眠れる少年
鳥の囀りの声で俺は目覚めた。目を開けると、春らしい太陽な優しい光が木々の間から入ってきていた。俺は、ゆっくりと起き上がる。寝起きで暫くぼーっとしていたが、目の前に姉弟が居て、料理をせっせと作っている姿と火を起こしているを見て、ちゃんと何があってこうなっているのかを思い出した。俺は慌てて、後頭部に手をやる。だが…痛みもなく、怪我をしていたという感じも無い。
あれ…俺怪我してたよな?膝を見ると、そちらにも傷が無かった。その時気付いたのだが、俺の寝ている所は、人が一人寝れるほどの岩の上で、その上に、枯葉と草が置いてあって、寝やすくなっている事に気付いた。
「あ、起きた。姉ちゃん~、起きた~。」
火を起こしている餓鬼が、ちらっと顔を上げて大きな声で叫ぶ。
「は~~い!今、魚持ってくよ~。」
そう言うと、金属の棒に串刺しになった魚を持って、こっちへ現れる。
「この魚は別に盗んでないけぇの、たまに泳いでくる大きな魚を適当に捕まえただけじゃけぇの。約束ちゃんと守っとるんじゃけぇね、文句言わんのんで。」
火起こしに成功した餓鬼は、自慢気に俺に言う。
「そうか…ありがとう。」
「お婆ちゃん、ちゃんと野菜家族にあげれとったよ。後ね…あんたの神社に野菜届けに行っとったよ、それと…。」
そう言うと、お姉さんが、ひょいっと簡単に木の上に上る。そしてすぐに、あるものを持って下りてきた。
「キャベツ…?」
「盗んだんじゃないんよ、ちゃんと貰ったんじゃけ!もう誰も覚えてないんじゃって思とった。うちらの事なんて、忘れてしもうたんじゃって…。」
その声が震えているのが分かった。
「お婆ちゃんが、あんたの神社に野菜を届けた後に、この山の中腹にあるもうボロボロの廃墟に…これを…。長い月日が流れすぎて、その存在を忘れとった。いや、忘れたかったんじゃ…。」
ついに、泣き崩れてしまった。
「…お前に信仰心は奪われたとばかり思とった…。おら達にとって…力を使うための栄養源じゃ…。でも…あの神社が出来てから、誰も来んくなった…そう思っとった。でも、違とった。あの魔力に取り込まれても、あのお婆ちゃんの一族だけがずっとずっと…来てくれとったんじゃと思う。今はボロボロじゃけど、何度も建て直した後があった。その信仰心はずっとそこにあったんじゃ…おら達がその信仰心を捨てたんじゃ…。その野菜が置いてあった所をちゃんと見たら、腐ってしもうて、もう何か分からんもんがようけがあった…。でも、そこは…おら達の暫く眠っとった力を呼び覚ます程の栄養があって…。」
そうか…俺と二人にどんな関係があったのか、それは分かっていなかったが…。俺が後からあの神社を作らせて…人々の注目を集めて…。その時の俺に、罪の意識など皆無だっただろう。でも、俺の奪ったものは大きすぎた。だから、向こうは俺を殺したいほどに憎んだんだろう。でも、信仰心が栄養源であった二人に力は無かった。…俺は知らず知らずの内に人を不幸にする天才なのかもしれない。
「あ、姉ちゃん、焼けた。」
いい匂いだ。お腹がぺこぺこで余計に美味しそうに感じる。
俺は、差し出された魚の串焼き…を受け取る。
お姉さんは、魚を持ちながら相変わらず泣いていた。
「おーーーい、瑠璃~~、何処におるんか知らんけど、ちゃんと子供達連れて来んさいよ~、全員分あるけぇ~~!正秋美味しいじゃろ。」
大きく嬉しそうな声で餓鬼が叫ぶ。
これが家族だった…俺は、魚を食べながらそう思った。この魚…何だろう?
「うん。なぁ、あの治療…をしてもらって、どれくらい経ってる?時間の感覚が時計が無いから、よく分からないんだ…一日だけか?」
「いや…お前は、一週間寝たままだったぞ。今日は、金曜日だ。」
「そんなに!?」
俺は、想定外の月日が流れていて、思わず変な声になってしまった。
やばい…時間経ちすぎだ…なんで、そんなに寝てしまったんだ!?
「怪我が酷かったけん…しょうがない。何か、急ぎの用でもあるんか。」
「ある!あ、そうだ、お前はこの辺の地域にどれくらい詳しい?」
「この辺にずっと住んでるからな、大体は…、あ、でも向こうの常に明るい方の事は分からん、かなり変わっとるみたいじゃし。」
『思い出したら、あそこに来てねぇ?あの時間、あの場所…』
女はそう言っていた。俺が、思い出してもこれる場所…なら、この辺でずっと変わっていない場所…って事になると思う。
「こっちの方は、変わってないって事だよな!?」
「え…そ、そうじゃけど。」
「この辺で待ち合わせに適してる場所…それとか、昔俺とある女が会ってた場所を知らないか!?」




