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そろぼちぼっち。  作者: みなみ 陽
短命の人生行路
32/59

悪神

俺は頂いた蕨餅を美味しく頂いた。本当に、美味だった。俺の記憶の中では初めて食べたが、結構好みだ。

さてと…じゃあ、神様の職場体験でもしましょうかね…。

俺は、仕事場へと向かおうと境内を出る。ここで俺は大事な事に気付いた。

待て待て、やばい、俺、あの人の家の場所聞いてないよ~やっちまった…、でも、あの婆さんが歩いてこれる距離なら、そう遠くは無いと思う…多分。周囲は、真っ暗で、近所と言っても、山の前にある此処は、後ろにある木々のせいか、相当不気味なオーラを放っている。でも、不思議だ。意外と居心地は悪くない。此処を暫く拠点にするのもアリかもな…でも、本当の神様に怒られるかも…。

周囲の景色も、山と田んぼ、畑、数軒の家に、小屋しか無く、余計不気味さを倍増させている。前にも此処に来た時思ったけど、近所なのに、どうしてここまで違うんだろうか。

俺は、とりあえず俺の位置から見えた婆さんの帰って行った道を辿る事にした。真っ直ぐ行くまでは見えたんだけど…あの先よく見たら幾つか道があるな…、流石にあそこまでは見えなかった…うーん…どうしたもんか…。

たまたま俺が、ちらっと道の横を見ると、そこには、首無し地蔵があった。

ーズキンー

一瞬だが、走馬灯の様に記憶が流れた。俺の脳裏には、同じこの場所でまだ首のある頃の地蔵が見えた。でも、その地蔵を俺が…壊して…。

頭痛と、奇妙で…いつも以上に気持ちの悪い感覚が体全体に染み渡っていく感覚が絶え間ない。

俺は、その場に膝をついた。


そう…思い出した、俺が壊した。こいつに向けられる注目は、本来俺が得る必要のあるもの。その注目はこんな石の塊が得るべきものじゃない…。えっと…で、何するんだっけ?

俺は、頭を押さえながら立ち上がり、混乱する記憶を整える。

婆さんが…俺に何かを願ってる。何願ってたっけ?畑…野菜…獣…子供…あ、思い出した。

なんか…久しぶりだな。あの時は…俺に願って注目されて…いい快楽だった。

最後はいつだったっけ…?一週間前?昨日?まぁ、いつでもいいや。

あの婆さん、先祖代々顔そっくりだなぁ~、すぐに何処の誰か特定出来てしまう。先祖代々…あれ、先祖を俺知ってる?知ってたっけ?…まぁ、確かなのは他の誰よりも、あの一家は…俺を信仰してくれてたな…。それにしても、駄目だな、あんまり物事を考えると、ごちゃごちゃしてくる、思考が回らない。今は婆さんの事でも解決しようかな。嘘を信じ続けてくれる一族に感謝の意味を込めて…。

思わず、笑いがこぼれた。

あそこの分かれ道を右に行くんだよな、そしたら、数軒の家があった筈。で、その中で一番小さい家だったと思う。

てか、俺の記憶の中では、もっと家あったような気がするんだけど…記憶違いか…?あーだから、記憶を気にするのは、止めようって…何で考えちゃうかな。

今、俺が一番考えないといけないのは、願いの方だからな。よし、思い切ってはりきってやってやろう。

俺は神様だから、悩める民の心を救ってやるのは当然…最も無能な庶民からの願いに、そんなに本気を出すつもりは無い。

それでも、願いをちゃんと叶えようとする…やっぱり俺は最高の…最高の?なんだ?

考えるの駄目だって…何度も自分に言い聞かせてるのに、つい考えてしまう。

こんな風になったのは…誰のせいだっけ?ま、これ以上は考えないでおこう。ちゃんと自制を心掛けよう。

おっと、気付けば、もう分かれ道だ。この先に、俺に期待してくれている人が、俺に望みをかけて頼んできた仕事がある…最高だ。

胸の高鳴りが止まらない。





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