奇襲
あー、そうだそうだ、こんな場所だった。
周囲の家は空き家になっているようで、家の電気が点いていたのは、あの婆さんの家だけだった。家の前まで来ると、畑らしきものが見つかった。目の前にあるこれで間違いは無さそうだ。やっぱり、小さいな…。ここにあるのは…甘藍?これを食べるのか?食べれるのか…?後は、人参…これだけか。全く、たったこれだけの為に、俺はここで時間を無駄にするのか…。まぁ、いい。後でちゃんとした報酬を貰うとしよう。移動した方が良いな。此処で、堂々と構えていたら…楽しくないな。獲物を狩る猛獣のような気持ちになってみたいし、遠くから離れて見よう。
そう思って、歩き出した時だ。
「ぐわっ!!!」
俺は、思いっきりずっこけた。べたーんとテンプレの様なこけ方をしてしまった。夜で良かった。ダサすぎるこけ方のせいで、奇妙な感覚も吹き飛んだ。起き上がって膝を見ると、案の定、血が出ていた。地面が砂で、しかもごつごつしているという運の無さ…。どうしよう。…と、とりあえず、水で洗いたい。すぐ近くに川が見えるから、そこで洗うか。でも、その間に動物来たら、どうしよう。俺が此処で見てたほうが良いよな…。うーん、悩ましい。動物は今もしかしたら、はよどけこいつ。と思って、こちらを観察しているかもしれない。そこで、俺が離れれば、野菜を荒らして帰って行くかもしれない。でも、膝の方も気になる!しかも、朝までずっと此処に居ないといけないとなると…やっぱり洗いたい!今何時くらいだろうか?俺の体内時計は、あそこの神社で婆さんと会話して、此処に来るまで、正直言って5分くらいしか経ってないけど…この暗さを見る限りでは、かなり時間が経ってるんだろう。嗚呼、時計が欲しい。
こんな調子で俺は行くか、行かないか、ずっと葛藤していた。気付けば、婆さん家の電気が消えて、真っ暗になっていた。本当に月明かりしか無くなって、やっと俺に恐怖心が沸いてきた。
猪とか熊とか現れたらどうしよう…最近この辺でも出たって言ってたしな…よくよく考えれば、とんでもなく恐ろしい事を引き受けてしまった。
怖気づいていた俺に、突如頭を激しい痛みが襲った。それは、内面的なものでは無く、外面的なものの痛みだと、その痛みを受けた直後に悟った。そのまま俺は、その場に崩れ落ちる。頭から、生温かいものが垂れてくるのを感じた。幸い、傷みとか、周囲の状況を確認出来るくらいではあったらしい。嗚呼…でも…。
薄れ行く意識の中で、泥で汚れた人間の足を見た。
あぁ…そうか…お前は…わ…。




