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そろぼちぼっち。  作者: みなみ 陽
短命の人生行路
26/59

必要不可欠

俺が現実に戻ると、布団で寝ていた。どうやら、此処は家で、意識を失ってしまっていたらしい。

「起きたか。」

聞き慣れた渋い声が、横で聞こえた。

「あ、爺ちゃん…俺…。」

俺は、体を起こし、爺ちゃんの方に向いた。

「災難じゃったのぉ、ショックで気を失うくらいで済んでよかったわ。」

「やっぱ、そうだったんだ。」

だとすれば、やはりあれはまたアレか…。まぁ、そりゃそうか、今のご時世あんな格好する人なんて行事事以外殆ど無い。やけに、現実味があり過ぎて、目の前で起きている事、脳の中で起きている事の区別があやふやになってしまっている自分が居た。これを頭痛の後に見た事から、間違い無く記憶の欠片なんだと思った。あの記憶の中に出てきた少女は自分の事を雛と名乗っていた。そして、時間をゆっくりさせるとも言った。少女は雛乃と顔が似ていた、同一人物だと考えた方がいいのだろう。幼い時の雛乃は、俺を『寅千代』と言っていた、それが俺の昔の名前だったのだろうか?その後に出てきた女性は間違いなく雛乃だった、その女性は今の雛乃と大差無い。違いは服装だけだった。そして俺に向かって手を伸ばして…俺を未来…今にでも飛ばしたという事か?だとすれば…雛乃は、何かを知っている?知っていたとしても、何故あの時の姿と変わりない?あいつも時を越えてやって来たのか?そう考える他無かった。だって、こんなにも長い時間殆ど成長した様子も無く、生きているだなんて…不自然じゃないか。何にせよ、あいつは絶対に俺の何かを知っている。あいつこそが俺の記憶の鍵なのかもしれない。そういえばそうだ、俺が頭痛を感じた時には、殆どあいつが居て、その後見るアレにも、殆どと言っていいほど雛乃らしき女性が現れた。今の俺が、全てを取り戻すにはあいつの存在が必要不可欠なのかもしれない。それと…もう一人俺の頭痛を引き起こした人物がもう一人居る。あいつは知っていると自分から言った。あいつは教える気満々だったが、簡単には教えたくないという感じだったし、ゲーム感覚で遊んでやるみたいな言い方だった。あいつの存在も、必要不可欠…早くあの待ち合わせ場所を思い出して…。雛乃との記憶をまず、全て取り戻す、無理矢理にでも。

そういえば、雛乃はどこに居るんだ?

「なぁ…雛乃は?」

「ん?あの子なら、あの子の家で婆ちゃんが面倒をみちょるよ。」

「様子を見に行きたいんだけど、あいつの家を教えてくれねーか、爺ちゃん。」

「駄目だ。お前は、此処で寝とけ。」

そう言うと、爺ちゃんは、どっこいしょと立ち上がって、襖を開けて部屋から出て行った。

教えて貰えなかったか…あいつの家か…わからん。あの時、ちゃんとキャベツを届けていれば…なんやかんや言って拒絶してしまったからなぁ…。あの時、ちゃんと行っていれば…。でも近所と言っていたし探せばすぐに、見つけられるかもしれない。そう思って、俺は、縁側からこっそりと抜け出して、出て行こうとした。しかし、家の門の前に仁王立ちして、まるで警備員のように監視している爺ちゃんが居た。

何が何でも部屋に居ろってか…。爺ちゃんは、俺みたいな高校生が勝てる相手じゃない…。

おとなしく布団で寝ていよう…無駄に疲れてしまうだけだ…。高1の時のトラウマが蘇る。俺は、ゆっくりと布団の中へと入り込んだ。



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