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そろぼちぼっち。  作者: みなみ 陽
短命の人生行路
16/59

紐解く

山吹との会話は、クラスメイトの来る気配を感じた所で、俺が会話を断ち切り終了した。

その後は、いつも通りの時間が流れた。段々とクラスメイトが集まり、時間になってHRが始まる。そこで、担任から諸連絡を聞いて、今日一日の学校生活が始まる。

HRが終了後、普段は適当に1時間目が始まるまでは、寝たふりをするのが日課だが、今日は違う。号令が終わったと同時に、俺は、すぐに岡田の居る会計ビジネス科のクラスへと向かった。

俺にとって、不運な事に、IT情報処理科Aクラスと会計ビジネス科のクラスは隣だ。だからいつも、ここを通れば、あいつに目をつけられて、つきまとわれる。

今回は、珍しく…というか初めて、俺から訪問する。俺が、会計ビジネス科のクラスに入ってくると、ざわっとした。

「え?正秋君じゃん!やばっ!」

「どしたんかね?何か、あったんかねぇ?」

何か無い限り絶対に来ないから、わざわざ他クラスに乗り込むとかしないから。

俺は、岡田を探した。岡田は何処だ?

きょろきょろと周りをよく見てみると、後ろのロッカーで人影に隠れて、何かをしている岡田を見つけた。

よし、聞き出してやる。

俺は、机と机の間を通り、足早に岡田の元へと向かう。

「結城君、サインを!」

「私も!」

「俺にもくれ!」

はいはい、サインは事務所を通して下さいね~と心の中で返答しつつ、いつも通り無視をした。面倒臭い。岡田の前に居た女子を適当に追い払うと、やっと岡田は俺の存在に気付いたようで、俺を見て、かなり目を見開いていた。

「普段は、俺の事を秒速で気付くのに、必死になってると気付かねーとか、それって会長としてどうなの?」

これは、俺の本音だ。普段だったら、俺がこのクラスの前に来た時点で気付いていただろうに。

「ここじゃ都合が悪い、ついて来い、問答無用。」

***

俺は、岡田を連れて、新館の4階の廊下まで来た。4階は、音楽室と美術室くらいがあるくらいで、基本的に人は、あまりこない。音楽とか美術の選択授業になっている教科のある日は、月曜日と水曜日だ。先生が、外部から来るから、そうなっている。だから、金曜日は、基本的に部活以外は用事が無い。

「結城君…こんな所に私を連れ出して…ついに告白の時ですか?」

「そんな訳ない、有り得ない、世界が滅んでも。っていうか、そんな事より、俺は、お前に俺は聞きたい事があるんだよ。」

俺は、岡田に徐々に近付きながら言った。

「聞きたい事?あら、それは一体何かしら?」

台詞みたいな喋り方は、相変わらずなんだな、この状況でも。まぁ…感心している場合じゃないな。というか…あれ?何か、足りない。

俺は、岡田をちゃんと見た時に違和感を感じた。あるものがない。

「その前に…普段持っている手帳はどうした?俺と話す時にいつも持ってたやつは。」

前にこいつは、俺と話す時には、絶対に必要なものなのです!とか言ってたが…やっぱり、俺の情報を手帳事売り飛ばしたか…?

「嗚呼!やはり、聞かれてしまいましたね。流石、我らがプリンス!私の変化に気付いて下さるなんて…出来れば告白であって欲しいと願っておりましたが…、そうもいかないものですね。素直に白状致します。結城君の情報を大量に詰め込んだ結城手帳を…紛失、いえ何者かに盗まれました!」

大きく身振り手振りをし、うろちょろ動き回りながら、そうはっきりと答えた。

「は…?盗まれた?誰に?」

「分かりかねます。一体、何者の仕業なのか…。私が浅はか…愚か…油断しておりましたわ。結城君の情報を狙うものなど、この世には多く居るのに…。ついうっかり、木曜日に、教室に置いて帰ってしまったのです…。家で気付いた時、すぐに取りに帰るべきでした…。ですが、交通費を気にしてしまい…嗚呼!恥ずかしい!そして今日…学校に来た時には、もう…手遅れでした。」

盗まれたと言うのは、本当っぽい。いつも以上にミュージカルしているし、よく考えればこいつに情報屋なんて仕事出来る訳ないな、アホだし。何にせよ、俺の情報があの女にいってるって事は、やっぱり女の手の中にあると考えたほうが自然なのか…。でも、盗んだ奴は女とは考えにくい…。やっぱり、この学校に協力者的な存在が居て、そいつが、こいつの手帳の事をどっかで見たり聞いたりして、盗んだ可能性の方が高い気がする。

「盗んだ奴に心当たりは無いのか?」

「この学校の生徒、教員…全員が容疑者ですわ!」

「全員って…。」

「女子は勿論、男性にとっても、結城君は憧れの存在…その人の事を知って、少しでも結城君に近付こうとする輩などうようよ居ますわよ!それに、先生も所詮は人間ですから、盗まない事も否定出来ません!」

俺って、そんなに狙われてるのか…?思わず身震いした。

「で、その窃盗事件は、岡田と俺と犯人以外に誰か知ってんの?」

「知らないと思います。私は一切口にしていませんから。でも、勘の良い誰かが気付かないとも限りません、ですから…。」

そういうと、岡田は胸ポケットから、小さな手帳を取りだした。アホだろ、勘の良い奴だったら、明らかに見た目が違うその手帳の変化に気付くだろ…駄目だこりゃ。確かに、そこにずっと入れておけば、持ち帰りを忘れる事はないだろうけどさ…、というか反省してメモするのをやめようとか思わないのか。

「あぁ…そう。」

「私は頑張って犯人を捜します!ですから…結城君は色々お気をつけて!」

「わかったわかった。」

俺は、これ以上話しても何もないと悟り、ゆっくりと来た道を戻る。

犯人を捜さなきゃ、駄目ってか…。犯人って言ってもなぁ…、この学校の奴全員とか気が遠くなる…あの女に繋がってそうな…。

突如、俺の脳内にある記憶が浮かんできた。あの女と初めて出会った時…女が持っていた資料にあった御手洗先生の写真。

あの女が持ってたという事は何か関係がありそうだ…、次は保健室。

しかし、もう少しで1時間目が始まる。次のチャンスは、昼休憩か…。




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