姉弟の力
山道を下って、俺は久しぶりに見慣れた景色のある場所へと出た。明るくなって改めてこの場所を見ると、普段俺が住んでいた所と、此処が同じ町とは思えない程だ。向こうに、今まで俺が居た山と対になるような感じで、どっしりと聳え立つ山が見えた。そして、目の前には真っ直ぐと伸びる道。田んぼ道だろう。でも、その周りにある田んぼは、もう田んぼだったとは思えない程荒れ果てて、この地帯に深刻さが身に染みて分かった。そして、空を見上げると、雲一つない晴天で、とても眩しかった。だから、すぐに下を向いた。
「よし、じゃあ、着いて来んさい。」
お姉さんが先陣を切り、真ん中に俺、後ろに餓鬼という配置になった。
こんな明るい時間なのに、道を歩く人は俺ら以外に居ない。まぁ、居たら居たで、こんなボロボロの格好で、裸足で歩いている姉弟に出会ったら、ジロジロ見られるだろうし、そういう意味では不審がられる心配が無いし、この二人には良い環境なのかもしれない。
道の終点にある険しい山を登り切れば、あの女が居る。さっきの話で、お姉さんでも手一杯だったと聞いた。相当険しい山なんだろう…なら、待ち合わせ場所に適しているとは思えないが…。
「なぁ~、飛んで行こうやぁ~。たいぎーわ。」
「駄目よ、そんなに無駄遣い出来んわ。いつまでもあるもんじゃないじゃけぇ。使ったらのーなる。たいぎーけぇって、我侭言わんの。それに、もしかしたら、誰かがそれを見るかもしれん。そうなったら、大変よ。」
きっぱりと冷静にお姉さんは返答する。
「ちぇ~。」
俺のふくらはぎに何かがあたるのを感じた。石でも蹴ったか。この糞餓鬼。
ここは、少し大人になろう。それにしても、空を飛べるって…この二人は一体どんな力の持ち主何だろう?信仰心をエネルギーにしている…神様的な奴なのか?でも、さっき人間って言ってたしな…それに…そんな神秘的なものは微塵も、この二人からは感じられない。ちょっと、聞いてみよう。
「空…飛べるんですか?」
「出来るけど、でも飛ばんよ。さっきも言ったけど、限りのあるものじゃけぇ。」
こちらを振り返る事のないまま、お姉さんはただ道を進み続ける。
「あ、いや…、飛べるのが二人の力なのかなぁ~と思って。」
「飛べるのは力の一部じゃ。飛ぶだけじゃないんで。」
後ろから、自慢気な威勢の良い声が聞こえた。急に元気になりやがって。
「へー、じゃあ、全部の力って何?」
俺は、耳を後ろに傾ける。
「へっへっ~、聞いて驚くな、おら達はのぉ!龍になれるんじゃ!」




