対象
「や、やだっ、私、結城君と同じクラスなんじゃけど!」
「いいなぁ~、うちも、ITに行けばよかった~、なんで、会計ビジネスにしたんじゃろ~、萎える~。」
「お前、俺が居るんだから、結城と浮気なんかすんなよ!」
「わ、わかってるよ、そんなの、そもそも、私なんかじゃ、彼に釣り合わんよ…。」
そんな、会話が、俺の耳にも入ってくる。
まじで、鬱陶しい。
俺も、クラス替えの貼り出された紙を見る、俺はIT情報処理科Aクラスになったらしい。皮肉なことに、Bクラスよりも、女子が多い。泣ける。
勿論、商業高校なので、女子がやはり多い。正直言って、死にそう。
じゃあ、何故、商業高校にしたのか、それは、親が自営業の仕事をしているからだ。母親が、意地でも商業に行けと、騒ぐから、渋々仕方なく商業高校に進学した。その代わりに、商業であれば、何処でもいい、と、だから、祖父母の居た広島を選択した。
のに!なんで、東京から遠く離れて、知り合いも祖父母以外皆無なのに!どうして、こうなる!?
嗚呼、神よ!何の嫌がらせなんだ!?
「あ、あの…。」
かすかに聞こえた、囁く様な声、明らかに女子なのはすぐにわかった。
「あ?」
自分より、かなり背の低い女子、見下すように相手を見て、「うるせぇ、立ち去れ」感を出す。
「ゆ…結城君、お、同じクラスだね…、出席番号も、38と39ですぐ近くだから…えっと、えっと…、なにかあったら…よ、よろしく…私…」
それ以上は、全然聞き取れなかった。もごもご、もごもご、嫌がらせの様にしゃべり続ける。
「ちょっとぉ~山吹さ~ん、結城君、めっちゃ困ってんだけど~。」
クラスメイトAみたいな典型的な台詞を飛ばす、イケイケ女子。
山吹?こいつ、山吹って言うのか。もしかしたら、私…以降に自己紹介をしてたのかもしれないが、壊滅的に聞き取れなかったぞ。
「邪魔でしょ~、さっさと、どいてあげなよ~。」
クスクスと、周囲で冷たい笑いが起きる。
「え…あ、ごめんなさい…、結城君の事情も知らずに、ごちゃごちゃと…。」
山吹とかいう女子が、俯いて顔を上げなくなってしまった。
「だいだいさ~、あんたみたいな陰キャがさ~、結城君と仲良くとか、笑っちゃうんだけど!」
俺の嫌いな笑い、言い方、態度をする奴が今この場に、腐るほどいる。
だから、嫌なんだ。嫉妬、妬みを俺に、ぶつけるんじゃなく、俺の近くにいる女子にぶつけんのが。
うんざりなんだよ。何で、俺の周りにいる奴が、傷つかなきゃいけねぇんだ?
俺は、脳裏に浮かぶ、一人の女の笑顔。そいつの笑顔は、中三の時のままだ。
「うぜぇ。」
俺は、その場にいた腐った連中に吐き捨てた。
「行くぞ。」
山吹の腕を掴み、最悪なその空間から、離れた。