が震える。そして、刀が自然と落ちる。

俺が…俺が?誰を?

此処に居たのは…俺とこいつと…あの姉弟…。

今俺が居るのは…気が狂うか狂わないかの境界線。

「嘘だ…嘘だ…違う、違う、俺じゃない。俺がやった?違う、違う…。」

俺は、頭を抱えながら、その場にしゃがみ込んだ。今俺の目に見えているのは、血に塗れた自分の足と、地面に垂れた血…。

「違わないわぁ…。じゃあ、今貴方を赤く染めているものはなぁに?それは…誰の血かしらぁ?」

この血は…。せめて…あの二人じゃなければ…。

姉弟の楽しそうな笑顔が浮かぶ。

「言えないのねぇ?言いたくないのかしらぁ?それともぉ…違うかもしれないっていう僅かな希望を持っているのかしらぁ?その希望ってぇ…あの二人じゃありませんように…って奴?それとも、これだけの証拠がありながら、俺じゃありませんようにっていう奴?ねぇ…教えてよぉ…あははっ!」

その声は、とても楽しそうで、嬉しそうで…。

何が楽しいんだよ…何が嬉しいんだよ…どうかしてる…。何で、目の前に血まみれで殺人犯が居ても、そんな調子でいられるんだよ…。

「…はぁ…。」

女は、笑うのを止めたらしく、深い深い溜息をついた。

そして、凄い力で俺の頭を掴んで、無理矢理顔を上げさせる。

女の表情は、怒りと悲しみを感じさせた。

「…ねぇ…どうしてこれだけやっても駄目なのぉ?本当に記憶思い出したいって思ってるぅ?」

「思ってる…思ってるに決まってる!」

「…じゃあ、何かポイントが違うのかなぁ…。仕方無いかぁ…、多少壊れてもいいわね。」

女は、やっと俺の頭から手を離し、ゆっくりと先程まで居た岩へと歩き出す。そして、こっちへついて来いと手を招く。

俺は、従わないと何をされるか分からないからと、動かしたくない足を動かして、女の元へと向かう。

女は、岩の後ろまで行って、立ち止まる。そして、にっこりと微笑み、腕を広げる。その顔は、歩く練習をする子に向かって、早くおいでという母のような行動だ。

ふらふらと、足を一歩ずつ動かして、揺れる心を必死に落ち着かせて、前へと進む。

倒れそうになりながらも、辿り着いた俺は、女が見ているものを見た。

俺は、見たくないものを見た。

俺は、気付いた。

女が待っている場所は、境界線の向こう側だと。






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