待ち合わせ場所
「もしかしてじゃけど…ある女って黒髪の妖しげな女の人…?」
涙声で、嗚咽を漏らしながら、お姉さんはそう聞いてきた。
知っている…!?
「そ、そうです!」
分かるって事は…俺と会っているのを見た事があるって事か?
「おら、知らん。」
「うちは知っとるの。昔、うちが迷子になった松っていう熊を探しとった時よ…、この子は本当好奇心の強い子で、迷子常習犯だったんじゃけど…。あ、で、松の匂いがする山に登ったんよ。でも、その匂いを辿れば辿る程道が険しくてね…、うちが登るでも手一杯なのに、よう登ったなって。で、物陰に隠れるようにおる松を見つけたんよ。松に、帰ろうって言っても全然動かんけん、どしたんかなって思ったら、松の見つめる先に、なんか二人くらい人がおるのが見えたんよ。高そうな着物を着た身分の高そうな男と、妖しい雰囲気でいっぱいの女…なんかよからぬ感じがしたけど、遠くからだったから、何を話しているのかは分からんかった。またある日に松が、その山に登っていくのを見た。監視しとったけん、すぐに捕まえた。帰ろうって言ったんじゃけど、嫌だって言って全然聞かん。しんどいけど、しょうがないから一緒について登る事にしたんよ。そしたら、また二人がおった。その光景を結構松と何度も見たんよ。その男は間違いなく、あんたじゃったね。女の方は、わからんけど。そこに行きたいん?」
俺は、頷いた。この姉弟と出会ったのは、まるで運命のような…でもそれはまるで必然の出会いだったかのような…。でも、今はどうでもいい、待ち合わせ場所が分かったんだ。
「…記憶に関係するんじゃね。ええよ、連れて行ってあげる。でも…変な感じがしたら…うちらがすぐ止めるけんね。今は、本来の力が使えるけぇ…容赦せん。」
「嗚呼。」
「え!?二人もう食べたん!?速っ!ちょっと待って!」
慌てて、残りの魚を餓鬼が食べる。食べるの遅いなぁ…まぁ、しょうがないよな。
「正秋!お前ちょっと笑ってるだろ!」
「笑ってないよ、全然っ!プフフ!」
「嘘付け!噴出したじゃろうが今!」
「はいはい…しょうもない事で喧嘩せんとってって。全く、どっちも子供じゃわ…。」
呆れた口調で、お姉さんは溜息をついた。
「悪いのは、正秋じゃろうが…ったく…。」
そんな事をぶつぶつと言いながら、ようやく食べ終わったようだ。
「よし、じゃあ、行くよ。」
「はい、お願いします。」
***
「今日で丁度一週間…待ち続けて…日が沈んだらアウト…タイムリミットが近付いて来てますよぉ~…何処行っちゃったのぉ~?もしかして、逃げた?お得意の特技?それとも…あっち側についに捕まっちゃったとかぁ…助け出すとか面倒だなぁ~…ボスとシオンには悪いけどぉ~…この話は無かった事にしようかなぁ~だとしたら、私退屈になっちゃうぅぅ…、代わりの子見つけなきゃ…。」
そう言うと、彼女は資料を取り出した。
「う~ん、やっぱり、明子か~雛乃ちゃんかなぁ~…昔からの知り合いで行きたいんだよなぁ~気分的にぃ~。」
顔写真の貼られたその資料を読みながら、独り言をぶつぶつと言い続ける。
「でもなぁ…、準備が大変だから、やっぱり彼に来て欲しいなぁ…はぁ…まだかしらぁ~…。」
待ち合わせ場所には最適とは思えない場所で、彼女は面倒そうに正秋を一人待ち続けている。




