表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そろぼちぼっち。  作者: みなみ 陽
短命の人生行路
30/59

苦悩

正秋が家を飛び出したのと同時刻、とある場所では、ゲームの主催者側の者達が騒いでいた。

そこは、色々な会社のオフィスが並ぶ通りにある場所で、最近出来たばかりの会社だ。表向きは、IT系の会社と言う事になっているが、実際は…。

「ボス~~~~!酷くないスか!?!?!?」

シオンは、そう言うと床で土下座している中年男性の頭を思いっきり踏みつけた。

「うぐっ…すいません、すいません…。」

中年男性は、涙を流しながら、頭を下げ続けている。

「ねぇ、彼、さっきからすいません、すいません、しか言わないんだけどさ、彼は同じ事しか言えない人間なのかな?こんな奴が僕の部下だなんて悲しいなぁ…。はぁ…何があったのか、さっぱりわからないんだけど。」

中年男性の目の前でしゃがみ込むボスと呼ばれる社長らしき人物。彼は、スーツを着て、ぴしっとネクタイを締め、呆れた様子でやれやれと首を動かした。

「言えないみたいっスね~、だから代わりにこの俺様が説明してあげますよ!」

そう言うと、ようやくシオンは中年男性の頭から足をおろした。

「うん、頼むよ。シオン君。」

彼は、ゆっくりと社長椅子へと向かい、腰掛ける。

「彼はぁ!!会社のお金を横領しようとして失敗した馬鹿なんスけど~!」

「ちょっと、待って。」

話そうとするシオンの話をボスと呼ばれる男性が遮る。

「何スか?」

「横領しようとしてたってさ…マジ?僕、その事知らないんだけど。」

「あれ、言ってなかったスか?」

「言ってないね。」

あちゃーとシオンは頭を抱えた。

「さーせん!」

「うん、いいよ。でも、今度同じ事があったら、命懸けでもその事を伝えに来てね。反省はちゃんと生かすんだよ。話中断させて御免ね。じゃあ、続きお願い。」

「はいっ!」

うん、と彼は納得したように笑顔で頷く。

「横領馬鹿なんスけど~、まぁ当然のようにバレて、逃げようとしたんで~マズイなぁと思って、俺様のパーティーを開こうとしたんスよ~、こいつ、命乞いめっちゃするんスよね~、あんまりにもしつこいから、さっさと血祭りにあげようと思った訳ですよ!そしたら、何でもするから殺さないでくれ!って魂の叫びが俺様に届いたって言うんスかね。いや…何でもって単語に魅力を感じたんスね。だから、何でもして貰う事にしたんス。」

中年男性は、青白い表情でガクガクと震えている。

彼は、子供の話を聞く父親のような表情で和やかに聞いていた。

「で、これはまぁ…。俺の独断と偏見による判断だったんスけど。先生が面白いゲームに協力しろって言うから、協力してた訳っスよ。それは、ボスも知ってたと思うんスけど。」

「うん、勿論知ってるよ。その話聞いてから、もうずっとワクワクして胸躍ってるから。」

「それで、そのゲームの主人公が序盤で死ぬのって面白いかもしれない!と思って、どうしようかな~って悩んでたんスけど、まぁ、何でもする男君が何でもしてくれるって言うから、君の出来る範囲で、結城先輩を殺って欲しいって、ちゃんと顔写真とか通学路とか通学時間とか教えてあげて色々ヒントあげてたんス!しかも、ちゃんと出来たら、見逃してあげるって言ったら、絶対に成功させますとかはりきってたから、期待してたのに…それなのに、このザマ!酷くないスか!?」

シオンは、むすーっと頬を膨らました。

「はっはっはっ!」

彼は、愉快に笑い、社長椅子から立ち上がり、再び中年男性の前に立つ。そして中年男性に対してこう言った。

「そんな醜態晒しても生きたい?」

「生きたい!生きたいです!」

中年男性は即答した。その目に、僅かな希望の光が灯るのを彼は見逃さなかった。

「あははっ!嗤えるねぇ、社長命令だよ、君はクビっ!」

瞬間、物凄い勢いで血が周囲に噴射する。まるで、血の噴水のようだ。

「ああ!俺様のなのに!」

「ごめん、ごめん、つい頭に血が上っちゃって、会社のお金を横領しようとして失敗して殺されそうになって、それでも生きたい…。それに、自分の命が懸かった仕事で失敗しても尚生きたいって懇願する…よくもまぁ、言えるもんだよ。彼は僕の会社で働く社員だからさぁ…社員の一人の行動で、会社の質下がったりしたら、嫌だし、それに、自分の命懸かってるのに仕事失敗しちゃうような人材は、僕には必要ないからね。こういう時こそ、鬼にならないといけないんだよね~、シオン君、君も上に立つ人間なんだから、非情になる事を覚えるんだよ。中途半端な優しさは人を駄目にしちゃうから。」

「は~い。」

この異様な光景が広がる部屋の一室に、ある女が戻ってきた。

「うわぁ…絶景。芸術作品みたぁい…。」

部屋に来るや否やうっとりとした表情を浮かべた。

「ねぇねぇ、何があったか聞きたくない?」

血まみれで優しく微笑む彼の表情は、狂気そのものだ。だが、その狂気に怯えるものなど、この部屋の者には居ない。

「興味無いんでぇ…。それにしても、派手にやりましたねぇ…、流石はボス…やる時はやるって感じですかぁ?でも、明日は、取引先との会議ですよねぇ…?ちゃんと、体は洗ってくださいねぇ…そういう所から、怪しまれていくものなのでぇ…。」

そう言いながら、床に転がる丸いモノを彼女は見つめた。

「あらら…彼、警察が捜してましたよぉ…?もう捜せませんねぇ…。」

「そうだね、仕方無いよ。そういう時もあるもんだから。それより、彼は来たかな?」

「いいえ~来ませんでした、まぁ…流石に初日からは無理でしょうねぇ~、アレですからぁ~、でも、一週間経っても来なかったら、楽しくも何とも無いんで、止めようかなぁ~と。」

「ええ!?止めるの!?嫌だよ~、僕楽しみにしてるのに…。」

がっくりと彼は肩を落とす。

「だって、待つの退屈なんですってぇ…、私はいつまでも待ってくれるって勘違いしてないかなぁ…あの男、学校なんて行く暇無いと思うんだけどなぁ…。」

「学校来なくなったら、俺する事ないじゃないスか!」

「は?よく言うよ、学校外で勝手にあの男を殺そうとしたくせに!」

「げ…いつからそれを…。」

「あんた、忘れないでね、私は見えるのよぉ、心で考えてる事くらいねぇ!」

女は、シオンの頭を指差した。

「まぁまぁ、落ち着いて、それでは、お片付けタ~イムと行きましょうよ。」

なだめるように割って入る社長。

「はぁ?汚したのは、ボスですよねぇ?」

「そうっスよ!ボス一人で片付けてください!」

「ええ~っ!?酷いよ!手伝ってよ!」

お願いっと、社長は二人に手を合わせる。

「嫌です~、私、まだやらないといけない事があるのでぇ…。」

「俺様も~。」

二人は、面倒は御免だと、さっさと部屋から出て行く。

ここまでの3人の会話だけ聞いた人は、彼らをどう見るのだろうか?この3人の居た光景だけを見た人は、彼らをどう見るのだろうか?3人の会話と3人の居た光景を二つとも見聞きしたら、人はどう彼らを見るのだろうか?最も、他人がどうこう思ったりした所で、彼らはそんな他人の評価など全く気にする人物達では無いが…。

「はぁ~、下っ端は無能で、幹部達からは、こんな扱い…自信無くしちゃいそう…僕の事…社長とかボスとかで言うだけで絶対そんな風に見てないよなぁ~。部下に恵まれない体質なのかなぁ~。」

一人、ぶつぶつと呟きながら、社長は人だったモノを抱える。

「早く彼来ないかな~、中々アレだったけど、上に立つ者に対しての忠誠心は素晴らしかったもんなぁ~、お手本になって欲しい人材だよ…全く。だから、今すぐにでも、記憶を無理矢理にでも思い出させないといけないなぁ~。おっと…。」

社長は、丸いモノを蹴ってしまったようだ。

「邪魔だなぁ…。」

ころっと転がるソレを彼は思いっきり踏み潰した。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ