最悪の始まり
翌日、俺は普段より早く学校へ登校した。
何故なら、今日は金曜日、安藤がアレを入れてくる前に阻止する必要がある。
安藤はバスケ部、朝練がある。つまり、あいつより早く学校に行かなければならないってことだ。
今までは、されるがままだった…だが、これからは違う。もう、こんな悪夢の金曜日とは、おさらばだ。ハッピーフライデーに変えてやる。
俺は、俺のファンクラブ会長岡田を利用し、安藤について調べさせた。本当にこいつは、俺の為なら何でもする女子だな…、最初は、1年の頃に冗談で言ってみたつもりだったが、まじで調べてくれるとは…。
岡田もあによると、あいつが下駄箱に来るのは、決まってこの時間。この時間は、休憩時間らしい。
まだ、学校は、やけに静かだ。運動系の部活はほとんどが、いつも、この時間に来ているのか…?大変だな。
俺は、下駄箱の陰で、腕時計を確認する、もうすぐ7時50分だ…。来るか!?
「はよざます!」
「あ゛あ゛っ!?」
突然、男子の元気な声が、耳元で聞こえ心臓が飛び出そうになった。
俺は、その声の主を確かめようと、後ろを振り向いた。
そこには、金髪のチンピラ感のある男子生徒が居た。誰だこいつ?1年か?
チンピラ感があるが、別にシャツを出しているわけでもないし、ピアスを開けているわけでもない。むしろ、かなりぴしっと着こなしている。金髪とこいつの雰囲気がそうさせているのか?ってか、絶対工藤に目をつけられてるだろ…。でも、この金髪は地毛…?
「さーせん!うっす!何してんスか!?あ、もしかして告るんスか!?」
うわー朝から、くそだるい奴来たー。
「違う、そうじゃない。ってか、お前何?一年?」
相手を思いっきり睨んだのだが、怖がる様子も無く、満面の笑みだし、俺のこの話しかけんなオーラにすら気付かない馬鹿なのかもしれない。いや、それは、どいつもこいつも同じか。
「うっす、一年っス!あ、先輩!ちなみに言っときますけど、これは地毛っス!だから、目はつけないで下さい!」
「あ、やっぱり地毛なんだ。はい、さよなら。」
俺は、鬱陶しいこの男に、手を適当に振った。
「そんな、ぞんざいに扱わないで欲しいっス…。」
冷たいぬめっとした声、思わず鳥肌が立った。
俺がもう一度、そいつを見てみると、さっきと同じ笑顔でずっとこっちを見ていた。
なんか、この笑顔も怖く感じる。
「俺様、商業ビジネス科1年の闇雲シオンって言いまーす!先輩、面白くなりそうな人なんで、これから仲良くして下さい。じゃ、また!」
そう一方的に、言い残して1年は、教室がある新館へと颯爽と消えていった。
あいつ、運動部ではないのか…って、またって事は、また絡みに来るって事か!?
おいおい…勘弁してくれよ。あんな、よくわかんねー男と仲良く!?生理的に無理だ!
あぁぁ~最悪過ぎる。なんで俺は、こんなに人運がねーんだ?
「ゆ、結城君!?なんで、こんなに早く!?もしかして…私が来るのを知って、ついに…?」
あーーーー、違う、違う!なんで、こんな暴走機関車ばっかりいるんだ、この学校は!
「違う!お前に直接言ってやろうと思った事がある。」
「やっぱり…!」
「勘違いすんな、俺は、お前に興味が無い。よって、この手紙も読んだ事は無い。」
俺は、低い声で、相手を威圧するように言った。だが…。
「んもー!なら、読んでもらえるまで頑張るのみ!ってことで、今日からこれ直接渡しまーす!」
ピンクの封筒に赤いハートのシールが貼られた、俺にとっての恐怖の手紙。
安藤、色々おかしいだろ…、普通傷つくだろ…。
「じゃあね!」
安藤は、るんるんと鼻歌を歌いながら、スキップをしながら体育館の方向へと去っていった。
ただ、これによってはっきりした事がある、事態はこれからは、直接になってしまうという
最悪の方向へ進んでしまったと…。