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そろぼちぼっち。  作者: みなみ 陽
短命の人生行路
28/59

焦り

家庭科の宿題を終えた俺は暇していた。特にする事も無いし、本当は雛乃の家にでも行きたいが…。爺ちゃんが見張ってるからな…。てか、なんで見張ってるんだ?なんで、見張る必要があるんだ?俺に、今行かれたら不都合な事でもあるのか…?俺に何か強さがあればなぁ…爺ちゃんの技にやられずに済むんだけど。でも、怖い。例えば、関節が外れそうな程…やめよう、思い出すだけで痛い。

とりあえず俺は、制服を着替えた。そして、その後、どうせ暇なら、部屋のテレビでも見ようと考えた。

リモコンをピッと押して、テレビをつけると、丁度地域の夕方の報道番組をやっていた。

地域のスポーツについて、取り上げている時間のようで、笑顔で楽しそうに話していた。そして、その特集が終わると、アナウンサーは、とても神妙な面持ちになった。次は、良くないニュースであることは、なんとなく察した。

〔続いてのニュースです。今日4時頃、ワゴン車が歩道に乗り上げる事故がありました。幸い負傷者は居ませんでした。ワゴン車から出てきた40代くらいの男性が逃走する様子を周囲の人が目撃しており、警察は重要参考人と見て、捜査を続けています。〕

アナウンサーがそう読んでいる間、事故現場の映像が流れていた。見慣れた景色だ、さっきまであそこに居たんだ、俺達。映像は、次に目撃者の話になった。

〔突然、暴走しだしてねぇ~、ほんま、向こうの歩道に誰もおらんかったのが幸いだったと思いますよ。えぇ。〕

誰も…居ない?何言ってるんだ?俺達があそこに居たじゃないか!それは周りに居た全員が分かっていた筈だ。

〔よう覚えとらんのんじゃがね、ありゃ相当な勢いじゃったよ、凄い音を立てとったんじゃけ。あっち誰かおったらと思うとぞっとするわ。〕

このお爺さんは…俺達に向かって叫んでくれた人の声だ…なのに、何故?

車が戻ったとか騒いでたじゃないか、救急車とか…それなのに、どうなってる?

まるで、記憶が抜け落ちたみたいじゃないか…俺達の事だけ…。

ニュースは次の内容に移って、アナウンサーは何かを話していたが、俺の耳の中にそれは入ってこない。

おかしい、おかしすぎる。今日は、色々おかしすぎる。

朝から、変な女に、ラブレター事件に、正義感が無駄に強い奴に出会ったり、殺そうとしている奴が居たり、実際殺されかけたり、時間がおかしくなったり、他の人の記憶が消えたり…、今日という日があまりにも濃厚過ぎて、気味が悪い。

これを何かに例えるのなら…ゲームの初期。初期の頃はイベントやらなんやらが多くて、さくさく進んでいくのに、中盤辺りから、主人公や仲間や武器を鍛えたりしなければ、進行が困難になる。時には、時間制限などの条件があって、その条件を満たさないとクリア出来なくなったり…。

そういえば、あの時の女は…ゲームの説明をする奴みたいだった、あくまで俺の憶測だが…今までの事は全てあいつに仕組まれているメインストーリーで、さくさく思い出せる様にしているとしたら…考え過ぎだろうか。

実際、これらの出来事で、幾つかの記憶を俺は見た。関連性が無いとは言い切れない。

待ち合わせ場所を見つける事が、次へと進める一歩。だとするならば、俺は最悪思い出せなくても、そこを探し出せば、結果オーライじゃないか?きっと、この辺りにある筈だ。あの女は、気まぐれ感を漂わせていた。あの女がいつ飽きるか分からない。今日は偶然沢山思い出せたが、明日、明後日と思い出せるとは限らない。あいつが飽きてしまったら…俺は全てを思い出す事が出来ないまま、一生を終えるかもしれない。だとしたら、学校なんて呑気に行っている暇なんてないじゃないか、今最もやるべき事は、待ち合わせ場所を探し出す事…。今日はもう無理だけど、明日から、徹底的に探し出そう。平日は学校に行くふりでもすればいい。学校にはメールで送る制だから、俺が送信してもバレない。それに、学校は基本依怙贔屓野郎しかいないから、どうにでもなるだろ。

この時を逃して、あの女が飽きて、何も言わずに去っていく事を。あの女の思う壺かもしれないが、それでもいい。



それくらい、この時の俺は正しい思考で判断し、考える事が出来ないくらい焦っていた。

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