表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そろぼちぼっち。  作者: みなみ 陽
短命の人生行路
43/59

待つ者

「おい、見れんのんか?返事せーや。」

餓鬼に肩を触られて、奇妙な感覚は一瞬で消えた。

「…あ、いや、ごめん、見つけた。だから、行って来る。」

折角の記憶を思い出せるチャンスだったのに…。

俺は、肩を落としながら、岩陰から出る。

岩の前に座りながら、お姉さんは、首だけこちらへ向けた。

「気をつけんさいよ。あの人…おったんじゃね?」

「はい。」

俺は小さく頷いた。

「前言ったけど…変な感じしたら、止めるけん、もし相手が何かしてきたら、手段を選ばんけんね。いいね?」

お姉さんの目は、獲物をしとめるような鋭い目をしていた。

「はよ、帰って来いよぉ~。」

呑気な餓鬼の声が、俺の気を緩ませる。本当に俺よりずっと年上なのかって思う。餓鬼って内心呼んでいるのは、間違いなのかもしれないが、やはり、こいつの見た目がそうさせる。餓鬼と思うと餓鬼としか見えない。でも、此処に登ってくるまでの間、こいつを餓鬼とは思えなかった、しっかりとした奴だと思った。

また、ここに戻ってくるかどうかは…分からない。

「じゃあ、行って来る。」

俺は、あの女がいる場所へと歩みを進めた。

「うん。」

そうお姉さんの返事が聞こえた。

まだ、女はこちらには気付いていないようで、退屈そうに髪を弄くっている。

緊張のせいで、自分の胸の音が聞こえる。心臓を吐き出してしまいそうだ。

一歩ずつ、一歩ずつ、確実に歩みを進める。もう険しくもしんどくも無い道なのに、とてつもなく険しいように感じる。

そして、女が俺の足音に気付いたのか、ゆっくりとこちらを見る。そして、不敵な笑みを浮かべる。さっきみたものと一致している。

「ねぇ、何処に行ってたの?家出でもしたのかなぁ…?それにしても、こんなにも、女性を待たせるなんてぇ…最低な男。あはっ…まぁ、別に良いのよぉ。私は昔から待つ側だものぉ…。」

そう言うと、俺の元へとゆっくり近付き、俺の頬に触れる。ぞわっと鳥肌が立つ。

「…あれぇ…?」

女は、鋭い目つきで、俺の目を見る。その目は、まるで俺の奥底を見ているかのような目。

「なぁんだ…雰囲気が変わらないのは…そういう事ぉ?…ちっ…、異分子がっ。」

そう言うと、俺の頬を思いっきり抓る。

「痛っ!」

女から、少し距離を取った。抓られた頬を触ると、血が出ていた。

「あぁ、ごめんなさぁい。でも、今の貴方だったらぁ…その血もそんなに目立たないわぁ!あははっ…ちょっと、苛々してるのよぉ…ボスがいつも言う通り…過去にした中途半端な優しさってぇ…、他人を駄目にするだけじゃなくてぇ…、その後の自分の人生にまで影響するのねぇ!あははっ…ねぇ…?ちょっと遊びましょうよぉ。大丈夫よ?殺すのは貴方じゃなくて、私。貴方はぁ、体を貸してくれるだけで…いいのよ。」

そう俺の耳元で囁くと、すっと俺に向かって手を伸ばした。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ