ヒーローと逃亡者
先生と話をした後、がっくりと肩を落としながら、帰路についた。そして、俺は完全に詰んでしまったと気落ちしていた。
先生が言っていた協力者…、朝学校で俺の姿を確認できる所に居た奴か…。
俺の脳裏には、やはり安藤と闇雲の顔が浮かぶ。
でも、安藤は頭の螺子5本ぐらいぶっ飛んでそうな奴で、闇雲はただの良い奴感が滲み出てて、どちらもとても協力者とは思えない…。この考えは甘いだろうか?ちゃんと聞いた方が良いのか…?怪しい芽は片っ端から摘み取らないといけないような気もする。
そういえば、闇雲は陰から俺を守るとか言ってたが…本当に守ってるのか?
俺は、立ち止まって周囲をきょろきょろと見渡してみるが、居ない。
本当に守ってくれるのか?それとも口先だけ?でも、あいつの表情は…真剣そのものだったよな…。俺も、ああいう思考になれるような人間だったらな…、俺のしている事は逃げそのものだ。闇雲だったら、守ってるだろうな…。そして、傷つける側を成敗する…。なんとなく想像出来てしまう。俺には、そんな勇気も考えも無かった。俺が、誰とも関わらない事で、俺のせいで傷つく人が居なくなるように…。でも、それは中途半端だ。俺はなんとなく気付いていた。俺は、学校でぼっちぼっちする事、それが薔薇色学園ハッピーライフだとか思い込む事で、それが幸せだと錯覚しようとしていた。でも、それは勿論本心なんかじゃない。だからこそ、こんなにも人と関わって生活してきてしまっているんだ…。駄目駄目だな俺は。いっそ、闇雲みたいにヒーローキャラ気取って、明るくなって友達作って、そろぼちぼっち気取りやめようかな。いや…無理だ、無理無理。今更、キャラ変とか無理だ。でも、今のままみたいに中途半端なのはどうなんだ…?
俺は、今の俺の在り方について考えた。こんなに中途半端で意味があるのだろうか?本気で全ての人と関わらず、独りになりたい、ぼっちになりたいんだったら…。
ぐうぅぅぅうぅぅうぅぅう~~~
盛大にお腹が鳴った…そうだ、俺お腹空いてたんだよ…。空腹すら忘れてしまうくらい、思い耽っていたのか。
「うふっ…。」
俺のお腹が盛大に鳴ってすぐ、少し後ろから笑い声がした。
不味い…誰かに聞かれたか?
恐る恐る後ろを振り返る。
「雛乃か…。」
雛乃だと知って、安心してしまっている自分が居た。
「お前、いつからそこに?」
「結城君のお腹が鳴るちょっと前くらいからかな、うふふ。」
「はぁ…、やっぱ聞いてたか。」
手を口に当てて、くすくすと悪戯っぽく笑う雛乃、つまりがっつり聞いてたって事か…。居たの全然気付かなかったな…。
それにしても、何かまた違和感を感じる…何の違和感だ?体育の後と同じ違和感なんだよな…何だろう。
「お腹空いてるのは本当だったんじゃね、だったら…その…か…カフェでも行かない?」
「行かない、俺は家の手伝いがあるから、さっさと帰らないといけないんだ。」
カフェって、学校の奴に見られたら誤解されそうじゃないか…。
「そ、そうですよね~…、あ!じゃ、じゃあ!おにぎりあげる!」
そう言うと、雛乃は背負っていたリュックから、がさごそと漁ってラップに包まれたおにぎりを取り出した。
「え…。」
「残り物をあげるようでごめんなさい、でも体育の時間目眩するくらいお腹空いとったんでしょ?だったら…食べた方がいいと思う、すぐに食べれてお手軽だよ。」
そう言って、差し出されたおにぎりは、きらきらと輝いて見えた。白いお米が俺を誘惑している。
思わず俺は、そのおにぎりを手に取ってしまった。
さあ、食べて!と言わんばかりのおにぎり…これはおにぎりが悪い。美味しそうにしてる方が悪い。
俺は、おにぎりにかぶりついた。




