龍
自慢気に決め台詞のように結構衝撃的な事を言った。ただ、ええっ!?みたいなリアクションをする事は出来なかった。龍とかいう伝説の生き物でしかない生物になれるとか聞かれても実感が沸かない。衝撃は、あるんだけど、それを飲み込めないというか…。
「…そ、そうか…。」
どうリアクションするのが正解なのか想像も出来なくて、思わずこんなリアクションを取ってしまった。もっと、大袈裟にした方が良かったかもしれないと思った。さっきみたいな言い方だと、ドン引きした奴みたいじゃないか。まぁ、ちょっと前だったら、間違いなくドン引きしてたけど、今は非現実的な世界に入り込んでしまったせいだな。
「…もっと、驚くかと思ったのに…。」
ずーんと低い声で、餓鬼が言う。
「驚いてるぞ。」
驚いてはいる事をちゃんと伝えたのだが、多分届いてないだろう。
そういえばこいつの名前、龍って言ってたっけ…?名前の由来は、龍からそのまんま来てるのかな。
だとしたら、お姉さんも龍に関係するような名前なのだろうか?というか、この二人が龍になる姿とか…ちょっと怖いな。
「龍…そんなに落ち込む事じゃないじゃろ…、子供なんじゃけぇ、ほんま。一応、あんたよりずっと年上なんじゃけどねぇ…、年相応に出来んのは多分精神年齢の低さじゃろうの。見た目が幼いお陰で助かっとるようなもんじゃね。大人の姿になっても、このままじゃったら…勘弁して欲しいわ。」
大きく溜息をつく。
俺よりずっと…数百歳とかなのか?それなのに、こんな餓鬼なのか。確かに見た目が大人になっても、これだと駄目だな。長い長い時間を生き続けたら、とんでもないぐらいの大人っぽさになりそうだが。
「二人の年齢ってどれくらいなんですか…?」
「うーん…数えるのなんて忘れたわ。数えても、何も無いけぇ。多分、1000は越えとるかも。」
1000歳越え…、1000年も前は俺には想像もつかない。途方も無い時間を生き続けるって…どんな気持ちなのだろう?でもまぁ、確かに、そんなに長い時間生きれば、細かい自分の歳なんて気にするものではないのかもしれない。
「マジですか…。」
「そうそう、着る者とか食べる物とか、喋り方とかもだんだんと変わっていくんよ。それをひっそりと見とるのは結構楽しかったかも。」
「言葉も変化してるんですか?」
「ええ、かなり変化しとると思うよ。」
俺は少し疑問に思った、この二人はどこで言語を学んでいるのだろうか?基本的に人と関わらない生活をしていたら、言語なんて学ぶ機会は無さそうだが…。
「その言葉って二人は何処で学んだんですか?」
「うふふ…先生。」
「先生?」
「うん、その人が少し前から教えてくれるようになったんよ。それまで、うちらは独学って奴じゃったけぇ、ちらほら間違いがあって…中々大変じゃったわ。でも、凄い楽しかった、先生が教えてくれる事は。でも、先生は、最近来てくれんけぇ、横文字の言葉が分からんのよね~、テレサの言っとる事、あんまり理解出来んかったし。」
彼女の声の弾みが、その先生との時間の楽しさを表しているように思えた。
「その先生ってどんな人なんですか?」
「先生はね…凄い可愛らしい人よ!あっ、もう着くよ。」
気付けば、遠くに見えていた山が大きく目の前に構えている。俺達は自然と早歩きになる。そして、すぐに麓へと到着した。しかし、俺は、まだまだこの険しい獣道を通っていかなければならない。
俺は、大きく深呼吸をした。




